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台湾菓子をいただきに

そのお店はガラス張りでできていて、少しだけ中の様子をみることができた。お店の前を通るたび、落ち着いた様子の店内と、隠れている部分のある奥まった場所への興味がそそられていた。

雨が降る平日の午前中、私はこのお店へ訪れることを決意して支度を始めた。落ち着いた店に行く時は、自分も落ち着いた装いでそこに足を運ぶことにした。

木枠でできたガラスばりのドアを横に開けると、そこには明治時代を感じさせるような、レトロだが、洗練された雰囲気が流れていた。

このお店は、台湾料理のお店で、台湾屋台飯から、台湾菓子、お酒と共に楽しめる食事のメニューも用意されていた。選ぶメニューにより、座れる席は変わってきて、私がいつも目にしていた場所は、台湾屋台料理を注文した人への空間であった。

店の奥が気になった私は台湾菓子セットを注文し、店の奥に進む権利を手に入れたのだ。

店の奥に進むと、黒を基調とした空間の中に、落ち着きを放った間接照明が散りばめられている。シックなこの場所は、自然と人の背筋を伸びさせ、その人までも特別であるかのように包み込んでくれる。

興奮を抑えながら席に腰掛け待っていると、注文した紫芋ココナッツぜんざいが目の前に登場した。真っ白な陶器の中に入った紫芋ペーストはより鮮やかさを増して、そのくっきりと浮き出た色にかなり胸が高鳴った。芳醇な香りを纏う台湾茶は、台湾菓子との相性が抜群である。

大人な空間は人を大人にさせてくれるようだ。よりこの空間に似合う人になりたいなと思うのだった。


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