【皇后杯】W杯とは意味合いの違う涙【ENEOS優勝10連覇】
ENEOS優勝おめでとう!!!
優勝が決まった瞬間、自分の推し選手の1人である星杏璃さんが泣いていたので、見ているこちらも目頭が熱くなってしまいました。
10連覇…凄まじい記録ですね。
皇后杯のENEOSの戦いっぷりは心にくるものがありました。
また、負けてしまったデンソーも選手たちはよく頑張っていました。手の届くところまで初優勝が見えていたのですがあと一歩及びませんでした。
今回は準決勝の
①トヨタ自動車 vs ENEOS戦
②富士通 vs デンソー戦
決勝の
③ENEOS vs デンソー戦
の3試合をふりかえっていきたいと思います。
【トヨタ自動車 vs ENEOS】裏目に出てしまったHCの采配
トヨタ自動車 57-77 ENEOS
1Q 13-24
2Q 26-13
3Q 8-19
4Q 10-21
【主な活躍】
宮下12点
渡嘉敷32点17リバウンド
星杏璃21点(3pt 3/5,2pt 5/10)
宮崎早織12点4リバウンド2スティール
決勝のENEOSデンソー戦にも言えることなのですが、拮抗したチーム同士の試合では時にHCの采配が勝敗を左右することがあります。
トヨタ自動車とENEOSの間には力の差を感じましたが、それ以上に采配ミスが目立つ試合でした。
勿論これは結果論なので大神HCを批判する気持ちはありません。
むしろ明らかに無謀な戦略を取るよりかは合理的な戦略が多く、個人的にはとても”ワクワク”させていただきました。
ですがプレーオフでENEOSに勝つためにもトヨタ自動車の悪かった点をふりかえっていこうと思います。
【明暗その1】宮崎 vs ステファニー
試合開始早々にトヨタ自動車は仕掛けてきました。
PGである宮崎さん(167cm)のマッチアップをステファニー(182cm)に。
この意図としては2つあって、
1つは「フィジカルもあって横の動きもついていけて抜かれたとしてもブロックにとべる、トヨタ自動車としてはディフェンスで自信のあるステファニーをENEOSで最ものせたくない選手の1人である宮崎選手につけて止めること」
もう1つは「奇策をすることで相手のリズムを崩すこと」
だと思います。
この意図は理解できるし、自分はとても面白いと感じたのですが結果的に全くハマりませんでした。
以下が第1Qの主なマッチアップです
宮崎早織(167cm) ー ステファニー(182cm)
星杏璃(170cm) ー 山本麻衣(163cm)
林咲希(173cm) ー 川井麻衣(171cm)
長岡萌映子(183cm) ー シラ・ソハナ・ファトージャ(187cm)
渡嘉敷来夢(193cm) ー 梅沢カディシャ樹奈(190cm)
宮崎選手は素直にスピードで勝負する選手なのでステファニーがマッチアップすることによってフィジカルを活かせず良さが半減してしまい、逆に宮崎選手のスピードにかき乱されてしまうことになってしまいました。1Qず~っと宮崎選手のスピードをとめられずそこからトヨタ自動車のディフェンスが崩壊してしまいました。
皇后杯の優勝予想記事で上記のようなことを書いたのですが、結果的にマッチアップを普通にして、ステファニーや宮下がしつこく林さんのところのミスマッチをついた方が良かったのではと感じました。
とはいえステファニーのディフェンスが効かなかったのは、宮崎さんの判断が素晴らしくて絶好調だったからだと思います。
【明暗その2】"戦術宮下"を続けてほしかった
1Qで13-24と11点差をつけられてしまったトヨタ自動車は、2Qで26-13でENEOSを13点上回り、39-37で前半を折り返しました。
この2Qでポイントとなるのは「戦術宮下」です。
2Q宮下と山本、宮下と川井のP&R(やP&P)がことごとく決まり、みるみるうちに得点を重ねていきました。
宮下さん(天才)のP&Rが上手すぎる…!
シュートを外した場面もありましたが、完全にENEOSのディフェンスを崩していたのでP&R自体は高確率で決まっていました。
ここまでは良かったのですが何故か後半宮下を絡めたP&Rをほとんどしなくなってしまいました(特に3Q)。
また、宮下がとても良かった時間帯では山本川井梅木の3ガードを採用していたのですが、「3ガードが上手くいっているかのように見えてしまったこと」も後半にかけてよくなかった要因かもしれないです。
後半開始早々3ガードを採用していたのですが宮下をさげていたこともあり、4分の間に1-9のランをくらってしまいました。
HCの采配は難しいですね…。
【明暗その3】シンプルなENEOS
2ビッグ、3ガード、マッチアップの変更、1-3-1ゾーン、など比較的"変わったこと"を試みていたトヨタ自動車に対してENEOSは素直なバスケットボールをしていたように感じました。
梅沢に対しては渡嘉敷が強気に1on1する
スピードのミスマッチをつく
上手い選手が長い時間出場する
相手のディフェンスミスを見逃さない
空いたら打つ
などシンプルでとても良かったように思います。
トヨタ自動車の采配ミスに関して色々書いていきましたが、トヨタ自動車が悪かったというよりかはENEOSがあまりにも良かったからこそ用意した戦術が破壊されてしまったというのが大きいと思います。
とにかくENEOSが素晴らしかったです。
トヨタ自動車はプレーオフでリベンジしましょう!
【富士通 vs デンソー】「町田封じ」デンソーがインサイドで圧倒
富士通 56-74 デンソー
1Q 10-22
2Q 17-20
3Q 14-26
4Q 15-6
【主な活躍】
赤木32分出場16点(2pt 7/8)
田中35分出場16点(3pt 2/4, 2pt 4/10)
高橋16点
宮澤さん、内尾さんのいない富士通はデンソーのオフェンスを止めることができず前半で試合が決まってしまいました。
デンソーの完成度がすごい!!!
富士通も厳しい状況の中、よく頑張りました!!!
特に赤木選手、田中選手の活躍が著しく、とてもかっこよかったです。
町田選手は宮澤さんがいない分の労力をまわされてしまい、ドライブコース、パスコースともに封じられ本来の持ち味をつぶされてしまいました。
世界の町田も流石に厳しい…。
デンソーの高橋さんはいい選手ですね!
速い!鋭い!うまい!シュート入る!かっこいい!
「未来」と書いて「みく」と読み、コートネームは「ミラ」。
しっかり覚えました。
富士通は宮澤さん、内尾さんが戻ってきたらまた別のチームに生まれ変わると思います。なんせあのENEOSに2連勝してますからね。
最近は赤木さんが台頭してきているし、若手がもっともっと成長していけたらプレーオフで面白い存在になりそうですね。
決勝【ENEOS vs デンソー】ENEOSの勝因は"ブラック企業化"
ENEOS 76-66 デンソー
1Q 17-20
2Q 22-17
3Q 10-13
4Q 27-16
【主な活躍】
宮崎35分出場10点10
星36分出場4アシスト
長岡40分出場18点
林40分出場
渡嘉敷40分出場32点22リバウンド3アシスト2スティール
さくら14点
ひまわり16点
皇后杯でどちらが優勝するか予想するアンケートをとったのですが、若干ENEOSが多い結果となりました。しかし41%票が入っていたり準決勝までの完成度を見たりすると、デンソーの優勝は大いにあり得たように感じました。
ENEOSとデンソーは30分間ほぼほぼ互角でした。何度もリードチェンジを繰り返したシーソーゲームでハラハラドキドキで最高の決勝戦でした。
試合を見ていた人なら誰もがわかることですが、第4Qの序盤に勝敗を左右するターニングポイントがあったのでふりかえっていこうと思います。
勝敗を分けた2-3ゾーン
バスケットボールというのは、オフェンスが圧倒的に有利なスポーツです。どんなに良いディフェンスをしても崩されてしまう可能性があります。
そのためディフェンスを行う時は相手のオフェンスで止めるべきところに優先度をつけてチームで取捨選択する必要があります。
いくつかわかりやすい例を挙げていきます。
①【オリンピック決勝】日本に対するアメリカの主なディフェンス
日本はPG町田を中心としたパッシングバスケが得意。そのためPGのプルアップ3ptとある程度のドライブは捨てて、パスとカッティングを徹底的にマークする。
→本橋さんが個で打開(ただ、それ以外が機能せず)
②【ワールドカップ予選】日本に対する各国のディフェンス
日本はPGが全ての中心。ボール運びの段階でとにかくPGにプレッシャーをかけて簡単にはエントリーに入らせない。
→大会中はなすすべなし。
③【NBAファイナル2022】ウォリアーズに対するセルティックスのディフェンス
史上最高のシューターであるカリーに対してもドロップで守り、カリーの個人技や3ptはある程度捨てて、ウォリアーズお得意のカッティングやペイントエリアの2ptを潰す。
→カリーがディープ3など高難易度のシュートを次々に決めて個人技で打開
何故このようなことを例にあげたかと言うと、デンソーのディフェンスに対するENEOSのアンサーが素晴らしかったからです。
デンソーは3Qから2-3ゾーンディフェンスを行っていました。
2-3ゾーンをする意図としては、ノリノリの渡嘉敷さんのインサイドを止めること。が主な理由だったと思います。
メリット:インサイドの渡嘉敷さんを止める
デメリット:ハイポストに簡単にボールが入りやすい。3pt打たれやすい
3Qはある程度守られていたENEOSでしたが、4Qではデンソーの2-3ゾーンに対して素早いボールまわしや3ptなど王道の崩し方で落ち着いて対応しました。
【4QENEOSの2-3ゾーンに対するオフェンス】
1回目 長岡ー渡嘉敷のハイローで2pt
2回目 長岡ー渡嘉敷のハイローで2pt
3回目 長岡の3pt
4回目 星3pt
→デンソータイムアウト
5回目 渡嘉敷0度からのターンアラウンドシュートで2pt
→ENEOSタイムアウト
→マンツーに戻す
これに関しては落ち着いて対応したENEOSの選手たちが素晴らしかったです。5連続で得点して4Q開始2分で一気に試合を決めてしまいました。
2-3ゾーンを攻略されたことや2-3ゾーンの質に関しては勝負事なのでしょうがないと思います。しかしそんなことよりも自分は疲れが出てくるこの時間帯にHCが2-3ゾーンを採用してしまったことの方が気になってしまいました。
前日の試合から合わせて渡嘉敷さんはほとんど休んでいません。他のENEOSの選手もず~っと試合に出続けています。
そのため走りあいに持ち込めばデンソーに分があります。
2-3ゾーンの時間帯のENEOSのオフェンスを見てもらえればわかると思うのですが、マンツーに対応するよりも割と休めちゃってるんですよね。
「ディフェンスは本気で。休みたいならオフェンスの時に休め」とどこかのNBAのHCが言っていたようにENEOSの選手たちに休みを与えてしまいました。
「マンツーの方が良かったんじゃないの?」という自分の意見は結果論な上に、本当にそうだったのかはわかりません。この皇后杯のENEOSの主力は異常(褒め言葉)だったので、マンツーにしたところで体力が削れたのかもわかりません。
そんなこんなでこの時間帯につけた点差を守り、ENEOSはデンソーに見事勝利することができました。
とにかくENEOSのスタメンが強かった!!!
MVP渡嘉敷40分フル出場
決勝では渡嘉敷、長岡、林が40分フル出場
星、宮崎は35分前後の出場(後半は20分フル出場)
とENEOSはほぼスタメン5人で戦っていました。
ENEOSが優勝できた一番の勝因はチームのブラック企業化かもしれません。
「スタメンの5人がすこぶる調子がいいな~」
→「ベンチメンバーを入れるとなんかほころびが出るな~」
→「そうだ!スタメンだけで戦えばいいんだ!」
とHCが考えたのかもしれません。
個人的には選手の怪我に直結するので長い時間の選手起用はあまり好きではないのですが、皇后杯は1発勝負のトーナメント戦なので今回に関して言えばナイス采配だったかもしれないです。
この一見無謀な選手起用にこたえた選手たちが凄すぎました。
全員ベスト5に入れたいくらい、ENEOSのスタメン5人が超人的でした。
ただ、ENEOSのベンチにいた選手やファンの方たちは悔しかったんじゃないでしょうか。超人の活躍をひたすら座りながら応援するしかなくて。
高田さん、中田さん、奥山さん、藤本さんあたりは他チームにいけば即戦力級なのでプレーオフまでにフィットしたいですね。
デンソーの優勝は近い
デンソーは優勝したENEOSとほぼ互角でした。運も絡んでくる中で、ほんのちょっと届きませんでした。
しかし、デンソーはもしかしたらいま最も将来有望なチームかもしれません。ベテランの髙田、本川は相変わらず素晴らしいのですが、中堅の赤穂姉妹は安定してるし、ルーキーの木村亜美はルーキー離れしたプレーを続けてるし、木村に負けじと若手の高橋や渡部も凄まじい活躍を見せるし、まだまだポテンシャルを秘めている永田もいるし、育成中のクンバもいるし…。
選手が揃っているだけでなくプレータイムもある程度与えられているのを見ると、正直とても羨ましいチームです。
デンソーは負けてしまいましたが、良いチームだと改めて感じた皇后杯になったのではないでしょうか。
ベスト5に星杏璃
【MVP】
渡嘉敷
【ベスト5】
渡嘉敷、星、林、さくら、ひまわり
個人的に各チームのMIP(Most Impressive Player)を選ぶとしたら…
ENEOS 星杏璃
デンソー 高橋未来
トヨタ自動車 川井麻衣
富士通 藤本愛妃
トヨタ紡織 伊波美空(東藤なな子)
三菱電機 渡邉亜弥
東京医療 古木梨子
日立ハイテク 船生晴香
ENEOSとトヨタ自動車の開幕戦で好きになった星杏璃さんが皇后杯の決勝で活躍するまでに成長したのがとても嬉しいです。
皇后杯、本当に面白かったです。
宮崎早織、悔し涙から嬉し涙に
ワールドカップ2022では多くの選手が悔し涙を流していました。1年前の美しいバスケを捨てた結果が予選敗退に終わり、女子バスケファンとしてはJBAに怒りがこみ上げてくるほど悔しかったです。
今回の皇后杯では推しチームのトヨタ紡織もトヨタ自動車も、
そして今シーズン注目していたシャンソンも富士通も負けてしまいました。
しかし、この皇后杯での負けは「意味のある負け」だったように思うので、悔しい気持ちは感じつつも、どこか爽やかな気持ちで終われました。
ENEOSのPGの宮崎早織さんは、ワールドカップの時に泣いていました。
今回の皇后杯でも宮崎早織さんは泣いていました。
しかし、その意味は全く別のもので皇后杯の宮崎さんの泣き顔はとても美しく見えました。
推し選手たちのこんな顔を見たい!
ワールドカップの時のあんな顔は見たくない!
宮崎さんのインタビューや星杏璃さんの涙を見て、そう感じた皇后杯でした。
おわり
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