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【後半】ババコンにいったよ、の巻。

「〇〇先生のお嬢さん?この子が花束渡されたお孫さん?あらまぁかわいい。」

コンサートが終わってから、息子はありとあらゆるマダムに頭を撫でてもらっていた。

コンサートの最後。母は、「みなさまのおかげで」と何度もいった。忙しいひと、というのは知っていたが、こんなにも人と関わり、関係を広げているとは思いもしなかった。

「すごい」

純粋にそう思った。
還暦を超えてソロコンサートを開く気概、約45年も継続し、研鑽を積んだその技術と表現、多くの人に尊敬される人間性。

まっすぐに、ただまっすぐにすごい、と思った。(思春期が子供を産んでから来たわたしは、ここ数年まで若干こじらせていたので、この感情は新鮮だった。)

わたしは、こうあれているだろうか。
子に魅せる生き方ができているだろうか。
ガツン!と、何かおおきな宿題をもらった気がした。


その夜。顔と髪だけバチバチの母が、帰ってきた。(私たちは先に帰っていた)「一階トイレ使えんのんやで。」といいながら。

「使えへんのやけど、二階のトイレいくのも面倒くさいから、お風呂の水で流すんや。」という。


まさか家のトイレを流すのに風呂から水を運んでいるなんて、あの神戸のマダムたちは、思いもしないだろう。

そんな話をすると、
「現実は、こんなもんや。」
「トイレを風呂の水で、流すんや。」

と、顔だけオペラ歌手の人がいった。



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