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『ウエストワールド』ー来るポストヒューマンに向けて

今回は、映画じゃなくてドラマを。

 JJ.エイブラムス総製作指揮の『ウエストワールド』。amazonプライムでやっと配信されて、光の速さで観終わった。
 人間をもてなすホストのアンドロイドと、ゲストとしてウエストワールドへやってくる人間。あるアップデートがきっかけで、何体かのアンドロイドがプログラムにない動きを見せはじめ...というストーリー。アンドロイドが人間と対立したり、自分をアンドロイドだと自覚したり、まあいろんなことが起こるわけです。


 魅力を挙げたらきりがないけれど、まず、設定だけでめちゃくちゃおもしろい。あと、まあとにかくとにかく映像がきれい。テーマパーク「ウエストワールド」内のアメリカ西部のウエスタンな建物と大自然と、それを管理するオフィスの、クールでクリーンだけどちょっと冷たいフューチャー感。二つのシーンを行き来する不思議さよ。そこにJ・J・エイブラムスのカメラワークが加わって、とりあえずため息しか出ません。(J・J・エイブラムスは、ミッションインポッシブルとか、スタートレックとか、スターウォーズ ep.7、そして次作のep.9を監督している映画監督です。この人は本当にすごい、カメラワークもストーリーも。多分、SF撮らせたらここ最近で一番かっこいい。URLからウィキペディアへ飛びますので、詳細はそちらから。)


 それも、アンドロイドと人間って、作中でもまったく見分けがつかないんです。(ここも、作中でとても大事な部分になってくる。)とりあえず一話で「こいつ絶対主人公だろうなー」っていう山を張りながら観てみてほしい。絶対外れるから。まあ、主人公っていうよりかは、何人か重要な人物がいるかんじになるんだけど。

 実は、これを観てすぐに水戸芸術館で開催されていた『ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて』という展示を観たから、余計「ポストヒューマン」という言葉とも絡めて、ドラマについてめちゃくちゃ考えました。以下、ハローワールド展の概要を引用します。

”芸術は、いわば「危険早期発見装置」である。そのおかげでわれわれは、社会的、精神的危険の兆候をいち早く発見でき、余裕をもってそれに対処する準備をすることが出来るのである。*1

これは1960年代に鋭い先見性で、新しい技術がもたらす社会変革を予見したメディア批評家マーシャル・マクルーハンの言葉です。彼が活躍した時代から半世紀が過ぎた今、インターネットが社会に浸透し、人工知能などの新しい技術革新が進められています。「どんな技術も、次第に、まったく新しい人間環境を作り出していく」*2という同氏の言葉通り、テクノロジーは人類に全く新しい世界をもたらしてきました。こうした変革は、希望に満ちた新しい時代のドアとして期待される一方、さまざまな問題や混乱が危惧されています。技術革新がもたらす時代の光と影について、アーティストはどのように反応しているのでしょうか。本展は、革新と混沌が交錯する現在、そして未来に対し、鋭い感性で応答する国内外のアーティスト8組の作品を通し、テクノロジーが作り出すこれからの社会について考える機会を創出します。”(引用元:https://www.arttowermito.or.jp/gallery/gallery02.html?id=471

 まあ要は、「技術の革新によって新しい時代に踏み出そうとしてるけど、そこに生まれる光と影を考えてみましょうよ」的なことがコンセプトの、企画展。話は逸れますが、けっこうおもしろかった。

 そんなコンセプトの水戸芸の展示の中で、ペッパーくんとアイボ(ロボット犬)が画面の中のAIに恋をする、という演劇をしていたのが、特に印象に残ってて。ウエストワールドを観ていたから、余計そうなんだろうな。確かにペッパーくんたちが演じている筋書きは人間がプログラムしているけれど、人間が演じることと何が違うんだろうと思ったりした。だって、舞台も自分じゃない誰かが書いた脚本に沿って演じていく、という点では同じ。もちろん人間が演じるということと、現時点でのペッパーくんが演じるということの間に大きな開きがあることは分かるにせよ、だけれど、この違いは、少しずつペッパーくんが人間に肉薄していくのかもしれない、とも。

 ウエストワールドは、その肉薄が、本当に肉、いや皮一枚になった状態のドラマだと思う。アンドロイドはプログラムされているけど、じゃあ、果たして人間もプログラムされているとは言えないのか?アンドロイドの性格を形成するために記憶を一体ずつに持たせてるんだけど、これって人間も同じじゃないのか?じゃあ、人格ってなんなんだろう?観終わっても、まだ悶々と考え続けています。

 現在は、シーズン1が終わって、シーズン2も実はもう公開中。まだアマゾンにないから観れてないけど、BSのスターチャンネルなら観れるっぽいで。(うちはBSが繋がらない・・・。)今か今かと、アマゾンプライムと睨めっこしています。

 このドラマが、ポストヒューマン的な問いに対して絶対的な答えを提示してくれるとは思わないけれど、ただ一つ、これからの未来の大きな仮説として、制作されているのかもとは思う。それくらい、壮大で、共通のテーマなのかなって。

 ちょっとどきどきするシーンもあるから、夕方の暮れなずみどき、夕日が赤い日なんかに観始めると、よりウエストワールド(西部)を感じられるかもしれないな。

公式サイト→https://www.star-ch.jp/drama/westworld/

 

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