出張とインク沼、ささやかなお祝い
ちょっと前、また出張で県外へ向かった。
会社勤めでなくなってから、どのような格好をして仕事に向かうのかと考えることが増えた。どうして服について悩むかというと、仕事先が自分なりのお洒落を知っていて、身に纏うもので自分の見せ方を心得ている人たちだということも大きい。
夏にも似たようなことで一度考え込んだけれど、しばらくは季節の変わり目ごとに頭を悩ませることが続くような気がしている。
会社という分かりやすいラベルがなくなった私をどのように見せるのか、ということは加減が難しい。気を抜くとふわんとしすぎるし、ちょっと間違うと会社で働いている人っぽくなりすぎてしまう。
今回の出張では、着る服に合わせたアクセサリーを選ぶというのが個人的な課題だった。パーソナルカラー的にはシルバーらしいけど、ここ数年は何となくゴールドのほうがしっくりくる。
今までと変わったのは、手元をもう少し飾りたくなったこと。キーボードをずっと見つめていると、手にきらきらが欲しくなる。
この出張では、プレスリリースを見たときにぴんと来て予約した、OSAJIのオードトワレ〈菫〉が香りのお供だった。
届いてからずっと寝香水にしているくらい、すっかりお気に入り。
公式の香りの説明文はかなりイメージに振ったものだけれど、そうしたのも頷けるような、概念の春と菫の香りだと思っている。だから、冬の気配がする今に使ってもしっくりくるのかもしれない。ふんわりと柔らかくて、ことばではすくい取り切れないような不思議なニュアンスがある。
最近の取材セットはこんな感じ。キーボードは折りたたみじゃない方にした。取材のとき、気がつくとお仕事道具を見つめられており、さりげなくチェックされている。誰か新しい万年筆に触れてくれないかな……と思いながら取材をしたけれど、いまのところ万年筆ではなくレコーダーが人気。
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そうそう。出張が急遽一泊延びたので、文具好きなら名前を知っているお店の一つ・ナガサワ文具センターに行けたのが嬉しかった。
さすがはナガサワといった感じで、ほぼすべてのインクに見本帳があったので、棚とインク見本を比べ見ながら小一時間ほど悩んだ。とりわけ、日々種類が増え続けている Tono & Lims は見本帳がありがたかったな。
こちらが、足を痛ませながら選んで買ったインクたち。
ちなみに、一番右の一本以外はぜんぶシマーリングインク。きらきらが好き。ガラスペンが増えたので、前よりもシマーリングインクを気軽に買えるようになった。少し前に、インク沼的なnoteも書きました↓
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本の原稿が手を離れるのと、出張に行った原稿の入稿がほぼ同時期で、あやうくお腹がよじれるかと思った。幸い、出張のほうがほぼノーリテイクだったので……それはそれで恐いのだけども、何とかよじれないで済んだ。
ささやかなお祝いがてら、飲みに行った先で居合わせた人にお薦めされたお店にふらっと飲みに行った。だいたいいつもそこにいるから、また一緒に飲もうよ。だなんて言っていた人はいなかったけれども(そもそも名前も連絡先もしらないし、顔も詳細が思い出せない……)、はじめて入るお店はそこそこ賑わっていて、原稿疲れの身には少し賑やかすぎるくらいだった。
一人での食事は何ら苦にならないタイプだけど、(ええ、おいしい! この料理のここがこうで、この食材にこの味つけが効いていて)などといった感想を黙々と咀嚼しながら内心で呟いているときだけは、なんだか不思議な面白みを感じる。
ここはワインが売りのお店だったけど、このプレートが……予想外にボリュームがあることと、何より野菜がおいしくて、お酒の方をおろそかにしてしまうくらいだった。有機野菜や産地へのこだわりは然程ないほうだけれども、身体に染み渡るおいしさというのはまざまざと分かるもので。とりたてて注文することのないアボカドをおいしいな、と心から思えたのは久しぶりのことだった。これだけのために、また行きたい。
最後は見事にワインを余らせてしまって、本を読みながらすーっと飲み干した。その喉をすべり落ちる感触に、ああお酒を飲むの、久しぶりだわあと思って。外食がなければあまりお酒を飲まないこともあり、ひさびさにほろほろ酔いながら夜道を歩いた。