やさしい鬼 日記3
ココのボキャブラリーのすごさの一つに、
人を傷つけることを言わないというのがある。
私のことも、
「ナナは、世界一きれいなお母さんだ」
とか、
「ナナのつくる料理は、宇宙一だ」
「ナナは子供を三人も産んだ女神だね」
とか
数々のココ語録を残している。
ココは、決して母のことを悪く言わないので、
お母さん大好き息子に育ててよかったな、と心底おもう。
私のモチベーションの8割は、
ココの発言に支えられ、
言わばお母さん親衛隊の隊長を務めているようなもの。
しかし、日々この発言どおりに優しいお母さんなどというわけがない。
ピピの妊娠出産を通し、思うようにいかない身体と家事、育児の間でストレスが爆発し
「ここに、洗濯物おかないで!」
「ちゃんと最後までかたづけて」
「おもちゃ出しっぱなし!捨てるよ!」
と日々のたまった怒りが、家中に炎となってばらまかれることがある。
まるで、東京を焼き尽くすゴジラさながら。
そんなときは、怒られたココたちはシュンとなり黙って片付けをしだし、
デッテは目もあわせぬ物言わぬ生物となり、
触らぬ神から静かに気配を消し遠ざかっていく。
こうして、何度も焼き討ちに会うたびに、それぞれが習性を覚えていく。
そんなある日、デッテが
「あんまり怒るなよ。俺たちも悪いけど、ナナはタダでさえいつもイライラして怒る沸点が低いじゃん。そういうのこっちも大変」
的なことを言い出した。
何を~?!確かに、私の沸点は低いかもしれないけれど、
24でファミレスばりにピピの面倒をみてるわけよ!
自分の自由な時間もあって元気に何でもバリバリってわけにもいかん
この身体と状況をおもんぱかって、
そこはおんどれらがもっと働けよ!と反撃しそうになったら、
すかさずココが
「デッテ、そんな風にナナのこというなよ。
ナナは、ピピの面倒で大変なんだから、ナナの気持ちわかってあげないと」
と目から鱗な発言をしてかばってくれた!
さすが、ナナ親衛隊隊長。
やっぱり一番母のことを思ってくれるのは、あんたなんだね。と感動していると、
「まあ、確かに、ナナはちょっとだけ怒りすぎることもあるけど」
と、モジモジ。
ん、奥歯に何かはさまってる?
さすがに何度も焼き討ちにあっているから、何か言いたいことでもあるのか?
「まあ、ちょっとだけ怒るのも仕方ないけど」
ん?
なんか、ちょっと雲行きが・・・?
親衛隊隊長どうしたの!?
本当は、ナナそんなに怒らないで、と言うと、わたしを傷つけると思ったであろうココが苦渋の末、デッテにむかってフォローしたのが
「ナナが怒るのは仕方ないんだよ!
やさしい鬼の生きのこりだから!」
と、すごい底辺の底辺の砂を、微妙な角度ですくいあげた。
やさしいけど鬼!しかも、生きのこりって!!
さすが隊長ココ。
ちなみにだが、親衛隊の隊員は、いまだココ一人。
ハナは女の子特有か、
わたしに反発しながら堂々と張り合う敵陣(ライバル)の座にいる。