忘れられない手紙の話
今日は少し昔の話を。途中まで無料なので、よかったら立ち読みしてもらえると嬉しいです。
もう10年以上前の話。
私には航空会社の制服を着て、黒のパンプスで空港内を走り回った時代があった。
痩せていた笑
見栄えはするかもしれないが、
早番があれば遅番もあり、台風が来ても盆暮正月もシフトに従って出勤だ。
そして結構忙しい。定時に飛行機を出す為、お客さまのニーズに応える為
大いに奮闘する。
華やかな世界の裏側というのは得てしてどこか共通するものがあるんじゃないかと思っている。
芸能界とか。詳しく知らないけど。
そんな空港で出会った何万人かもわからないお客さまの中で忘れられない方というのは何人かいるのだが、今日はそのうちの一人の方とのお話を聞いてほしい。
どこまで詳しく書いていいのか迷ったので、少しぼかして書くけれどご了承をお願いいたします。
不穏な雰囲気のカウンター
ある日のカウンター。後輩が旅行会社の添乗員さんにめちゃくちゃ怒られていた。
30代半ばくらいだろうか。テキパキ、チャキチャキがモットーそうなショートカットの女性が声を荒げて怒っている。もう誰が見ても怒っている。そして数メートル離れた小さなブースに責任者の上司。え?フォローしに行かないのかいと思いつつ様子を伺う。
ついに添乗員の女性はカウンターをばしん、と叩いて
『どうすんのよ!!こっちは前日からそちらに電話してまで確認して席割り振ってんのよ!間違ってましたじゃすまないでしょ!!こんなバラバラな席どうしてくれんのよ!!!!!』
と大声で捲し立てた。
後輩の女の子が完全に萎縮している。手が少し震えているように見える。もう限界だ。私は助けにいく事にした。
後輩の背中を小さくゆっくりトントンと叩き、
『失礼します。ご一緒にお話しお伺いさせていただいてもよろしいでしょうか?』と添乗員さんに断りを入れて話を聞かせてもらうことにした。
すると女性が前日に添乗している団体の席割り(どの席がその団体に割り振られているか、いくつかの確認事項を踏まえて前日に照会することができる)を確認したのに渡されたのは全然違う座席の搭乗券。どうなってんのよ!しかも全然バラバラ!
と私にも噛みついた。
至急確認します、と言ってチェックするとなるほどミスが起きている。
割愛するが前日の時点でミスっている。ここにいる後輩ちゃんのせいではない。
これは完全にこちらの落ち度だ。
『申し訳ありません。こちらの手違いでお客さまにお伝えするべき
搭乗券の座席番号を間違ってお伝えしていたようです。
すぐに皆様お近くのお席をご用意し直しますので5分から10分程度お時間いただけませんでしょうか?』と伝えた。
すると少し溜飲が下がったのか、テンションが落ち着き『早くしてよね』とだけ
ぽつりと言った。
搭乗名簿だけ借りて、添乗員さんは少しカウンターを離れてもらった。
後輩が半泣きの状態で『シマさんありがとうございます』と言った。
大丈夫。
よく頑張った。あと少し、座席調整だけ手伝ってね。終わったら裏で少し水でも飲んでおいで。添乗員さんには私が話に行くから。
そう話して、搭乗券を発行し直して、添乗員さんの元へ向かった。
その前に一応上司に団体でミスが起こってます。クレームになってるので
後輩に代わって搭乗券渡しにいきます、と話したところにこやかに
『あ、そう。よろしくね』とだけ言われた。
オイ、そんだけかい。
まぁそんだけしか言わない人は部下があんなに怒られてても放っとくよね。
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