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人生初手術が尻⑦ 〜入院5日目・モヤモヤとスッキリと〜
※本記事では筆者実体験の痔の手術について出来る限りおもしろおかしくレポをしておりますが、経験者の方やこれから経験する方を貶める目的のものでは決してありません。また、上記のような目的としての記事の流用は決して容認致しません。
朝4:30。目が覚める。
でんでんと遭遇した昨晩、スマホのいじりすぎのせいか、目が冴えてしまってなかなか眠れなかった。
寝不足のはずなのにこんな時間に目を覚ましたのは、おなかに違和感を感じたからである。
あ、これは催している……。
慌ててトイレに駆け込む。
亀ちゃん先生にも言われたことではあるが、今は術後で、おSiriの患部がバグを起こしているような状態である。便意をうまく便意と認識できていなくて、出ないのに「絶対に出る!」と思ってしまうような感覚がする事もあれば、もう限界なのに全く気づけない事もあるらしい。Siri穴チキンレースというわけである。
でも今回に関してはは「くる」、という確信があった。
結果、やはり形を成したものではなかったが、なんとか産出。
問題はこの後だった。
立ち上がった瞬間、再度の催し。
あれっしかもかなり強くない!?
無視したら恐らくは誤射してしまうのではないかという感覚。み、ミサイルが!ミサイルがきてる!
でも、トイレで”いきむ”のは基本五分までと言われている。先程のターンですでに五分は消化してる!
このままがんばったら多分痛くなっちゃう気がする……。
迷った末、恥と外聞が勝った。
便座に再度腰掛け、いきんでしまう。ミサイル誤射する事もあるよ、と最初に軽く言われはしたものの、やっぱりやだよね、アラサーで…誤射はさ……。
思い切った甲斐はあった。
やったぜ命中!少量だけど!
しかし代償も大きかった。
それなりの血が流れ、そして、
そしてめちゃくちゃに、
本当にめちゃくちゃにものすごく信じられないくらいの激痛が筆者を襲った!!!!
最弱ウォッシュレットをし、ペーパーで拭かずに叩くように水気を吸い、パッドに薬を塗って交換し、トイレを出て手を洗って、すぐさま痛み止めの頓服薬を飲んで、よろよろとベッドに潜り込む。この時点で4:45。
いってえええええええええ~~~~~……。
楽になると推奨されている、横向きになって軽く膝を曲げる体勢をとっても、じんじんガンガンゴンゴン、鈍痛、とはよく言ったものだ。低く響くバリトンのような鈍い痛みは全てを凌駕する。ヤムチャポーズで瀕死。
この時、また時間が経ったら忘れてしまうと思い、書いたメモがあるのでそのまま掲載する。
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手すりをぎりぎりと音がする程に握りしめながら、歯を噛み締め、鼻息荒く、目を血走らせ、スマホに指をこすりつけるようにしてこれを書いた。いや本当にもはやホラー。
こうして見ると痛みに対しての語彙力全くないな。えーと例えるなら、ビー玉大くらいのサイズのイガ栗を肛門に入れてるみたいな感覚でした。割とマジで。やっぱり語彙力ないな。
耐えられない。
そう思ってしまい、頓服薬を飲んでから五分もしない内にナースコールに手をかけた。ちょっとこれは普通じゃないんじゃないかと思ったからだ。糸が切れたのかも。傷が開いたかも。そういう恐怖がよぎった。
押す前、一瞬でんでんの顔が頭をよぎる。
…………あの人くるかな?
なんだか、いやほんとこれ偏見だったら申し訳ないんだけど、嫌な事を言われそうな気がする。いやそんなことないと思うんだけど。ないよね?私が勝手に苦手意識を持ってしまっただけだよね?きっと普通にケアしてくれるよね?何か対策を提案してくれればそれで十分なのでね!いやあーでもあと一時間くらい我慢すれば風呂の時間だし、もうちょっと我慢するのもありか……?頓服薬も飲んだし、結局は我慢する以外選択肢ないような気もするし!
だめだった。限界。押した。
「どうしました~?」
そしてやっぱり来たのはでんでんだった。
「す、すいません、さっきお通じが来て、ちょっと二回くらいがんばってしまって……痛みがひどくて」
「あ〜…頓服薬飲んでいいですよ~」
「の、飲みました」
なんか、ちょっと嫌な間。
「あ、そう。あのねぇ、二回なんていきんだりしたらそりゃ痛くなりますよ。今はおしりが便意を正しく認識できない段階なんだから……」
え、ちょっと待てこの人もしかして説教始めた?
「あ、はい、スミマセン……あのただ、一回した後どうしても……漏れちゃいそうな感覚があって」
「それでもそこでがんばったのは間違いだね。スッキリしようとするからいけない。普段の生活だと排泄するとスッキリするということが……
~~中略~~
いきむのは五分までって動画で勉強したでしょ?ちゃんと守ってもらわないと。頓服薬飲んだんなら、しばらく耐えるしかないです。今後気をつけてくださいね!?」
「ハ、イ…………???」
なんで私明け方5時前に勇気振り絞ってナースコール押した結果、説教受けてるの???????
特に触診もする事なく出ていくでんでん。嘘だろマジか放置か……。
が、数分後、でんでん戻ってきた。
「棚卸さん、今回は特別に6時前にお風呂入れましたから、5分後に1番のお風呂に行ってください」
「あ、え、ありがとうございます。助かります」
なんだ、でんでんちょっとはいいところあr……
「あのね、今回だけです。特別ですからね?明日以降の当直の人に『昨日はしてもらえた』なんて言わないでくださいね。今後ないですから」
もうナースコール金輪際使わねーーーーー!!!!
ってなるでしょうが!!
気をつけなはれやぁ!!(別に普通に使います)
そんな朝の一幕でした。
まぁこれがナースコール押しまくってる相手とかならまだ分かるが、私なら初回の人にああいう物怖じされそうな言い方はせんな。ケッ。
とふてくされつつも、風呂はありがたいのでいただく。頓服薬も割とすぐに効いてきて、風呂に入ったら大分痛みは引いた。
それでも少しまだ痛かったので、ワイヤレスイヤフォンで音楽など聴いて過ごしていたら、でんでんは再度やってきて診察とまた少し説教していった。
大変モヤモヤした。
朝ごはん。
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ナンデこの日の朝に限って豆を煮た…。
朝食:白米、大根の味噌汁、豆と根菜煮たやつ、キャベツの粒マスタードサラダ、ヤクルトもどき(リンゴジュース)
ううっ……ごめんなさいっ……
本当にごめんなさい、食べられないっ…!!!
味噌汁は美味しく飲み、キャベツは少しかじったものの、好き嫌い7割、痛みの余韻3割で早々に食事を諦める。ヤクルトもどきは飲んだ…。
8割方残してしまった…米もほぼ残してしまった…本当にごめんなさい…。
昨晩ちゃんと寝ていなかった事もあり、今朝の誤射未遂ヤムチャ事件もあり、食べて薬をのんだらめちゃくちゃ眠くなってしまい、相当に深く爆睡。
ある少年が人間業とは思えないようなアクロバットな曲技を見せてくれるというので、まるでアコーディオンのような横に長いカメラを用意し、ちょっと待って!!いま画角見てるから!!まだやらないで!!!まってね!!!まって!!!………おっけー!!!お願いします!!!!!
と言ったところで
「棚卸さーん、先生の診察がありますので起きてくださーい」
「フガァ!」
目が覚めた。
夢だった。
もうちょっとでアクロバット見れたのに。
「え!診察いまですか!?」
「今です!お願いします!」
「ファぁイ…」
なんか今日は色々と間がよくないな…と思いながら、亀ちゃん先生の診察へ。
「亀ちゃん先生なんですが、ここから数日別の病院での診察がありますので次の診察は少し先になります。もし聞きたいことがあれば今日お願いしますね」
案内してくれた看護師さんにそう言われ、ちょっと考える。まぁ今朝みたいな事にならないためには、てのは聞いておいた方がいいだろうな…。
「はーい棚卸さん、こんにちはー」
ようやく名前で呼んでくれた。
亀ちゃんの診察&痛みレベル14の座薬に堪える。
「うんうん、よくなってますよ。なんかいつも傷が多い多いって言っちゃって申し訳ないけどね、」
あっそれ自覚あったんスね!?
申し訳ないって気持ちあったんスね!!
「なんか今朝ちょっと大変だったんだって?」
あ、でんでん報告してんのね。
「あーはい、ちょっと二回がんばってしまってすごく痛くなって……一度してまだきそうみたいな時ってやめておいた方がいいんでしょうか…?」
「いきみすぎちゃうのはね!よくないよね!かといっていきまないと出てこないからね!いきみすぎず、いきまなすぎずを見極めないと!」
「?………むずかしいですね?」
「難しくないよ!!!!!」
「え」
「難しくないよ!!!!!その塩梅を確かめるための教習所みたいなものなんだからこの入院期間は。退院までに完治するわけじゃないんだから、しっかり身につけていって!」
「あ、はぁ」
「じゃ、お大事に!!」
………なんかはぐらかされた気がするんですけどぉ!
またしてもモヤモヤ。
昼食です。
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えーーー!!!カレーウドゥンだぁ!!!!
昼食:カレーうどん、絹豆腐のきのこあんかけ、茄子とピーマンの煮浸し、バナナヨーグルト、お茶
味濃い主食に俄然テンションが上がる!
カレーうどん、出汁きいてて美味しい!豆腐も大好物だし、茄子とピーマン煮浸しはちょっと苦手だけどカレーで流せばいける!カレーうまい!肉も入ってるしカレーうまい!カレーうまい!カレーう
多い!!!!!!!!!!
だめだまた残してしまった…ごめんなさいごめんなさい…。あとこの日の昼食のトップオブ美味いはぶっちぎりでバナナヨーグルトでした。うますぎ。ボウルいっぱいください。
昼食後、恒例のお通じ。あっなんかちょっと形が見えてきた…!!
と思ったらまたしても激痛。しばらく耐えてから誰か呼ぶか考えようと決め、ベッドでヤムチャすること10分。アッ…なんか楽になってきた。
なるほど、特に頓服薬飲まなくても、一旦10分は様子見てみた方がよさそうだなと学習した。痛いのはまじで痛くて本当に悶絶するし握った手すりをガタガタ言わせる勢いなんだけど、引くと一気に楽になる。
一応温めておきたいので風呂も予約。
今朝の風呂は焦りすぎててなんもできなかったからちょっとゆったりめに入って、しっかり髪を洗った。
戻ってきて髪乾かして少しゆっくりしてたら、15時になった。
実はこの病院、一階に小さな売店がある。入院患者は平日の15時から17時の間だけ、その売店に行くことが許されているのだ。
行ってみたかったがタイミングがなくて楽しみにしていた。外には出られないが外出の気分でお財布とショッピングバッグを手にエレベーターへ。
結果、購入品。
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俺はなんてつまらない人間なんだ。
そういえば、病室は5階にあるんだけど、エレベーターホールで看護師さんに叱られている中年男性がいた。
どうも運動がてら5階から1階を階段で昇り降りしようとして見つかったらしい。
あれくらいアグレッシブに生きてみたいもんだ。
戻ってきてまた爆睡してしまった。本当に今日はよく寝ている。全て痛みのせい…。
一瞬で夕食。
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夕食:白米、白身魚のピカタ…?デミグラスソース掛け、ブロッコリー、マカロニサラダ、漬物、さつま芋の甘露煮
白身魚、すごくおいしかった!お米も進む味付けでうれしい(一勝)。棚卸さんは好物の一つがブロッコリーなのですが、病院食のブロッコリーはめちゃくちゃ柔らかい!ちょっとだけ苦手!固茹でが好き!食べますが!!!!(引き分け)マカロニサラダはいつどこで食べても絶品で最高(一勝)。漬物は苦手(一敗)。さつま芋の甘露煮、場合による!
勝負はさつま芋の甘露煮に託された。
こいつが"しっとり系"なら好物。私の勝ち。
こいつが"ホクホク系"ならえずく程嫌い。私の負け。
さて勝負の行方はーーーーーー!?
「…………オゥエッ!!!」
"ホクホク系"でした!完敗です!(でも食べたよ!)
夕食後に最後のお風呂を予約した。
今日はなんかあんまいい事なかったなぁ…とため息をついていると、夜の検温に看護師さんが現れた。もうでんでんの出番は終了となっていたようでほっとする。
今回の当直は女優のりょうさんっぽい美人さんだが、少し雰囲気をマイルドにした方だった。
「こんばんは〜、お熱失礼しますね」
熱を測ってもらいがてら、二、三言会話する。このへんは看護師さんによってかなり個人差があって、淡々と仕事だけされる方と少し雑談する方といるが、その中でもダントツで話し出しが上手かったのはこのりょうさんだった。なんか気づいたら話してたんだもん。
「それで、今日ものすごく寝ちゃったんです。無駄にしちゃったなぁって…」
昼寝をしすぎてしまったことをついこぼしてしまう。彼女は快活に笑う人だった。
「いやでも、お仕事されてたらこんな機会絶対ないじゃないですか!寝溜めしておいてもバチは当たりませんよ」
「あー、なるほど…そう言ってもらえると心置きなく寝れますね」
「あははは!」
「今朝は起きたばっかりでお通じうまくいかなくて、ナースコールしちゃって男性の看護師さんに怒られちゃいまして…」
「うまくいかないっていうのは?」
今朝あったことを話したところ、とても冷静に話を聞いてくれるりょうさん。
「なるほど…じゃあ頓服薬の痛み止めは前日の夕方が最後で、明け方お通じがんばった後で痛くなって飲んだんですね」
「はい。やっぱり二回がんばったのがだめだったんですかねぇ…でも漏らしたらやだしと思っちゃって…」
「二回目便意感じて、すぐ出たんですよね?」
「はい」
「ならそれは仕方なかったと思います。間違ってないですよ」
「へっ」
「痛みが出ちゃうのは、頓服薬のタイミングで調整したらいいかもしれませんね」
「タイミング」
「18時の夕食後のロキソニンだけで乗り切ろうとすると朝までもたないでしょう?頓服薬はロキソニンから2時間あけないといけなくて、頓服薬同士は6時間あけなきゃいけません。だから寝る直前、消灯の22時に頓服薬を飲むんです。そうしたら今朝の場合だったら、4:30に催したわけですから、うまくいけば頓服薬がまだ効いていたかもしれない。切れてしまっていても、6時間空いてるのですぐに頓服薬を服用できます。そんな感じで、痛くなくても先読みして飲むって手もあるんですよ」
えーーーーーーーー
対処法、超絶具体的で有効そうなんですけどーーーーーーーーーーーーーーー……
でんでんも亀ちゃん先生も教えてくれなかったりょうさんの超有効そうなアドバイスに、目から鱗が落ちまくる棚卸さん。
「あ、ありがとうございます!なんか、亀ちゃん先生にも『難しいですね』って言ったら『難しくないよ!』とか言われちゃってへこんで………」
「あはははは!いや、それは難しいって!難しいですよねぇ!」
しゅ、しゅき〜〜〜〜〜〜〜!!!!
ガララ、と他の方が部屋を覗き込んできた。
「棚卸さん、お風呂3番の部屋でお願いします」
「3番、はい!」
「あ、じゃあ私これで失礼しますね。何かあったら全然呼んでくださいね!」
「あっ、ありがとうございます!!!」
こうしてりょうさんは棚卸さんを恋に落とし去っていったのである。
この日はなかなかしんどいことの多い一日だったが、本当に彼女の何気ない言葉に救われたし、具体的解決方法を与えられる事の深い安心感を知った。
もしその方法がうまくいかなかったとして、いいのだ。対処法も知らずに迎える朝に比べると、明らかに明日が怖くなくなった。
そしてシンプルに、モヤモヤしていたことを肯定してくれて、笑ってくれたのは救いだった。
人間の言葉って強いよなぁ。
簡単に人を殴るし、癒やしもする。
もしかしたらでんでんの言葉に胸打たれる人もいるかもしれんし、亀ちゃんの言葉に気持ちが楽になる人もいるかもしれないけれど。
私は今日、最後にりょうさんの言葉が聞けてよかったな。
寝る前の頓服薬、やってみようと思いつつ、その日は軽い足取りで3番の風呂に向かったのであった。