【小説】敵とは何かを考えさせられる「人類全て俺の敵」(著:凪、画:めふぃすと)
「人類全て敵なのは流石に無理ゲーだよね」
そう思いながら読む前に想像したのは無双バトル系。もしも主人公のチート能力による暴れっぷりの描写が主な内容ならば僕の好みとは違うかもと思いつつ、とはいえ第28回スニーカー大賞の頂点作品がそんな展開だけであるはずがないと思いなおし購入した本作。
読み終えた時、「僕の勘は正しかった」と真っ先に思ったのでした。まずは、内容紹介から。
改めて作品紹介を読むとバトル物の雰囲気がぷんぷんとするのだけど、読み進めるうちに理解したのは、物語が描きたいのはバトルよりも他にあるのだということ。
例えば。
神が押し付ける理不尽な聖戦というステージの上で、魔王にされた無垢な少女を助けるか、その他の人類を助けるかという主人公への壮大なトロッコ問題の押し付け。
誠実な主人公(なんとなくFate/stay nightの主人公、衛宮士郎っぽい)の親友や魔王、そして物語の進展と共に出会う人々の、物語の展開と共に揺れ動く心。
人類のために魔王の命を狙う十人の天使たちについても、バトル描写だけではなく、戦いに至るまでの背景や思考を丁寧に物語に組み込もうとしている様。
つまり、そんな主人公と誰かの心の内が本作の見所というのが、僕の感想。
なお、タイトルには「人類全て俺の敵」とあるのですが、本作を読み終えて登場人物たちの心のうちを知ったいま、「人類全て俺の敵」という言葉の意味をより深く考えようとする自分がいます。何故ならば、主人公にとって人類が全て敵とは思えなかったから。誰が俺で、誰が敵なのか、解釈に悩む僕。この悩みの正体が、本作の今後を左右する重要なトリックなのかもしれません。
《以下、注意点》
まず、続編ありきの内容であること。それから、主要人物の人間関係の設定は癖が強く、登場人物の思考や背景の描写は好みが分かれそうな印象なので、試し読み推奨。公式サイトに試し読みリンクあり。
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