星に願いを 〜娘が生まれる前の話〜
ふたご座流星群を見に、稲村ヶ崎へ。
娘せりは、いつもなら寝ている時間に、はりきって家を出た。
今から7年前、私は夫と二人で、ふたご座流星群を見に行った。
あんなに沢山の流れ星を見たのは、人生で初めてだった。
そのとき流れ星にお願いしたことは、
「赤ちゃんが早く戻ってきてくれますように。」
この話は、初めて話すことになる。
私は、赤ちゃんを授かった喜びも束の間、お腹の中で天国へ逝ってしまうという辛く悲しい経験をした。毎日私が悲しんでいる姿を見て、夫はこんな言葉をかけてくれた。
「何か忘れ物を取りに行ったのかもしれないね。」
忘れ物、、、?
そうか。。。
お腹の赤ちゃんは、忘れ物を取りにいっただけなのか。。。
そう考えることで、私はボロボロになった心を少しずつ前に向けることができた。
「忘れ物を取ったら早く戻ってきてね。待ってるよ。」
その二ヶ月後、凄い流星群がやってくるとのことで、夫と二人星を見に行った。
河口湖畔から見上げた夜空には、ため息が出るほどの星。目を凝らさなくても、あちこちに流れ星を見ることができた。
なんて美しいのだろう。
私は心から感動した。
そして夜空に向かって「早くお腹に戻ってきて来れますように」と、お願いをした。
こうして授かったのが、娘のせり。
せりは漢字で「星吏」と書くが、「星」という字が入っているのは、流れ星に願いを叶えてもらったから。
あのとき見た、ふたご座流星群。
7年経った今、こうして家族三人で見に行くことができるなんて。昨夜見た夜空には、あの時ほどの流れ星は見られなかったが、それでも10個は見られたかなぁ。
今回は、お願いではなく、お礼を伝えてきた。
そんな私の隣で、せりは「妹ができますように!」と大声でお願いしていた。
せりよ。母ちゃんはもう48歳やし、厳しいわぁ。
流れ星を一つ見たら、すっかり飽きてしまったせり。本当は流れ星よりも、帰りに買うと約束していたピザまんの方が楽しみだったのは、ナイショの話である。
※これは、2021年12月に書いたエッセイ。公開までに少し時間を要した。