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平成5年4月文楽公演「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」国立文楽劇場 2023年4月20日

大阪まで遠征行ってきました!これまで遠征は新幹線でしたが、今回初めて飛行機で。マイレージが溜まっていたのですが、週末でも席が取れるので意外と便利だな、と。(昔よりもマイレージが使いやすくなっているような・・?)飛行機だとせわしないですが、安さには代えられない、ということで、これからも遠征用にマイレージを貯めていこう、と思っています。

ところで、4月公演は、私にとっては、特に見たかった演目。

「妹背山婦女庭訓」は、小説「渦」を読んでから、ぜひ見たいと思っていました。

背山チーム

今回は、「通し狂言」といって、演目を全編通して上演する形式。なので、一部(10時半~)、二部(15時~)が続きものになってるのですね。通算6時間強ということで、作品の世界にどっぷり浸かれます。(ちなみに7月の夏休み公演で、さらに続きがあります)飛行機で週末弾丸で行くので、途中で寝落ちするかな?と思いましたが、まったくその気配なく。なにせ、ストーリーがジェットコースターのように切り替わり、すっかりのめりこんでしまいました。

蘇我蝦夷、天智天皇が出てくる時代。いろいろな歴史漫画でも描かれていますし、(個人的には)漫画「天上の虹」や「日出処の天子」を熱心に読んでいたので、登場人物の関係性などは頭に入っています。一方で、「妹背山婦女庭訓」は、史実をベースに創作したスペクタクルなので、「え、この人こういう設定なのか」みたいな感じで楽しめます。天智天皇が盲目だったり、藤原不比等が色男だったり。

妹山チーム

そして装束は、奈良時代っぽくなく、通常の時代物(鎌倉時代っぽい?)し、何なら江戸時代っぽいものも混じっていたり。なんでもありな感じです。

SNS投稿キャンペーンで頂いたクリアファイル

最大の見どころは、「妹山背山の段」。吉野川を中心に設置された舞台装置の華やかなこと!そして、太夫と三味線が演奏する「床」が、上手下手の両方に設置され、掛け合いのように演奏が進んでいくのですね。芸達者な出演者の芸の競演という感じで、極めて華やかな演出。

作者は小説「渦」の主人公でもある近松半二を中心にした座付きの脚本家達ということですが、当時、人気に陰りが見えてきた人形浄瑠璃を盛り上げるために、趣向をてんこ盛りにしたのだなぁ、なんて感じ入ってしまいました。お話だけでなく、舞台装置も演出もスペクタクル感がすごかったです。

一部二部の見どころは、雛鳥と久我之助の悲恋。日本の「ロミオとジュリエット」なんて言われますが、なんとも残酷なお話でした。他の演目でも首を落として、その生首を布に包んで抱えるお武家さんが出てきたりしますが、人形だからこそ生首がそのまんま出てくるのですよね。初めて文楽の中で生首が何のためらいもなく出てきた時には度肝を抜かれたものです。さっきまで、人形遣いの力で生きているように見えた登場人物の首が、小道具的な扱いで出てくるのが衝撃的で。無常感と不条理の象徴みたいな感じ。

親子の情と権力の不条理を描いたストーリーもドラマチックで、まんまと泣かされてしまいました。物語の世界にどっぷり遣って涙を流し、カタルシスを感じて、そして日常に帰っていく。そんな、芝居の醍醐味を感じられる作品でした。

とにかく、歴史漫画が好きな方にはお勧めの演目です。配信も始まってますので是非に!


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