![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/131171081/rectangle_large_type_2_60949695ceffe4d9aaf5f84e58c67f89.png?width=1200)
令和6年初春文楽公演「近頃河原の達引(ちかごろかわらのたてひき)」
初春公演、遠征する予定でしたが諸事情によりキャンセルし、配信で堪能しました。
近頃河原の達引(ちかごろかわらのたてひき)
四条河原の段
堀川猿廻しの段
まずもって、題名の読み方がわからない。「ちかごろかわらのたてひき」。逢引?と見間違えますが、「達引」です(喧嘩という意味)。どのようなお話か、まったく見当もつかない題名です。(古典芸能ではよくあります・・・)1781年初演という説です。昔のお話で、有名な場面だけ残っている演目のようです。
どういう演目なのか皆目見当もつかないなかで観劇するのは若干ハードルが高いですが、見たら見たで「見てよかった!」と多幸感に包まれましたので、食わずぎらいで見てみると良い出会いがあります。
遊女に入れあげる男性が、陥れられて殺人を犯してしまい、遊女が男性と一緒に心中するかしないか・・・というお話。ただ、心中カップルのお話というよりかは、遊女の母親と兄とのやりとりが見せ場です。遊女の母親は、盲目であるものの三味線を教えているし、お兄さんは猿回しを生業としている、芸事に強い一家です。
ストーリーはあるっちゃあるのですが、話の成り行きを追っかけて結末までを見守る、というよりかは、見せ場で演者さんの芸を味わう、という感じ。特に「堀川猿廻しの段」は、
「猿廻し与次郎」(お兄さん)のコミカルな演技を楽しむ
盲目の母が少女に三味線をお稽古する時の太夫・三味線の演奏を楽しむ
猿回し与次郎が猿回しをするシーンで、二匹の小猿さんが披露する踊りを楽しむ
みたいな感じです。
主人公であるお兄さんは、コミカルな「又平」という「かしら(人形の頭部)」。眉毛がへの字になり、口があく仕掛けがあります。脇役感のある一般人という印象ですが、このかしらが主役になる演目がたまにあります。
「又平」のかしらの画像↓
https://www2.ntj.jac.go.jp/unesco/bunraku/jp/doll/images/ct5_b1-15a_thumb.jpg
この「又平」のかしらを勘十郎師が遣う(操る)の大好きです。芸が細かいのですよね。
握り飯の入っている容器についた米粒や箸にくっついている米粒を食らう
火鉢に湧いているお茶を茶碗についで口につけて「アチッ」となる
漬物を口に運んで「しょっぱい!」ってなって二口試して皿に戻す
など、眉毛をハの字にするのと口を開く2つの動作で表現するのがスゴイです。遊女と母親の二人の語りで話が進んでいくのに、勘十郎師の与次郎から目が離せません。脇役なのに観客の視線を集めて主役を喰ってしまう、漫画『ガラスの仮面』の北島マヤみたいな感じ(これいつも言ってますが・・・)
配信なので、お茶漬け食べるシーンを繰り返し見てしまいました。
終盤の小猿2匹の見せ場。黒衣さんが両手で2匹の猿を操ります。一般的な人形劇のような感じ。これがまた可愛い。動いている人形って可愛いなぁと、人形劇の原点を味わったような気がしました。
コミカルなお人形さんでホッコリし、三味線の華やかな音色を味わい、頭を使わず、感情も動かされず、シンプルに多幸感に包まれる・・・。お正月にピッタリの良き演目だなぁと思いました。
以下、個人的にツボにはまったポイントを列挙します
玉佳さんの色男、爽やかで好きです
久八の南都太夫さんが古風な語りで聞きほれました
劇中曲の地歌「鳥辺山」、錣太夫さん、藤蔵さん、清方さんの演奏に酔いしれました・・。迫力がスゴイ。ここだけでも視聴した甲斐があります
呂太夫師の声質、又平のかしらの性根(キャラクター)にピッタリで、勘十郎師のコミカルな演技とのシナジーが最高でした。この組み合わせの配役、素晴らしいです。
小猿二匹を演じたのはどなただったのか・・・。見せ場がある動物の配役も発表してほしいです・・・。
簑ニ郎さんの遊女は透明感があり色白で上品。今回のおしゅんは艶やかさもあり見惚れてしまいました。他の方と何が違うのか謎でしかないです