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シャツのボタンを一つ外す日

 朝の光が差し込む部屋で、鏡の中の自分を見つめていた。今日は、シンプルな白いシャツを着ることにした。いつもなら何気なく手に取るシャツだが、今日はシャツのボタンを一つ外してみようと思ってる。

 上から三つ目のボタンを外すと、鎖骨がほんのりと露わになった。鏡に映る自分は、いつもより少しだけセクシーで、どこかミステリアスな雰囲気さえ漂う。「いいじゃない。今日の私は、ちょっとだけ違う私を演じてみよう。」そう心の中で呟く。

 朝の満員電車。いつもより視線を感じるような気がする。「あのサラリーマン、私のこと見てる?」胸元をチラチラと見ているような気がして、思わずニヤリとしてしまう。

 会社に着くと、いつもは挨拶程度しか交わさない男性社員が、今日は話しかけてきた。「そのシャツ、よく似合いますね」彼はそう言いながら、私の目ではなく、胸元あたりを見ていた。私は視線には気づかないふりをして「ありがとう」とだけ返事をした。

 デスクに座って仕事を始めると、隣の席の同僚の女子社員が「今日の服、素敵ね」と声をかけてきた。彼女は私の顔を見てにっこりと笑った後、私の胸元に視線を落とし、「いつもと雰囲気が違っていいわね」といたずらっぽく笑った。

 昼休み。カフェテリアでランチを食べていると、背中に視線を感じた。振り返ると、同僚の男性社員たちがこちらを見ていた。私が視線に気づくと、彼らは慌てて目をそらした。どうやら、今日の私は彼らの注目の的らしい。

 午後の仕事中、コピー機のところで上司とすれ違った。彼は私の顔を見た後、視線を下に落とし、そしてまた私の顔を見た。何も言わなかったが、その視線は明らかにいつもと違っていた。

 一日を終えて、帰宅の途につく。電車の窓に映る自分の顔は、満足げに微笑んでいた。ボタンを一つ外しただけで、今日はいつもと違う一日になった。周りの反応を楽しむ、ちょっとしたゲームみたい。

 シャツのボタン一つで、こんなにも気分転換ができるなんて。明日はどんな私を演じようかしら。そんなことを思いながら、家路を急いだ。

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みさき なな
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