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裸になった時,彼に見られたくない部分。

 人には見せたくない自分の体の秘密がある。毎朝、鏡の前で密かにチェックする場所。それは、左太ももの内側にある小さな傷跡。高校時代の自転車事故の名残と、その周りにできた微妙な色素沈着。ジーンズが擦れて余計に目立つようになってしまった部分。

 それから、お腹。特に下腹部の柔らかすぎる感触。何度ダイエットしても、この部分だけはどうしても頑固に残る贅肉。横向きになった時の微妙な膨らみが、私の永遠のコンプレックスだ。

 二の腕の内側も気になる。腕を上げた時に、ぷるんと揺れる柔らかさ。これのせいで、夏でも薄手のカーディガンが手放せない。

 胸の形も、実は密かな悩み。左右で微妙にサイズが違うのだ。普段はブラで調整できるから気にならないけど、裸になった時はどうしても気になってしまう。

 あとは背中。中学生の頃にできたニキビの跡が、小さな星座のように散らばっている。エステに行っても、完全には消えない思い出。だから彼の前では、できるだけ後ろを見せないよう気を使う。寝る時も、背中を向けられない。

 「どうしてそんなに気にするの?」って彼に言われたことがある。でも、分かってほしい。私は雑誌やSNSで見る完璧なボディに、知らず知らずのうちに洗脳されている。少しでも理想に近づきたくて、必死になっているのだ。

 だから、彼の前で服を脱ぐ時は、いつも緊張でいっぱいとなる。「暗めの照明がいいな」とか、「この角度なら大丈夫かな」とか、必死に計算する。ベッドに入る時も、気になる部分が見えないよう、布団の中で慎重に体を動かす。

 彼が「キレイだよ」と言ってくれても、心の中では「この角度だから言ってくれてるんだ」とか考えてしまう。全部見られたら、きっと幻滅されるんじゃないかって。

 でも、ある時。当時付き合っていた彼が、私の背中にそっとキスしてくれた。「やめて、キズあるから……」と言ったら、彼は笑いながら「そんなの気にならないよ。それも含めて奈菜やから」って。その言葉に、胸が熱くなった。

 完璧じゃない私の体。でも、それは30年余り生きてきた証。傷跡も、柔らかい部分も、全部私の一部だ。少しずつだけど、そう受け入れられるようになってきた。

 ただ、次に付き合った彼に会う時も、やっぱり薄暗い照明を希望してしまうんだけどね。それが、アラサー女子のささやかな意地なのかもしれない。

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みさき なな
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