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全生命の集い ジョアンナ・メイシー 

ジョアンナ・メイシーの思想やワークについて、どう説明すればいいか、いつもとても苦心する。「ジョアンナは仏教哲学とシステム理論とを使って、環境問題に取り組んでいる米国のアクティビストなの」と言ったところで、「?」となる。
彼女はたくさんのワークを編み出しているのだが、環境問題に取り組むことと、ワークショップがどうつながるのか? についても、もうちょっと伝えられる言葉を見つける必要がある、とも思っている。

11月、岩手県一関市千厩。藤源寺を中心とした周辺で「千年藝術の森 いわて里山藝術祭」があった。同時並行的にいろんなイベントが進む中で、ジョアンナ・メイシーの「つながりを取り戻すワーク」の一つ、「全生命の集い」をワンディで良規さんと丸ちゃんと一緒にやらせてもらった。そのなかで、ほかのグループやイベント関係者の方たちから、「一体、それって何なん?」という問いをいただき、よし、答えてみよう!と思って書き始めた。

ジョアンナ・メイシー

ジョアンナは1929年、米国で生まれた。第2次世界大戦や公民権運動の時代を生きてきている。結婚後、夫の赴任に伴ってインド・アフリカ・スリランカなどで暮らし、チベット仏教やさまざまな文化に出会い、生きとし生けるものがお互いに影響を及ぼし合っている、つながっているという世界観を得る。帰国後、米国の核開発に恐怖を感じた彼女は、仲間たちと反対運動に携わる。そうした中、活動に疲弊したり、無力感を抱いたりする体験を経て、お互いをエンパワーする、グループで行うさまざまなワークが創出された。それが当初「絶望のワーク」と呼ばれ、現在「つながりを取り戻すワーク」と呼ばれているワークだ。

ジョアンナ・メイシーのワーク

「つながりを取り戻すワーク」はどのワークも体験的なもので、実感レベルにアプローチする。
「感謝しましょう」というのと、内面から「すっごくありがたいなぁ」とわきあがってくることとは違う。「自然を大事に」とただ習うよりも、実感レベルで「私って地球の一部だなぁ」と感じてしまったという体験があれば、知的な理解だけよりも、より地球環境をケアすることにつながる。

ジョアンナたちのワークは、地球誕生から現在まで、ありとあらゆるものが、偶然や必然をかいくぐって、影響を与え合いながら生命を紡いできたのだ、ということを実感レベルで感じ取り、腑に落ちる体験をするような内容だ。さらに、生きとし生けるものがお互いに相互依存的に存在している(せざるを得い)ことに気づくようなプログラムになっている。

で、それはつまり?

世界がこんなにも美しいということに気づくためには、まずは私たちのなかにある絶望や傷つきや無力感に眼を向け、これらを寿ぐ必要がある。ジョアンナらのワークにはこの部分が組み込まれている(ここに私はぞっこん惚れてる)。そのパワフルさはグリーフ・サポートのグループで体験するグリーフのエネルギーとも似ている。

「つながりを取り戻すワーク」ってのは、さまざまなワークをグループで体験することで、おのずと世界の美しさや大切さ、相互依存的な存在のあり方を実感レベルで感じ取ることになるようなワークショップ、と説明したら、伝わるかな?

つまりは「やってみて」ということ

関連図書

ジョアンナ・メイシー、モリー・ヤング著 齊藤由香訳「カミング・バック・トゥ・ライフ 生命への回帰 つながりを取り戻すワークの手引き」日本能率協会マネジメントセンター 2021 
ファビエンヌ・ブルジェール著 原山哲、山下りえ子訳 「ケアの倫理」白水社 2014
村澤和多里・村澤真保呂著「異界の歩き方」医学書院 2024



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