#63 ワハーンロバ旅 シルギン温泉ーズグヴァンド村
朝、日が昇ると同時に目が覚める。外に繋いであるミシュカが大丈夫か心配で、早く目が覚めてしまった。外に出て、ミシュカを繋いだ場所に向かうと、遅い!とでも言わんばかりにミシュカがこっちを向いて頭を振っていた。無事居てくれた〜良かった〜。ミシュカに近寄ると、蚊が多いんですけど!痒いんですけど!と言わんばかりに顔を擦り寄せてくる。ごめんごめん。眉間を掻いてあげながら、青草が生えている場所に連れて行く。この湯治宿は高台にあるので、景色がいい。朝日に照らされるパンジ川と岩山。絶景なり。
下の道路を村人の女性ふたりが歩いて行くのが見える。温泉に行くのだろうなと思って見ていると、3つある湯殿のうち、昨日行かなかった温泉の湯殿に入って行った。今日は歩く距離が10kmなので、気持ち的にも時間的にも余裕がある。私も朝風呂浴びちゃおうかな!ミシュカを青草が食べられる場所に繋ぐと、私も温泉に向かった。ドアをノックしてから開けると、先ほどの村人の女性ふたり、お母さんと娘さん?がちょっと心配そうな顔を湯船の中から覗かせた。男性が入ってくることを心配したのだと思う。女性入浴中、男性入浴中みたいな札掛けられるようにすれば良いのにね。入ってきたのが女性であるのを見て、ホッとした笑顔を浮かべたふたりに迎えられ、私も入浴。この温泉も鉄湯だが、特にぬるい。私の体感では、男性専用の深湯が最も温かく、ここが最もぬるい。源泉付近に3人集まって入浴。それなりに長いこと入っていれば温かまる。
温泉を出ていざ出発!朝湯に入りにきていた地元民の皆様に見送られミシュカと歩き始める。ここから先も絶景の連続。朝通りかかるとアフガニスタン側の山が逆光なのが残念だけど、涼しいうちに歩きたいから仕方がない。今日は時間に余裕があるから、のんびりのんびり休憩を挟みながら歩く。
しばらく行くと、木が倒れていたり、土砂が道脇に集められているようなエリアに差し掛かった。なんなんだろう…と思って思い出した。数日前土砂崩れがあったというズグヴァンド村に差し掛かったんだ!道脇には、明らかにここを土砂が流れて行ったんだなとわかるような土砂崩れのあと。災害現場なので、神妙な顔で静かに通り抜けようとミシュカと歩く。
静かに歩いていると、左側に谷が現れた。ここが土砂崩れが起こった場所のようだ。これは酷い…多くの男性が作業しているのが見える。イシュコシムで私をバスで拾ってくれた作業員達は働いているだろうか?何人かの作業員が手を振ってくれたけど、遠くてあの時の人達かは識別できない。道の途中で村人の男性達が現場を見ながら立ち話をしている。会釈しながら前を通ろうとすると、ひとりの男性が、ロバ?なんで?写真撮らせて〜と写真を依頼してきた。喜んで〜と写真に応じると笑顔で見送ってくれた。大変な時にすいません〜。
岩山の谷を崩れ落ちた土砂は、ズグヴァンドのメインストリートを駆け降りたようで、道は全て土砂で埋まり、ブルドーザーで土砂を退けた形跡が生々しかった。ミシュカとその道を歩いていると、おば様達の一団がお茶してったら?と声をかけてくださった。いや、でも今大変な時ですよね?と遠慮していると、こっちこっち!と歩きながら促され、流されるままお邪魔させて頂くことに。
家に入ると、娘さんが驚いた顔で迎え入れてくれた。おば様達もさっきより大人数で入ってくると、ロシア語できないの?タジク語は?そっかできないのか…ごめんなさいね、私達は英語ができないのよ〜と言いながらお茶を用意してくれた。
しばらくすると娘さんがもうひとりの女の子を連れて戻ってきた。ハロー!と女の子。話してみると、彼女すごく流暢な英語を話す。ホログの大学で英語を専攻しているとのこと。英語しかできない私のために、畑仕事を中断して会いにきてくれたらしい。女の子と入れ替わるようにおば様達はじゃあね〜!と出ていってしまう。災害現場の作業員への炊き出しがあるからお相手できなくてごめんなさい。娘達とゆっくりして行ってね〜!だってと女の子が通訳してくれる。英語が通じるの本当にありがたい。娘さんが卵も食べる?と聞いてくる。いやいや悪いですよ。と伝えるも、ぜひ食べて欲しいと言われ、卵までご馳走になる。
お茶をいただいて、ありがとうございました。そろそろお暇します…と立ち上がりかけると、娘さんがうちに泊まって行かない?と聞いてきた。いやいやこんな災害時にお世話になれません、目的地のゾング村まではすぐですし〜と断るものの、泊まって行ってくれたらすごい嬉しい。ぜひ泊まって行ってほしい!と言われ、英語ができる女の子も泊まって行きなよ〜!私の英語の練習にもなるし大歓迎だよ!と追い討ちをかけられ、日程的にも余裕があるので、お世話になることにした。しかも後から家に来た、英語ができる女の子のお父さん、スッって私の前に携帯出してきたと思ったら、ミシュカと私が写った写真が表示されていて、あれ?!と思ってよくよく顔を見たら、土砂崩れ現場で写真撮らせて〜って言ってきたおじ様でびっくり。ご縁ですね〜。
ミシュカを大好きなアプリコットの木の下に繋がせてもらう。ミシュカはアプリコットのおこぼれを貰ったり、短く刈られた青草の下でゴロゴロしたりとご満悦。唯一の問題はここズグヴァンド村も蚊が多いこと。アプリコットの木に額を擦り付けて、虫に刺された場所を噛もうとしたり、お腹や尻尾を歯でガリガリしたり…よく噛むお腹や尻尾は一部毛が薄くなってきてしまって可哀想。ごめんなミシュカ…ナマドグッド・ボロ村には蚊いなかったもんな…
ミシュカがモグモグしている間、英語ができる女の子が村を案内してくれた。この村は本当にキレイな村だったのに、土砂崩れでこんなになっちゃって…と女の子。以前にも土砂崩れはあったのか聞くと、初めてのことだという。今年は、特に雪が多かった冬と、異常に暑い夏の異常気象コンビネーションで、雪解け水が多く、ワハーン渓谷では土砂崩れが多く発生しているのだそうだ。世界中で起こっている異常気象の波はワハーン渓谷にも押し寄せてきている。
夜になり、ミシュカを子牛とドミの部屋に入れようと女の子が提案してくれたので、ミシュカ外でも大丈夫だよ!草食べてられるしと伝えたら、ダメよ!狼が来て食べられちゃうよ!と女の子。冗談だよね?と聞くと本気だという。タジキスタンにはいまだ狼や熊がいるので、夜間家畜を外に出しておくことはしないという。知らなかった…シルギン温泉でミシュカが無事でいてくれてよかった。もちろんミシュカの叫び声が夜中にするようなことがあれば駆けつけて狼だろうと熊だろうと戦うけれども!
夕飯何にしよう〜と家族内で相談しているっぽい雰囲気があって、お父さんが芋掘りに行くぞ!着いてこい!と私に言った。土砂が流れ着いた畑から芋を掘る。小麦畑も一部土砂で小麦が倒れてしまっている。ズグヴァンド村には小麦から小麦粉を作る製粉場が5軒ほどあって、近隣の村からも製粉のために小麦が運び込まれてきていたらしいけど、今回の土砂崩れで5軒とも壊滅してしまった。今年間もなく収穫を迎える小麦をどうしたら良いか頭を悩ませているとの事。私にクラウドファンディング等できる能力があったなら製粉場再興の資金等集めることができるかもしれないのに…
家に帰って夕飯となった。掘りたてのジャガイモと鶏肉の炒め物。間違いなく鶏肉は貴重な食べ物なので、私のために特別な料理を作ってくれたかと思うとありがたいと同時に申し訳ない気持ちになる。ナナのためにおばさん、ケーキも焼いたのよ!と女の子。お昼過ぎに甘いいい匂いがしていたのはこれだったのか。炊き出しの合間を縫って本当にありがとうございます。
それにしても、ズグヴァンド村はコミュニティの繋がりが強いらしい。ピンポンもノックもなくゾロゾロと近所の人たちが入れ替わり立ち替わり家に入ってくる。ロバ連れた日本人がいるって村で噂になっているから、みんなナナに会いに来たんだよ〜と女の子。お礼を兼ねて、折り紙を折る。子供だけでなく大人も夢中になって俺にも折り方を教えてくれ!と言うから微笑ましい。
22時ごろになり、日本とは時差があるから大変でしょうとお気遣い頂き(もう当然時差ぼけとかないけれど)楽しい夕食折り紙会はお開きとなりました。布団を引いていただき就寝。何から何までお世話になります。
16/Aug/2024
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