#69 ワハーン渓谷、パミールハイウェイ旅 ムルガブからキルギス サリ・モゴルへ
目覚ましで目を覚ますと、向かいのベッドにいた欧米人におはよーと言われびっくり。彼が夜同じ部屋に入ってきたことも気が付かないぐらい爆睡していたみたい。
朝ごはんを頂き、出発まで昨日は夕方の到着だったので見れなかったムルガブの町をちょっと散策。まるでこの世の終わりのような景観。すごいな〜こんなところに人が住んでいるのか…空が限りなく近い。山が高いって訳でもないのに…
8時45分ごろドライバーが到着。乗客は別のホステル滞在のポーランド人女性ふたりと、私のホステルのイタリア人の男性ふたりと、キルギスの大学に通うキルギス人(タジクパスポート)と私の計5人+運転手。
国境までの道のりは絶景の連続…お願いしたら、普段観光客が停まるような場所で車を停めて写真を撮らせてくれた。
この道で最も高い峠である場所は4,600mを超えるけど、ミシュカとワハーンを歩いたお陰でへっちゃら!
そして高地の塩湖であるカラクル湖。まるで空が落ちて来るようだった。湖から生まれた雲が、いまにも手が届きそうな場所にある。幾重もの濃淡の異なるブルーが織りなす絶景。天国とはこういう場所なのかも知れないと思わさせられる世界…カラコル湖の麓の村カラコルにも宿があるので、時間があればここに泊まってみたかった。
そして、タジキスタン側の国境に到着。パスポートとGBAOパーミットを提示すると、出国審査官のお兄さんが全て手書きでノートに情報を書き写していく。めっちゃ時間がかかるし、ヒューマンエラー多そう…GBAOパーミットは写メでもいいらしく、私以外は皆携帯を見せていた。私は原本を提示したところ、情報を書き写した後にパーミットは机の引き出しに没収されてしまった。私はいらなかったからいいけど、記念に持ち帰りたい人は、写メを撮って写メを見せるといいかもしれない。
時間はかかったものの、特段問題はなくすんなり通過。車に戻ってしばらく進むと、緩衝地帯の峠のてっぺんに辿り着いた。車が停まってエンジンが切られる。緩衝地帯で待ち合わせとは聞いていたけど、本当に何もない荒野で待ち合わせるんだな…ここでキルギス側から来る車を待つ訳だけど、どれくらい待たなきゃいけないんだろ?と思った矢先、奇跡のように反対側の坂を登り切ったキルギス側から来た車が現れた。全然待たされなかった!すごい!奇跡!多分13:30を目安に双方から来たのだろうけど、こんなに時間通りに行くなんて…
雪がチラつく中荷物を積み替える。キルギス側から来た車にはローカルと見られる赤ちゃんと子供を連れた女性が1人だけ。インドネシアちゃん曰く、こういう完全ローカルしか乗っていないシェアタクをタイミングよく捕まえられると70ドルで済むらしい。(キルギス、オシュからタジキスタン、ムルガブに来た人では、インドネシアちゃんを含めて2人70ドルで行ってくれる車が来るまで何日かオシュで待ったという旅人に出会った。キルギス側は逃げ場があるので値段を下げる交渉がしやすいのかもしれない。ムルガブは地の果てすぎて、じゃあこの国境渡らなくていいや〜と気軽に予定を変更できる位置にない。)
両方の運転手が揃ったところで料金の清算。米ドルが欲しいらしく、大体の旅人が現地通貨で払ったらなんだよ〜ソムとソモニかよ〜!とキルギス側の運転手からブーイングが起きた。そして私、なんと奇跡的にタジキスタンソモニの残金がピッタリ送迎代金となった。それもこれも、お金はいらねぇよ!とお金を受け取ってくれなかったワハーンのトラックやシェアタクの運転手さん達、泊めてくださった村人達のお陰です。ありがとうございました。
乗り換えた車でキルギスに向かって峠の坂を下る。ここが緩衝地帯いちの悪路…ちなみにキルギス側からは兵士が車に同乗する。途中に家があって、ペンキでHome Stayって書いてあるのを見て車内がざわつく。え?ここに泊まるの?実は緩衝地帯には2件の民家があり、もし最悪、キルギス側のパーミットに問題があったりした場合は、最悪この2件にお世話になることができるらしい。絶対嫌だけど…っていうかネットなくない?パーミット取れないじゃんね。
キルギス側の国境に到着。タジキスタンと比べると建物も新しく綺麗。さぁドキドキの瞬間…ホログに着いた時にパーミットをお願いしたVisit Alayには連絡済みで、パーミット発行されているよ!とは言われているものの、それを証明するものは何もないのが怖いところ。発行日は8月13日だから!そう係員に伝えると、パーミット見つけるの楽になるから!言われたので、係員に発行日は8月13日です。と伝える。係員は13日ね〜と言いながら、分厚いファイルの中の書類をパラパラめくって、あったあった!と言った。アルマトゥイで出会ったサイクリストはノートに名前が書いてあるだけとか言っていたけど、チラッと見たファイルの中身は一応印刷された書類だった。あ〜パーミット用意されていてよかった!
これもし万が一、ひとりでもパーミットがなかったり、不備があったりすると、他の人も道連れで国境にスタックしてしまうと思うのだけど、無事全員問題なしで通過できた。ポーランド人女性達なんて、ホログで俺パーミット発行できるよ!と声をかけてきた謎の男性にお願いしたとか言っていて、大丈夫なの?!と思ったが不備はなかったみたい。
キルギス側の国境を超えた途端、びっくりするくらい大地が緑になった。パミール山脈が堰き止めた雲が、キルギス側に雨を降らすらしい。山を降りて、平原になるとユルトが立ち、馬たちが放牧されているキルギスらしい景色が一面に広がった。あぁ、帰ってきたという感じがする。やっぱり私は馬が好きだから、キルギスは特別だ。長いこといて、勝手がわかっている事もあって、ホーム感がある。無事国境を超えて戻ってこられた…緑豊かな景色は目にも優しく、心が安らぐ…
あっという間にキルギス側のジャンクションとなる町、サリ・タシュに到着した。イタリア人の青年ふたりと町の中心部のATMがある場所で降ろしてもらう。私はキルギスソムと米ドルがあるのでお金を引き出すあ必要がないが、イタリア君たちは現金が必要との事。が、試してみるものの出金できなかったらしい。
気を取り直して、今日の最終目的地であるサリ・モゴルを目指す。朝ならば、町のガソリンスタンドがあるあたりからシェアタクが出ているらしいが、今はもう夕方。無いであろうと想定して、サリ・モゴル方面に向けて歩き出す。サリ・タシュからサリ・モゴルまでは約30km。誰か拾って〜!何台か車やトラックを見送り、ようやく1台停まってくれた。走り寄ってみると、トラックの荷台に見慣れた耳が飛び出している。ロバだ!ロバ!ロバ!ロバ見たい!どんなロバかな?色黒さんだな?!背伸びをして覗き込むが見えない。ロバと一緒に荷台になら乗っていいぜ〜ただサリ・モゴルまでは行かなくて、残り10kmのところまでしか行かないけどな〜との言葉に、喜んで〜!!と荷台に飛び乗る私達。逆に飛び乗られたロバは急に乗ってきた異国人に戦々恐々。ミシュカみたいにすごく人慣れしたロバではないみたい。ミシュカ…元気でやってるかなぁ…とミシュカに思いを馳せたら、ロバの向こう、遠くに虹がでた!ミシュカは元気に暮らしているよ〜という合図のようで嬉しくなった。
風を受けながらのトラックヒッチハイクは最高!雪を冠したパミールの山々を一望できる道を爆走する。雪山キレイ〜!タジキスタンのワハーン回廊からではアフガニスタンの雪山は見えても、タジキスタン側のパミール山脈の雪山は見えなかった。キルギス側では雪が多いみたいで、パミール山脈は真っ白だった。
道沿いのユルトの前でトラックが停まった。ここまでだよ〜と言われ、ありがとう〜!とお礼を言ってまた道路沿いを歩き始める。サリ・タシュ側から来るトラックにまた手を挙げるけど、このトラック達、ちょっと前にサリ・タシュで乗せられないよ〜と断られたトラック達だな。ロバのトラックの方が小さいからいつの間にか抜かしてしまっていたんだな。しばらく歩いていると、小さめのトラックが通りかかった。止まってー!と手を挙げると、運転していたお兄さんは困り顔で、乗せてあげられるスペースがないというサインの。両手を天に向けて肩をすくめるような仕草をした。大丈夫!乗れる!私達荷台でいいんで!とジェスチャーでお願いすると止まってくれた!助手席に乗っていた青年が詰めてくれて、私は助手席に、イタリア君たちは荷台に乗ってサリ・モゴルまで乗せてもらうことに。車の中では当たり前のようにクムス(馬乳酒)をご馳走になり、キルギス最高!日本最高!と互いを褒め合って〜とやっているうちにあっという間にサリ・モゴルに到着した。
3人でCBTのゲストハウスを目指す。到着すると、なんと今建ちました!という見かけの新しい建物が立っており、そのダブルルームにシングルと同じ価格で泊めてくれるという。(後から知ったのだけど、どの部屋に泊まるかは関係なく、ひとりあたり1,500ソム(2,533円)という謎の値段設定だった)新しい方の建物の部屋には、なんと部屋の中にシャワーとトイレが付いているという贅沢設計…家からかなり離れた場所にある屋外ぼっとんトイレとシャワーなんてもんはほぼ存在していなかったワハーン渓谷生活からしてみたら天国みたいな設備…
しばらくゴロゴロした後、O!のSIMカードにお金をチャージしに行くことに。日本にいた時の乗馬クラブのインストラクターの先生によく似た若いご主人にどこでチャージ出来るか聞くと、すぐ隣のマーケット内のお店にターミナルがあると言う。マーケットに行ってみると、マーケットとは名ばかりの何も陳列されていない棚だけが並ぶ広場が現れた。日曜日のみ開催とかなのだろうか?ターミナルがあったことにホッとして、うっかり500ソムでいいところを1,000ソム札を突っ込んでしまった私。エムゲク・タラァ村で、子供にお釣りが出てこないから、ちょっきりの金額を入れるよう教わったのに、もう忘れてる。うぁあ!!と思い出して悲鳴を上げるも時すでに遅し…1,000ソムチャージしました!と画面が切り替わる。ショック…と思うものの、冷静になって考えてみれば、たかが845円。まぁ取り戻せなくてもいいか!と気を取り直してゲストハウスに戻る。
夕飯の時間になって宿に宿泊しているみんなが集まってくる。夕飯がついている宿はこれがいい。情報交換の貴重な機会。大体の人が集まり始めた頃、イタリア君ふたりが入ってきた。やっほー!と声をかけるも、Hi…と気のない返事。別人のように暗く沈んでいる。どうしたの?と問いかけると、ATMがうまく機能せず、現金が引き出せなかったと言う。イタリアで彼らが使っている銀行のATMピンコードは6桁。キルギスでは4桁なのでお金が引き出せないらしい。最新鋭の銀行カードだとこういうことになるんだな…それは大変。ビシュケクに戻る程度の現金はあるけど、楽しみにしていたレーニン峰に行くほどの外貨の持ち合わせはないらしい。今にも泣きそうなほど落ち込むふたり。むむ、どうにさしてあげられないものか…そう言えば私まだ300ドル持ってるんだよな…キルギスソムもそれなりに持っているし。明日合流予定の南アフリカ君にお金おろして来て貰えばいいし。国際送金でどうにかできそうな気も?
イタリアって海外送金システムあるの?と聞くと、ある。簡単に銀行口座から銀行口座にお金を送れる。とのこと。じゃあ私の友達のロンドン在住の南アフリカ君に送金してもらえれば、私が今持っているドル渡せるよ?と提案すると、いやでもそうしたらナナの現金の持ち合わせがなくなってしまってナナが困るでしょう?と遠慮するイタリア君達。いや、明日南アフリカ君に私の分もオシュのATMでお金おろして来て貰えばいいから大丈夫だよ?と言うと、みるみるうちに輝きを取り戻すイタリア君達の目。南アフリカ君に相談し、彼の銀行口座情報を教えてもらい、あっという間に送金完了。現金で200ドルを渡すとイタリア君達大喜び!良かったねぇ。この米ドルを使わずにタジキスタンを出れたもの、ワハーン渓谷の人々の善意のお陰だから、その恩を次に渡せて良かった。頑張って目的の5,000mのピークまで行くんだよ!
部屋に戻るとダブルベッドが私を待っていた。とうっ!とダイブする。あ〜最高!おやすみなさい!
22/Aug/2024
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