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#10 エンドレス羊料理・イードアド アルハ in キルギス

久しぶりに暖かいベッドで寝た後起床。まだまだ疲れが取れない&昨夜ホストファミリーの家のシャワーの水が出ない問題が発生し、3日ぶりのシャワーを逃したからかすっきりしない。シャワーは直ったとのことだったのでシャワーを浴びる。水圧は満足できるものじゃないけど暖かいお湯が浴びられるだけで嬉しい。

朝ごはんのテーブルを皆で囲んだのち、おばあちゃんがなんだか、お茶を飲み切りなさいというジェスチャーの後に、首を切るジェスチャーをしてくる。お茶を残すことはキルギスで失礼なことにあたるのだろうか?お茶飲み切らないと殺しちゃうよ?って?!困惑した顔でおばあちゃんを見ると、いいのよいいのよ、理解できないよね!さぁ外に行きましょうと促される。何でご飯食べ終わった後にみんなで外に出るんだろ?キルギスにはそう言う慣習があるのかな?と不思議に思っていると、オルモンのお嫁ちゃん、ディアナが翻訳アプリを使用して、今日はイスラム教の祝日で今から羊を犠牲に捧げるの。と教えてくれた。あー!イードか!イスラム教の国に暮らしていたことがあるので知ってはいたが、今年は6月なのね。

外に出ると庭に羊が用意されている。いつの間に!私は数々のイスラム教の国々で羊が犠牲に差し出される(屠殺される)のを見てきたからいいけど、絶対無理!!って人きっといっぱいいるよね。オルモンが大きなナイフを擦り合わせて研ぎながら羊へと向かう。オルモンのお兄さんが羊を押さえる中、羊の首が切られる。羊って従順の象徴とも言われるだけあって、一切鳴き叫ぶこともなく、無言で何度か体を震わせてこときれた。ポリネシアの国で豚が屠殺される時はこれでもかって鳴き叫ぶから、見てられない、聞いてられないって感じだったけど、本当に羊はおとなしい。

※写真閲覧注意

大人がバイアス加えなければ
子供も死に向き合うのは簡単なのかもね
頭を切り落とし皮を剥ぐ

肉はバラされ、内臓が取り出される。当たり前ではあるが、今のいままで生きて草を食んでいた羊なので、内臓の中にはうんちとうんちになる前のなんて呼んでいいかわからないものが詰まっているのでそれをきれいに洗う。私も微力ながらお手伝い。そしてこれ初めて見たんだけど、小腸でリリアン編みをつくり、このなかに丸めた大腸を詰めていた。見かけが良くなるから食べやすくなるかも。

うんちを搾り出し塩水で洗う
小腸のリリアン編み。腸長すぎ。

キルギスでは屋外にキッチンがある。(この家では室内にもある。)そこに巨大な竈門があって、大量の水と共に羊の肉が放り込まれる。肉を入れ、内臓をいれ、最後に毛を火で炙って取り除いた足と頭が放り込まれる。どの部位も無駄にしない。

竈門にくべるのは干し草と家畜(多分主に牛)のフンを乾燥させたもの。あっという間に火がつく優秀な着火剤。味付けはシンプルに塩のみ。ひたすら煮て、アクを取り完成。

テーブルデコレーション

居間ではテーブルに様々な食べ物が飾りつけ始められていた。あれはここ、これはそこ!とかやっているうちになんだかゾロゾロと人が尋ねてきた。ディアナ曰く近所の人達らしい。お茶を出すというので私も下手くそながらお茶を入れる。するとナナ!部屋に入って!と呼ばれた。中に入ってキルギス語でこんにちは、サラーム・アレイコム!(アラビア語だがキルギスで頻繁に使われる)と言ってみる。オルモンのお母さんがCBTのボランティアで来ているのよと説明してくれる。

部屋の1番奥に鎮座していたおじ様が、ここに来いと手招きしてくる。キルギスにも上座というものがあって、日本と同じで入口から1番遠い席が上座らしい。席に着くとみんなでお茶を飲みながら、テーブルの上に並べられたものを食べる。しばらくするとテーブルがどけられて、床にテーブルクロスが敷かれ、そこに羊が大きな皿に乗せられてどーん!とやってくる。水差しと皿を持った人が入ってきて、順に手を洗うと皿から羊肉の塊を皿に取る。私の皿にもいやがおうなしに巨大な肉塊が置かれる。いや、でかすぎる。こんなに絶対食べられない。次々と内臓が乗せられた皿、お尻の脂肪が乗せられた皿と回ってきて、取らずに回そうとすると目ざとくみんなが見ていて、取れ取れ!と勝手に皿の上に肉塊が増えていく。

手を洗う
肉塊となった羊
切り分けられ、分配される


レバーの上に脂肪を載っけたもの

最後に回ってくるのが羊の顔の皮と目ん玉。わかってはいたことだけど、目ん玉はもれなくゲストに回ってくる。まぁアフリカで何の肉かわからない肉を食べ、メキシコで生きたカメムシを食べて来た私としては、羊の目玉ぐらいでは怯まないが、好きではないので困る。私はコリコリした食感のものとゼラチン質の食感のものが好みではなく、羊の目玉は超ゼラチン質なので好きじゃないのだ…が、断る術がないので食べます食べます。

最後のメインディッシュとして出て来たのが、キルギスの国民食ベシュバルマク。作り方はシンプル。羊肉を刻む、麺を加える、羊を煮た時にできたスープをかけよく混ぜる。最後に頭蓋骨からほじくり出した脳みそをまぶして出来上がり!めちゃくちゃシンプルな割には、キルギス料理は素材そのものの味がいいのでとても美味しい。羊の脳みそも白子食べられるって人はきっと問題なく食べられる。クリーミーで美味しい。

ベシュバルマク

最後にみんなでお祈りをして会はお開きとなったのだが、驚きだったのはここから。よしナナ、行くよ!と言われて近所の人の家に移動したら、なんと全く同じプロセスが繰り返されたのだ。

1.茶をしばく
2.手を洗う
3.肉の塊を各自の皿に取り分ける
4.内臓や顔の皮、目玉を取り分ける
5.皆で肉を刻む
6.その肉と麺と脳みそでベシュバルマクを作る
7.食べまくる
8.お祈りを捧げる

これで終わりかと思ったら、なんと次があるという。え?あと何軒まわるの?と聞いたら、全部で7軒あるという。いやいやいや、もう食べられないよ!!しかも3軒まわってわかったのだが、料理のバリエーションはほぼ同じ。トマトときゅうりのサラダが塩だけの家とドレッシングの家があるぐらい。私も混ぜてもらえるのは嬉しいが、乗馬ツアーから帰って来た翌日なのでめっちゃ疲れていて寝落ちしちゃいそう…

最終的に本当に7軒まわり、同じプロセスを繰り返し、ようやくお開きとなったのだが、かかった時間は8時間。12時に1軒目で終わったら20時過ぎてた…なぜ近所7家庭で1頭づつ羊を捌かなければならないのか…持ち回り制にすればいいのに…と思ったが、食べきれなかった料理は持ち帰って家族と食べる仕組みになっているので、互いの家が互いの家をもてなし合う行事として定着しているんだろうな。

ほんとご馳走でした!もう数日は肉みたくないな!

16/June/24

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