#15 キルギスで羊飼いになる2
朝、窓から差し込む光と、フガァ!といういびきで目が覚める。体を起こすと叔母さんがいない。もう働きに出たのかな?リビングには叔父さんと長男君がまだ寝ていた。外に出ると真っ青な空に羊のような雲が浮かんでいる。羊達もまだ半分居眠り中。
叔母さんはすでに牛のお乳を搾っていた。
ここでも女はよく働く。
日が高くなってきて、馬達が草を喰み始める。
しばらくするとどこからともなく羊の群れが移動してくる。山の家の娘ちゃんと次男君が一緒に来てくれて、羊達のそばに寄ってみる。すごい数だ。
その後も娘ちゃん達がロバに乗りたい?!とロバを馬装?ロバ装?してくれて乗せてくれたり(私の体重を支えるのは虐待じゃ?と言ったんだけど、全然大丈夫だよ!何言ってんの?!と言われた。)馬に乗せてくれたりした。
山でもやっぱりお茶の時間は3〜4回ある。お母さんは牛の乳を搾り、馬の乳を搾り、薪で火を起こしお茶を入れ、竈門でご飯を作り、土の上に作った簡易オーブンでパンを焼く。牛乳とバターとなる乳脂肪を分ける機械も手動。ひたすらレバーを回し続ける。私も手伝ったがすぐ嫌になって、なんとかして自動でこのレバーを回し続ける術はないか、サボる方法ばかり模索してしまう。無理だとわかった後は、二の腕のエクササイズだと自分に言い聞かせてひたすらにレバーを回す。
羊の群れは現れたり、移動していなくなったりしていたのだけど、午後になると叔父さんが馬に乗って仲間と共に家の前の平原に羊を集め始めた。どうやら出荷する羊を選別する作業をしているようだ。
最終的に7頭ほど選出し、トラックに乗せ込んだ。リアルドナドナ。
一緒に来た妹ちゃんとその友達、早くに村を離れビシュケクに勉強しに行ったこともあってか、日がな一日中インスタかTikTokを眺めている。山に来ている間も、その多くの時間を電源があるトラックの中で携帯を眺めて過ごしているような現代っ子。が、驚いたことに、牛の乳搾りとか超上手。私が搾るとチョーっと細ーくしか乳が出ないのに、妹ちゃんとその友達が搾るとボジョーボジョー!っとバケツの中の牛乳が泡立つほど勢いよく乳が搾られる。たまにちょんちょんと指先を搾り終えた牛乳につけて滑りをよくしてさらに搾る。慣れている…自分のちゅー顔ばかりインスタに上げているような現代っ子なのに…
しかも料理もうまい。さっさとナイフでジャガイモやにんじんの皮を剥き、シュルシュルと餃子の皮を伸ばし、パパッとわずか3秒ほどで1つの餃子を包む。キルギスの花嫁修行半端ない。これならいつどこに嫁に出しても恥ずかしくないぜ。
現代っ子達の意外な才能に驚いているうちに日が暮れ始める。遠くの山が真っ赤に燃えて…なんて綺麗なんだろう。叔母さんは相変わらず馬の乳を搾って回っているけど、叔父さん達は夕陽を見ながら仕事終わりの一服。こうやって羊飼いの1日は終わるんだな。
貴重な体験をありがとうございました。
20/June/2024
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