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#58 ワハーンロバ旅 ボイバール-ビビファトマ温泉

朝涼しいうちに出発しなきゃだけど、おじ様達の家族を起こしちゃって迷惑かけてしまわないかしら?などという心配は杞憂に終わり、私の6時半の目覚ましが鳴るより早い時間に奥様が長女ちゃんを起こしにやって来た。農家の朝は日の出と共に始まる。

私も長女ちゃんと一緒に起き出すと、おじ様がミシュカ、別の放牧地に繋いでおいたからな〜と声をかけてくれる。

朝も早よから放牧地に繋いでもらって草を喰むミシュカ。
おじ様の末娘を乗せて家に向かうミシュカ。

私が荷物を詰め終わると、おじ様は放牧地にミシュカを連れに行き、鞍付け、荷積みを行ってくれた。至れり尽くせりでありがとうございます!メインストリートに家族総出で見送りに来てくださったので、宿泊費はおいくらですか?と尋ねると、10kmだよ!との回答。いやいや、寝るというジェスチャーでおいくらですか?とロシア語で尋ねると、あぁ!いらねぇよ!と大きく手を振って宿泊費なんていらないと笑顔のおじ様。いや、でも!払いたいんです!と伝えるも、奥様にまで優しい笑顔でいらないよと言われてしまった上に、極めつけの子供達のバイバーイ!あぁ!払いたい!このままではベグパッカーになってしまう!私が感謝で涙ぐみながらオロオロしているうちに畑仕事が忙しいおじ様達は大きく手を振って家の方に戻って行ってしまった。本当に本当にありがとうございます!

今日の目的地はシクハーブ(Shitkharv)村20km先に設定した。昨日歩いた16kmよりも4km長く心配ではあるけど、次の村ダルシャイまでは10kmしかない。しかもダルシャイは昨日の目的地なので、それよりは先に進みたいところ…シクハーブにはゲストハウスやホームステイはないけれど、まぁなんとかなるでしょう!行けるところまで行ってみよう!

再び荒野を歩くこと10km。ダルシャイに到着。ダルシャイは湿地帯のような水の豊富な畑が広がる穏やかな町だった。

川幅が狭く、流れが穏やかに
湿原にロバぽつり。
頑張れミシュカ!

しばらく歩くと、また礼拝堂が。ここは山をそのまま利用したワイルドなスタイル。

礼拝堂入口
山の麓に積まれたマルコポーロシープの角

ダルシャイにも砦があるのだが、ほぼほぼ壊れてしまっている感じだったので登らず。

町の終わりに差し掛かる。また木のないエリアになるので、その前に湧き水の流れる場所でひと休み。

ミシュカは草を喰み、
私は日陰で湧き水を飲んでひと休み。

さて、いざ気合いを入れて、日陰のないエリアに足を踏み出すぞ!と歩き始めて30分ほど、軍の迷彩柄のピックアップトラックが通り過ぎて行ったな〜と思ったら戻って来た。車から2人の軍人さんが降りて来て、どっから来たんだ?何をしている?と質問。日本から来ました。ロバのミシュカとワハーン渓谷を歩いています。と答えると、ロバはどこで手に入れたんだ?と質問。ナマドグッド・ボロです。と答えると、書類は?的な事を言われたのでちょっと焦る。ミシュカを買った事を証明する書類なんてない。タジキスタンでは家畜購入証明書とかがいるのだろうか?!と思ってどうしよう!?と焦っていたら、なんのことない、書類とは私のパスポートの事だった。

上官と思われるおじさん、パスポート、GBAO、滞在登録をじ〜っくり確認すると、まぁ問題なさそうだね。ところで結婚してる?と質問。結婚してるかどうか今関係ねぇだろ!とイラついて、食い気味にダァ!(ロシア語のYes)と答えると、上官のおじさんすごく残念そうな顔でジロジロ私を見てくる。ミシュカは人間の長いやり取りに嫌気がさしたのか、草もないので地面に横たわってしまっているし、もう先を急ぐんでいいですかね?!とちょっと不機嫌を隠さずに、もう行っていいか尋ねると、どこまで行くんだ?と質問。シクハーブ村と答えたかったが、とっさに村の名前が浮かばず、翌日の目的地であるワハーン渓谷の名所、ビビファトマと答えた。するとおじさん、ビビファトマ遠いぞ?俺らそっちの方面に行くから乗せていってやるよと提案して来た。いや、でもロバのミシュカがいますんで。と言うと、ピックアップトラックだからな。ロバも積めるぞ?との事。いや〜でも〜歩いてワハーンを巡りたくてミシュカ譲ってもらったしな〜と回答に困っていると、おじさん、部下の2人の青年に命令して、ミシュカをあっという間にピックアップトラックに積み込んでしまった。

軍の車両や軍人さんは写真に撮れないが、この状況は面白すぎる…後部座席にさっきまで座っていた若い軍人さんは、上官の命令で、ミシュカとピックアップトラックの荷台に乗り、ミシュカの安全を確保する仕事を任されてしまった。そんな仕事ある?!

ミシュカを支えてくれる若き軍人さん。
任務外のお仕事ありがとうございます!

ミシュカと歩く時間が減っちゃうな〜と思ったけど、本来14日ぐらいかけて歩こうかなと思っていた旅がそもそも10〜11日に短縮されているので、最初の方の行程が厳しく、楽しく歩けなそうだったのでロバもろともヒッチハイクはありがたい。そして、しばらく行くと、更に乗せてもらって良かった…という道が待ち受けていた。村と村の間が離れており、木陰とかないだろうな〜とは想像していたものの、崖スレスレを崖崩れ修繕のための工事車両と四駆の車がギリギリすれ違いながら、土埃を巻き上げ走り抜けていく悪路。対岸のアフガニスタンの景色は素晴らしけれど、ミシュカと歩くにはかなり辛そうな道。拾ってもらえてよかった…

タジキスタン側の白い砂砂漠。
対岸アフガニスタンの雪山。
左側に伸びる道が、
ミシュカと歩くはずだった荒野の一本道。

拾って頂きありがたかったのだが、上官のおじさんセクハラ質問がすごい。結婚しているか?はパスポート提示の際に聞かれ、結婚していて子供が2人います!(嘘)を答えていたのだけど、旦那は今どこにいるんだ?今夜はどこで寝るんだ?君はキレイだ。君のことが好きだ。等々翻訳アプリに打ち込んでせっせとナンパ?してくる。乗せてもらった恩はあれど、セクハラには毅然とした態度で臨まねば!という事で「私は二児の母ですよ!」と翻訳アプリで伝えたら「失礼しました」と引き下がった。そうこうしているうちに、あっという間にズムドゥグ(Zumudg)村に到着。上官のおじさんのみ、車を乗り換えて10km先まで向かうという。大変な場所は過ぎたっぽいし、これ以上セクハラ軍人にお世話になると見返りが面倒くさそうと思って、ここまでで大丈夫!と伝えるものの、歩き始めたミシュカと私の横に車で張り付いて、乗りなよ〜乗りなよ〜と永遠に放っておいてくれなさそうだったので、再び乗せてもらうことに…

3人がかりでミシュカを
別のピックアップトラックに乗せこむ。
また車かよ〜なミシュカ。
風に耳がパタパタ。鼻の穴ぱかぱか。

丘を下り、平らになった畑周辺に上官のおじさんは用があったようで、そこで車を停め何かを視察。私はここでミシュカと降ろしてもらい、ありがとうございました!とお礼を言って先を急ぐことに。ビビファトマまではあと6〜7kmほど。平地のようだし、まだ11時だし、今日中に辿り着けそう!

しばらく歩いていくと、軍の施設を発見。その前を通り過ぎようとすると、またあのセクハラ上官おっさんが建物の前に立っているではないか?!え?!車で抜かされた?!いつの間に私より先に?!やっほ〜この軍の施設でお昼ご飯食べて行けよ〜。ってしつこいな!軍の施設よ内部に興味はあれど、これ以上このおじさんに世話になってはダメだ!という事で、丁重にお断りして先を急ぐことに。

軍の施設の後、道は木々に囲まれた峠道に差し掛かり、ナヴォボッド(Navobod)村に入った。今までのワハーン渓谷の村々は皆人が朗らかで優しかったが、なにかこの村は違う。木々に囲まれて開けていないからか…男性しかいないからか…木陰で休んでいたふたりの男性が携帯を構えながら近づいてくる。ニヤニヤ笑いながら私とミシュカを撮影し始めたので、アッサラーム・アレイコム?となんなんですか?と表情に出しながら挨拶すると、ハッとしたように、ごめん、撮影していい?と聞いて来たが、雰囲気の悪さは変わらない。

男性2人のうちひとりは15〜7歳ぐらいの青年で、村の中心部を離れてもミシュカ引いてあげるよ〜と着いてきた。青年だし、ロバに興味あるだけかな〜と思いつつも眉間に小さな十字の入れ墨入ってて(手とかに入っているおばあちゃんとかはたまに見かけるので民族的なものかな〜と思いつつも、眉間に入っているのは初めて見た)なんかちょっと嫌な感じ。

木々に囲まれて、畑が見えないナヴォボッド村

彼が木陰で止まってミシュカに草を食ませ始めた。ちょうど峠を越えたところだしひと休みしよう。と私も止まると、カメラ貸して!と言ってきた。キルギスでも皆一眼レフに興味があるみたいだったからカメラを貸すと、私にカメラを向けて、キス顔をしろと言ってくる。いやいやなんかTikTok?で流行っているっぽいけど、そんな事は恥ずかしいわ!と断ると、今度はキスを迫ってきた。オイ…とサッと冷たい空気を流し睨みつけると、嘘嘘!冗談冗談!とカメラを返してちょっとした冗談じゃん!仲直りしよ!と握手の手を出してきたが、許さねぇ…もう着いてくんな!と追い払うと、わかったよ…もう行くけど、最後に許してよ。と再度握手を求められる。めちゃくちゃ悪気があっての行為ではなさそうだったので、睨みつけたまま握手だけ交わし、青年を追い払うと私はまたミシュカと歩き始めた。

しばらく行くと、峠を越えて開けたところに出た。次の村に到着。雰囲気が悪かったのはやはりあの峠の村だけで、この村は雰囲気がいい。事前勉強に読んだ英語のブログで、◯◯村だけは民族が違く?すごく失礼で攻撃的な人々が暮らしている。みたいな事が書いてあったけど、ナヴォボッド村の事だったのか?今となってはどのブログでその説明を見かけたか思い出せないので、確認のしようがないのだけど…

次の村の道の脇の畑では老若男女村人が畑作業に勤しんでいた。金色の畑を見渡せる場所にポツンと建った家があって、あの家素敵だな〜と思いながら歩いていると、畑作業をしていた若い女性が声をかけてきた。彼女は少し英語が出来て、ロバと旅しているの?うちに泊まっていったら?と言いながら、うちはあの家よ〜と素敵だなと思った家を指差した。時刻は15時近く。今日は15kmほど歩いたし、どうしよう…泊めて頂こうか…とも思ったものの、もう後3kmほどで目的地のビビファトマ温泉。温泉入りたいから、ここで泊まってしまうと明日の日程が狂ってしまう…毎日一泊ずつで次の場所に移動していくのはなかなかに骨が折れる。ビビファトマでは連泊したい…後ろ髪を引かれながら、ありがとう!でも先を急ぐので!と伝えると、じゃあこれを持って行って!と袋に入ったりんごをプレゼントしてくれた。

頂いたりんごでひと休みひと休み

しばらく歩くと、ビビファトマはコチラという看板が出てきた。ここから先は登り坂らしい。最後もう一息だミシュカ!お世話になる宿は坂の途中だから頑張ろう。最後の坂がなかなかに急だったが、途中で景色が開けて、目の前に絶景が広がった。すごいなミシュカ〜!絶景だねー!

ビビファトマまでは8kmだけど、
ホームステイまではあと少し!
少し登ると絶景!

今晩お世話になる予定のアキム・ホームステイに到着。特に門にはホームステイ等書いていなかったので、恐る恐る門を叩いてみると、少年が顔を出した。アキム・ホームステイですか?と尋ねると、No!とのこと。えぇ〜違うの?!もう疲れたよなミシュカ〜どうしよう〜とショックを隠せないでいると、嘘!冗談だよ〜!アキム・ホームステイへようこそ!ロバで来たの?階段じゃなくてスロープがあるからこっちへ回って〜と、流暢な英語で少年が笑った。あ〜良かった〜!車用のゲートから中に入ろうとすると、西洋人の男性がちょうど出てくるところだった。え?ロバ?と困惑する男性に、少年が、この人ロバと旅してるんだって〜!と私を説明する。

少年がおじいちゃんを呼んできてくれ、おじいちゃんは慣れた手つきでミシュカから荷物を下ろすと、アプリコットの木々の下にミシュカを繋いでくれた。大好きなアプリコットが食べられてご満悦のミシュカ。ロバいいなぁ〜ワシも昔ロバを飼っていてね…ロバまた買いたいなぁ。このロバいくらだね?とおじいちゃん。すいません〜ランガールまで行かなきゃなので、ミシュカを売ることはできないんです。と伝えると、そうかそうか〜それは残念とおじいちゃん。

地面に落ちたアプリコットむしゃむしゃ

今日も色々あったねミシュカ。一緒に歩いてくれてありがとう。アプリコットいっぱい食べていいからね!

12/Aug/2024

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