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私の旅路

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私の旅路 part10

私の旅路 part10

旅人のこころは、式神さまに見破られたことをきっかけに霧のかかった湖に沈んだ。自分の口から湧き上がる泡を眺めるように、下へと落ちていく感覚でいっぱいだ。

旅人は、言葉を失った。自分は、やはり違うのだと実感せざるを得ない。何を間違えた。どこの道を見逃した。と、辿ってきた記憶を逆さにしては悩み続けた。式神さまの言葉が正しいと決まったわけではないと、しがみつく思いで回想した。

お主がどんなに悩んで考え

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私の旅路 part9

私の旅路 part9

旅人は夢の中へと潜った。そして、いつもと違う感覚が沸き上がった。  今までの夢は、幽体離脱のような客観的体験に比べ「今日は」リアルだと実感する。

足元から上がってくるヒヤッと凍るような寒気。

目の前は、暗がり。足元の悪い木々の根。深い海のような緑の森。

チクッと、刺さる針のような視線。周りには誰もいない。どこから見ている。

旅人は、竦みそうになりながら歩いた。歩くたびに視線は集まるようだ。

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私の旅路No.8

私の旅路No.8

それからも、お日様の話しとお月様の話しを交合に聞いては夜更かしをしていた。こんなに面白い会話を逃すなんて勿体ないと正直思ってしまったから。

時々、ふらっとやって来るコウモリに翼を借りて眠りにつければ満足と考えるようになった。その満足感は旅人にとって眠りの深さと時間が丁度良かった。けれど、たまに色鮮やかな夢を見るようになった。

そういう日は、旅人はお日様に起こされないと起きられないくらい深い海に

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私の旅路 No.7

私の旅路 No.7

そんなある日、お日様とお月様が愉快な仲間がいると紹介してくれた。

その方は、大きな黒い翼を持ったコウモリだった。彼は、そっと呟いた。「そろそろ、眠った方が良さそうだから僕の大事な翼の中で眠るといいよ。君がびっくりするくらいぐっすり眠れるはずだから」と言った。

旅人は素直に応じ、何日かぶりの眠りについた。大きな翼は旅人を囲むかのように広げ、お日様とお月様の話し声はピタリッと聞こえなくなった。

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私の旅路 No.6

私の旅路 No.6

逆にお月様は、天空のはなし。あやかしのはなし。静かな音のはなし。をお日様に優しげに話していた。

それは、冒険家になったかのように勇ましさを背負って語っている。

お月様は「春の夜は、目を疑うほど綺麗なものがあるの。特にオススメなのが夜桜よ。昼間の温かい母のぬくもりを感じさせる景色が、夜になると途端に妖艶な雰囲気を放ち、あやかしを招くの。

星たちが桜をライトアップし、風が花びらをちらつかせ、風と

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私の旅路 No.5

私の旅路 No.5

次に訪れた部屋は、時計の針を気にせず喋り続けるお日様とお月様がいる場所だった。私は、お日様とお月様が互いの話題の重さでシーソーをしているように感じた。

また、なんて不思議な空間なのだろうか。徐々に明るさが変わるわけでもなく、彼らの話すタイミングによって傾く外界。

旅人には、ひっそりと魔のタイムサイクルが近づいていた。旅人の規則正しい軸は崩れ、たちまち一風変わった生活がやってきた。旅人は、お日様

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私の旅路 No.4

私の旅路 No.4

私は、いつの間にか旅に出ていたことに気づき、ここらで振り返ることも悪くないと考えたからだ。

そもそもの原点は、「不確かな存在や歪な言葉の日々から抜け出したい。」と願ったことがきっかけだ。その結果、想像を絶するような世界に飛び込んでしまっていたこと。

そして、鏡に映らないもう一人の自分を見つけてしまったこと。その見えない姿の自分と向き合えない私が嫌いだということ。これ以上は、考えても良いことが浮

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私の旅路 No.3

私の旅路 No.3

次に訪れた部屋は、とても寒かった。旅人は、寒さから起こる痺れを微かに感じた。先程の空間と違い、静かだ。

目の前に見えるのは氷山らしき吹雪いた白い三角の形があった。旅人の格好は、少し薄着だった。気付くと身体は冷えきり、所々、硬直し凍傷しかけていた。灰色の景気をした薄暗さ、日も出ていない。誰かが立ち寄りそうな気配もしない。大地には足跡がない。

一体、どうしたものか?動かせる部位を頼りに前に進んだ。

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私の旅路 No.2

旅人が始めに訪れた部屋は、見慣れない人獣たちが昼夜構わず騒ぎ、蓄音機が踊り回る場所だった。

その為、音は複数重なり合いまるでオーケストラの演奏かのごとく、バケツから溢れかえる嵐のようだった。旅人は、嵐の中で生活している内に精神が少しずつ磨り減り、とても人ではない気分になりかけていた。

それでも、楽しく謳歌する人獣たちを見て、心底恐怖に感じながらも尊敬した。こんな空間でよく生活できるなと感心した

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私の旅路 No.1

私の旅路 No.1

あるとき、私は旅にでていた。それは、「みえない世界を廻る扉を見つけてしまったから」かもしれない。

最初は、気味が悪かった。暗く、ジメジメとした重たい雰囲気だったから。怖くなり引き返そうと、身を反転したとき、何か崩れる音がした。とっさに逃げられないと直感した。恐る恐る、ゆっくりと前に、足を踏み出した。そして、扉を見つけた。正直言うと助かると思った。この場から抜けられると思い、藁にもすがる気持ちだっ

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