最後に好きになった人が君でよかった。
友情から恋心に変わった時、すごく幸せだったのを覚えている。
息を無意識でするのと同じように、気がつくと無意識で君のことを考えてたあの頃。
好きってこういうことなのだと知った日。うるさいほどの緑がほんのりと色を変えていく季節だった。
「おはよう」
その一言が聞きたくて。
「お疲れ」
そう言われると何だか少しだけ寂しくて。
次君に会える日を指折り数えたものだ。
君が好きだと言った曲は毎朝の通学曲になったし、君が好きなタイプを聴いた時はちょっと寄せたりして。二人で通った道路はどの道も全部覚えている。
少し薄暗い樹木の間を斉藤和義の歌うたいのバラッドを二人で熱唱しながら通ったり、トンネルの中はセカオワのマーメイドラプソディが流れてたなとか。
少し静かになったタイミングでギターの音が流れ始めたサウシーのシンデレラボーイは特に君は好きだと言っていなかったのに、シンデレラボーイを聴くたび、君とのあの日を真剣に思い出せるものだ。
夕日を歩道橋が見えるところで見るとbacknumberの水平線を思い出してしまうくらい私の気持ちはまだあの頃の君に侵食されている。
嫌いになったわけではない。素敵な人だったし、今でもきっと素敵な人だ。
でももう、何度あっても好きになることはないだろう。
あの頃の私とはもう違う。
あの頃の私があの頃の君に出会ったから恋をしたわけで
今の私があの頃の君に出会っても、あの頃の私が今の君に出会っても恋していたかなんてわからないじゃない。
あれから私の恋心が埋まることは無くなってしまった。
君のせいでもない。ただ、君以上に好きな人に出会えるかと言われればきっともういない。
引きずってたあの頃も終わり、前を向くどころか忘れてるけど、ふとした瞬間の楽しかった記憶はまだ私の中で生きている。
好きな人っていうだけで素敵だった。
好きな人が君なだけで嬉しかった。
この恋のゴールはなかったけれど、素敵な恋だった。
拝啓 好きだった君へ。
あの頃の青春をありがとう。
後にも先にも君しかいないような気がしていた時間がすごく好きだった。
あの頃の君に出会えてとっても幸せでした。
最後に好きになった人が君でよかった。
ナナ