見出し画像

富士ヒルとブルーリングと私

2024年6月2日、はじめての富士ヒルを無事に終え、想像の100倍くらい楽しかったので久しぶりに日記を書こうと思います。

知らない方のために説明すると、富士ヒルとは富士北麓公園から富士山五合目(標高2306m)までの距離25km、標高差1270mを自転車で登るヒルクライムレース。参加者数は9000名を超え、初心者でも参加できる懐の深いイベントです。

まずは結果から

公式のリザルトで1時間41分54秒、男子の完走平均タイムよりちょっと速いくらい。

ブロンズ(90分切り)達成できればいいな〜なんて思っていましたがそんな簡単にはいかず、ただ今の自分の実力は出し切れた感はあったので、個人的にはいい結果だったのかなと思ってます。

準備期間

2023年夏のPBPを完走して帰国してから、大晦日の400kmブルベ以外、特に年が明けてからはほとんど自転車に乗らず怠惰な日々を過ごしていた私。
体重が過去最高のピークを迎えた4月頭ごろに「ヤッベやらな!」と思い立ちダイエットとトレーニングを開始するものの、3週間ほどで慣れない努力が祟って体調を崩してしまい秒で心が折れ、再び怠惰な日常へ。
それでも1〜2週間に一度は平均斜度が近い金剛山RWコース(10km / 544m up)でTTをして、2ヶ月弱で6分ほどタイムを短縮。
激落ちしていたパフォーマンスは昨年のPBP出走直前のFTPの96%ぐらいまで戻り(191W→184W)、体重増加の影響でPWRは2.8倍と昨年の93%ぐらいに。
あとはステムを軽くて少し短いものに交換し、タイヤをAGILEST DUROからAGILEST FASTに変えたものの大きな変更はなく、PBPを完走したエントリーアルミロード(これしか持ってない)での富士ヒル初挑戦となった。

大会前日

前日受付を行う土曜日、子供の運動会が被ってしまっていたので事前に代理での前日受付と下山用の五合目荷物預けを知人にお願いし、私は午前中に運動会を終えてから急いで支度をしてギリギリで新幹線に飛び乗る。
こだまに2時間ほど揺られ18時ごろに三島駅に到着。
三島駅で知人に拾ってもらい、高速道路に乗って車を1時間ほど走らせて宿泊予定のホテルのある河口湖周辺エリアへ。
天気はうっすら雨。
空は暗く、厚い雲に覆われて富士山は姿を隠している。

ホテルに到着し、代理でやってもらった前日受付の戦利品を整理しつつ、本番の服装を考える。
初参加で暑いのか寒いのかも予想がつかず、雨予報でもあったので悩みながらも、登ってる間は暑いでしょう、ということで持ってきたウェアの中から半袖のPBPジャージと、PBPビブショーツを選択。
つけ方がわからなかったのでジャージを着た状態で知人にゼッケンをつけてもらい、お腹が減ったので近くのほうとう屋さんに向かった。

鳥モツ煮に馬刺し、おいしいほうとうをお腹いっぱいご馳走様してもらい大満足。
レース前日だからと食べ過ぎた、生まれて初めてのほうとうを口から戻しそうになりながら、翌日の朝ごはんを調達するためにホテルに戻る途中にあったコンビニへ。
もうなんにも食える気がしない……と思いつつ別腹用のデザートを物色するものの、大好きな抹茶系のスイーツが見つからず、しぶしぶ抹茶ラテと翌朝用のサンドイッチふたつとピルクルをカゴに入れ、おにぎりが駆逐されてることに若干テンションが下がっている知人とともにホテルに帰投。

ホテルに戻ってゴロゴロしたあとはゆっくりと露天風呂に浸かり、さらに大満足。
ここまでずっと知人に頼り切った見事な姫ムーブ。
参加者の中でもっとも姫ムーブをしているおじさんである自信があるが、レース本番は自分ひとりの力で自転車で富士山を登らなければいけない。
夜更かしもそこそこに24時ごろには電気を消し、心地よい緊張感に包まれながら、すぐに意識は睡眠の底に落ちていった。

大会当日、出走まで

大会当日の日曜日、朝5時ごろに物音がしてうっすらと目が覚めた。
なにやら知人はもう準備を始めている様子。
私たちの出走は最終である第7スタートだったので、8時にホテルを出ても間に合うぐらい。
迷わず二度寝を決め込み、6時前に再び覚醒。
知人は他の参加者の見送りがあり7時ごろにホテルを出発するとのことで、知人が淹れてくれたコーヒーを飲みながら前日に買っておいた朝ごはんをモシャモシャと食べ、いつもどおりダラダラと支度をする。
私は予定どおり8時ごろにホテルをチェックアウト。
自転車に乗り、スタート地点である富士北麓公園に向かった。

北麓公園まではゆるい登り。
しばらくは軽いギアでくるくると回して心拍を上げ、その後少し重めのギアでゆっくり回してトルクの掛け方を意識する、それぞれの走り方を交互に繰り返して身体の調子を確認しながら登っていく。
空は薄暗いもののすでに雨は完全に上がっており、路面のほとんどは乾いていた。
絶対に雨が降ると思っていたので拍子抜けしながらペダルを漕いでいくと、坂道の先に交差点が見える。
交差点を左折すると下りになり、先にスタートした参加者たちが登っていくコースを逆走する区間(パレード走行区間)になる。
すると対向車線を登っていく大量の自転車のなかで、数台が絡む落車が発生。
パレード走行でそんなにスピードは出てないけれどレースに影響が出そうで大変だ……こわ〜と思いながら横目で見ながら下っていく。

北麓公園に到着し、すぐに知人と合流。
長袖から半袖のPBPジャージに着替えてトイレに行き、スポーツようかんを食べてBCAAとパラチノースを溶かしたボトルの水を飲み干し、ペットボトルの水をボトルいっぱいまで再び注ぎ、不要な荷物をスタート地点の荷物預かりに預ける。
そうこうしているうちに長かった待機列はほぼ完全に捌けていた。
スタート地点のクローズ時間となり、本当に本当の最終ウェーブの参加者だけが残るなか、カウントダウンが響き渡り、私たちを含む最終ウェーブが、ついにスタートした。

スタートからゴールまで

各スタートの最終ウェーブの先頭に配置されている90分ペーサーに着いていきたい気持ちが多少あったが、最終ウェーブの最後尾からスタートしてしまったため、ペーサーとの間に大量の参加者がいて距離を詰めることができない。
狭い道の中にパンパンに詰まった大量の自転車を苦労しながら少しずつ追い抜き、ウェーブ中の3分の1ほど位置を上げたところで計測開始地点を通過。
サイコンのスタートボタンを押して200W弱、3倍ほどのパワーでペダルを回し、一気にペースを上げる。
他の参加者を横目に見ながら少しずつ追い抜いていると、後ろから追いついてきたもっと速い、PBPジャージを着た参加者に声をかけられた。
なんと昨年の中部1000kmでも一緒だった方で、ほんの少しではあるが談笑し、そのままビューンと登っていった。
その後もちょこちょこと応援を貰えたPBPジャージ。嬉しい。

サイコンの経過タイムとトップチューブに貼った目標タイムを見比べると、5kmでおおよそ2分のビハインド。
ブロンズは厳しいね〜と思いながらもなんだか楽しくて、ペダルを踏む足を緩める気にはならない。
空はもう完全に晴れていて、木々の間から差し込む日の光が身体に染みる。

斜度が高いところは抑え気味に、斜度が緩むところではダンシングで一気に加速。
2.8〜3倍くらいのパワーで登り続け、心拍も最初から最後までほぼずっと180オーバーの状態。
普段の限界を超えたペースで、とても苦しいのにタレないのは完全に応援のおかげなのでは?とPBPの時のことを思い出す。
私はとてもチョロい人間なのだ。

知人はギリギリ視界に捉えれる範囲でずっと私の前を走っていたが、たしか15kmくらいのところでペースが落ちてきた。
私が「お疲れ〜(笑)」と言いながら横を抜いていくと死ぬほど嫌そうな顔をしていたので、これから1年間はこのことを擦り続けたいと思う。

木がなくなり、空が開けた。
そして強い向かい風。
ここで若干ペースを落とすが粘り続け、他の参加者を坦々と追い抜いていく。
高度が上がり息が苦しくなるが、それでもFTPである2.8倍でほどで回し続ける。
かなり標高が高い。
気温が低いのか、グローブから出た指先が軽くかじかんでくる。

最後の平坦区間。追い風。
対向車線にいる下山待機列からの「踏め踏めー!!」という声援。
どデカい声で「とおりまーす!!!!」と叫びながら全力で踏んだ。
他の参加者を次々と追い抜く。
後ろから人が着いてきていて、私を風除けにしているが、全く気にならない。
この平坦区間は、死ぬほど気持ちよかった。

平坦のスプリントを終え、再び斜度が上がり、後ろに着いてきていた人が私を追い抜いていく。
最後の短い登り。
心拍数は192。
こんな高い心拍、初めて見る。
死ぬほど苦しいが歯を食いしばって登る。
ゴール前で最後のもがきをしようと思っていたら、すぐ目の前にゴールが迫っていた。
安全な場所まで移動してペダルから足を降ろす。
苦しい。
ハンドルに顔を突っ伏す。
目の前は真っ白。
1分ほどそうしていたか、思い出し、慌ててサイコンのストップボタンを押す。
手元の時計で1時間43分。
ブロンズには全く届かなかったが、本当にわけがわからないくらい、スッキリした気持ちである。

ゴール後の試練

山頂はこれ以上ないくらい、晴れていた。
下山様預け荷物の受け取りエリアまで自転車を押して歩き、空いてるスペースにゆっくりと自転車を倒し、結んでいた髪を解く。
シャワーを浴びたあとのように、汗で濡れている。
自分の荷物を探していると、同じPBPジャージで挨拶した方と再開する。
その方はしっかりブロンズ達成していた。すごい。

すぐに知人とも合流した。
ジャージと靴下を脱ぎ、下山用荷物に入れたジオラインLWと冬用ジャージを着て、冬用のメリノウールソックスを履く。
最後にトイレに行って、下山するぞ、と言うときにポツポツと雨が。
最高に嫌な予感がしたので道の端っこに寄り、モンベルのレインウェア上下を急いで上から着た。

下山の待機中、雨はどんどんと強くなってくる。
運営からの注意事項等の説明のあと、合図で下山がスタート。
雨でリムブレーキの制動にあまり自信がないので、スピードを抑え気味で下る。
単独走ならもう少しスピードを出すところだが、これだけたくさんの人数で下ると逃げ場がなく、動きも読めないので安全を最優先。
途中からは豪雨で前もほとんど見えない。
しかも寒い。
身体はモンベルのレインウェアのおかげで全く濡れていないが、SHIMANOのGORE-TEX冬用グローブと、レインシューズカバーを忘れたSHIMANOのSPDシューズは完全に水没。
手は寒くて痛いし足は気持ちが悪い。
突然、猛烈な尿意があり一合目下駐車場のトイレに命からがら駆け込む。
死ぬかと思った〜と思いながらまた豪雨の中を下っていくと道に突然の大量の集団。
集団落車かな……と思いつつ前にいた人たちが捌けるのを待って、再び下っていく。

料金所を通り過ぎ、交差点で右折をして北麓公園に向かう。
この区間は道路の右側が通行コースになっていて、なんかフランスみたいだなぁ、なんて思ったりもした。

北麓公園に戻ってきた。
知人と何度目かわからない合流を果たし、遅れてきた私は自転車をラックに置いてフィニッシャーリングの受け取りに向かう。
記録証を発行したあと、奥のエリアで参加者は無料でうどんが食べれるのだが、人が多く、雨に打たれながらうどんを食べる元気がなかったので泣く泣く我慢。
「90分以上のタイム」の列に並び、計測センサーと引き換えにブルーのフィニッシャーリングを受け取る。
来年は隣の列に並びたいな、とうっすら思いながら自転車のところへ戻り、泊まっていたホテルまで再び自転車で移動。
前の人に着いて行ったら富士急ハイランドの駐車場に入ってしまうなど、迷子になりながらもホテルまで無事帰着し、服を着替えて知人の車に乗り込む。
最後の雨天走行は完全にブルベだった、と言ったら知人は笑っていた。

お家に帰るまでが富士ヒルです

私はあらゆる準備が壊滅的に遅く、今回も例に違わず、東京方面に向かう高速に乗ったのは14時半ごろ。
渋滞に巻き込まれながらも18時に渋谷に到着。
パーキングに車を停めてCIRCUS TOKYOへ。
CIRCUS OSAKAはもう何度行ったかわからないがこちらは初めて。
知人の知り合いが出演していたが間に合わず、とりあえずメインフロアで音を聴く。
ドラムンベース主体のイベント。
かなりいい感じの音だったのでだんだんノってきて、踊りすぎて最後は汗でビシャビシャに。
大阪への終電があるのでトリのIMANUの途中でクラブを抜けて車で東京駅まで送ってもらう。

東京駅で自転車を輪行袋に入れて、新幹線に乗り込んだ。
新幹線が少し遅れたせいで新大阪に着いてからの終電チャレンジで肝を冷やしたけれど、日付を跨いだころ無事に帰宅。
洗濯やら片付けやらの諸々を済ませ、シャワーを浴びて寝る準備ができたのは朝方の4時。
この片付けが一番つらかったかもしれない。
これにて私の富士ヒルは無事終了。

来年は

富士ヒルとブロンズリングと私、というタイトルで日記を書きたいですね。
努力は苦手ですが、ボチボチ無理のない程度に頑張っていきたいと思います。

それでは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?