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リバイバル公演を見てリモート演劇を考え直す #劇団ノーミーツ

12月12・13日、劇団ノーミーツの「門外不出モラトリアム」のリバイバル公演を観劇しました。リバイバル公演とは、過去の公演の録画を、生の上演と同じように配信するというもので、開演前と開演後にキャストの生トークでサンドイッチする形のハイブリッド型公演という感じ。これまでと同様、画面脇のライブチャットでわいわいチャットしながら観劇するスタイルでした。

旗揚げ公演のこの作品、新型コロナウィルスによる緊急事態宣言が解除される数日前に上演されたもので、見られなかったことを悔やむ声も多く聞かれました。12月になり、当時の感染者数を大幅に超えた今、あらためてこの作品を上演することに意味があると感じました。激動の1年を終える今となっては、5月は遠い昔に感じてしまうのですが、だからこそ当時の空気感を味わい、今年を振り返るよい機会になったと思います。

また、劇団がオンライン劇場「ZA」を立ち上げて、その場での初の公演でした。今年、演劇をリモートでやるという実験が活発になり、一方で、振り返ると、そこまで定着していないようにも感じます。では、リモート演劇の真価とは何か?劇場でも公演できる今、それを問い直す時期に来ているわけです。よい機会なので、リバイバル公演を題材に、私なりに考えてみたいと思います。

観客のエクスペリエンスの観点

リバイバル公演では、リモート演劇ならではのライブチャットと演者のコール&レスポンスはありませんでしたが、一方で演者が観客としてライブチャットに参加していて、演者と一緒に作品を見て、アフタートークで感想を聞くという一体感。また、2日目ではエンドロールで画面がフリーズしてしまい、チャット欄が本編のネタを元に応援する流れになって、また一体感を感じました。アクシデントではありましたが、生配信ならではの盛り上がりはここでも感じられました。

おしゃべりしながら観劇する、これはリアルでは絶対できない体験です。ライブチャット欄では、リピーターの方は初見の人達に配慮しているのが感じられました(温かい観客・・!)初見とリピーターでチャット欄が分かれていると、さらに面白い体験ができそうです。(実際、2作目の「むこうのくに」では、LINEでネタバレありオープンチャットが用意されました)録画素材の配信とは違い、場に集まって共有する仕掛けがオンラインならではと思います。


コンテンツの観点

では、コンテンツとしてはどうなのか?

二作目の「むこうのくに」では、架空のソーシャルネットワークサービスが構築されていて、観客はそのサービスにログインする形で劇場空間に入場しました。この架空のSNSで物語が進行していくので、観客もその場に参加して一体感を感じられました。

今日から始まる第三作「それでも笑えれば」は、選択式演劇といって観客が結末の選択に関与できる形式だそうです。これもオンラインの参加型だからできる一つの形態であり、リアル演劇ではなかなか真似できないものですね。

ちなみに、過去2作とも、オンラインサービスが場となって物語が進行していきました。ただ、リモート演劇はそれ以外の表現方法はないのでしょうか。

春先にいろんな演劇関係者の方々がリモートでの演劇を模索していたので、実験的な配信を結構見ていました。例えばこちら。

オンラインのお月見会&即興劇でした。演者がスマホをもって外に出て月を映しながら即興劇をする実験。必ずしも演者本人が映っているわけではないのですが、だからこそ余白があって想像力をかきたてられます。ついつい自分も外にでて月を見てしまいましたが、遠くにいるけど共通のものを見て、一方でスマホ画面でつながるというのは、今っぽい体験だなと思った記憶があります。

リモート演劇は、演者がカメラに向かって顔を映して演技するというだけのものでもないというのも一つの発見でした。例えば、演者が部屋から出て走っていて、本人のスマホで顔と景色を映す、とか、演者が独白している画面と違う場面で、それを補完する表現が進行している・・・など。ミュージカルでは、主人公が独白を歌い上げる背景として、モブがダンスで盛り上げるのは普通ですし、そのような関係性で舞台らしい画面設計をするのも面白いなと思いました。リモート演劇は進化の途上なので、こういう演出のバリエーションを見るのも楽しみの一つです。もしかしたら、発明的なスタイルが生まれるかもしれません。

(↓複数の演出家のいろんな実験が見られて面白いです)

オンライン劇場「ZA」では、劇団ノーミーツの自主公演以外の公演もありそうなので、もっとアート寄りな演劇や実験的な作品が見れる機会もあるかもしれません。

アートは0から生まれるというよりは、制約があるからこそクリエイティビティが生まれる、という側面がありますので、制約の種類が変わった時こそ、これまでなかったクリエイティブな作品が生まれる可能性をはらんでいます。

なにより生の気迫を感じたい

録画作品との違いは、演者がその場ですべてを出し切っている気迫を感じられるところかなと思います。一回しかない本番だからこそ出てくる輝き、観客を目の前にした真剣勝負・・そんなエネルギーを感じたいというのが、高いお金を払ってわざわざ劇場まで出かける理由ではないでしょうか。観客の雰囲気によって日々演技も変わる・・という発言も演者のインタビューでよく見かけます。練習では決して出てこない、本番で起きる化学反応とそのエネルギーを観客は受け取りたいのだと思います。

そもそも、初回公演で一番衝撃を受けたのは、リアルの劇場ではなくてもこれが可能だということ。オンラインだから感情が伝播しない、というのは固定概念だということが分かりました。それが私自身が劇団ノーミーツにはまってしまった一番の理由なのだと思います。


今日から第三作公演が始まりますが、新しい驚きがあるのか、とてもわくわくしています。私にとっては、年内最後の大型エンタメですので思いっきり楽しもうと思います。

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小原ナナエ(奈名絵)
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