#劇団ノーミーツ #むこうのくに リモート演劇が成立することを証明した作品
「#むこうのくに」初回の観劇終了。興奮さめやらない状態ですが、ネタバレにならない範囲で感想を。
#劇団ノーミーツの旗揚げ公演 「門外不出モラトリアム」で、「エンタメの歴史が加速した」ことを目撃したのが5月24日。緊急事態宣言が解除される前日でした。世間も自分も初めての外出自粛で精神的に限界を迎えた瞬間に、突然投げ込まれた感触がありました。
オンライン演劇はリアル演劇の劣化版ではなく、Zoomでなきゃできない作品。劇場で上演したら、そちらがむしろ劣化版になるような。演劇は映画と違って、時間を共有することに意義があるし、緊急事態宣言下だから出せる演者の気迫とあいまって、見る側の感情とのシンクロ度合いが奇跡的な作品だったと思います。
それを超える作品をどうやって作っていくのか?危機的環境で生まれた奇跡ではなく、興行として成り立つ作品にできるか?期待もありつつ、親心のような心配もありました。
プロモーションで予感を感じた
ところが、そんな心配はよそに、前回とは違うベクトルで進化を遂げたのが、今回の「むこうのくに」。キービジュアルのセンスの良さに期待値が上がり、主要登場人物別のキービジュアルをネットプリントできる、というリモートならではの仕掛けあり、YOASOBIの「ハルジオン」の主題歌の動画でもりあげつつ、クリエイティブ・アートディレクションの進化を予感させるものでした。
リモート演劇に舞台美術はあるのか
前回の作品は、舞台は俳優それぞれの自室で、小道具も俳優自身が手配して、その手作り感が生まれたてのリモート演劇らしさを形作っていましたが、今回はリモート演劇の舞台美術にこだわった作品だと思います。それも演技を補完する舞台装置ではなく、ストーリー設定でありつつ、演者と観客が同じ場にログインするという。ああ、こういう劇場の作り方もあるんだなぁというのが、始まる前の嬉しい驚き。
さらに、ドット絵と2020年らしい色調と3Dが統合されたたアート作品としてもクオリティが高く。前半は、舞台が転換するごとに出てくるビジュアルのセンスの良さにスクリーンショットを取りまくるほど。リモート演劇でもこういう風に舞台美術の可能性が広がるぞ、という気迫を感じました。
リアルとバーチャルの境目
With コロナの時代になってから、友達と直接会う回数も格段に減り、Zoomの中でコミュニケーションとることが日常になって、リアルとバーチャルの境目が良くわからなくなっています。その前から職場でビデオ会議はあったものの、自分の顔をカメラで見るのに抵抗なくなるどころか、バーチャル背景とかフィルターで画面の中の自分を整えるのもあっという間に常識になりました。
一方で、Twitterに代表されるとおり、バーチャルな場は、匿名性があればあるほど、人との距離感が歪んで攻撃性が出やすくなる。「あれ、世間ってこんなに殺伐としてたっけ?」って思ってしまう一方で、ミュートをうまく使えば居心地よい空間にすることもできたり。リアルとバーチャルで顔を使い分けることもできる。自室に一人でいて、外への窓がオンラインしかないと、ふと、私の居場所はどこなんだろう、と、白昼夢を見ている気がしてハッとするときもあります。
今、外出自粛が求められながら、並行して旅行が推進されるという状況で、世の中の矛盾が極まっています。外出自粛をしている立場だと、旅行に出かける人達が別世界に住んでいるように感じます。立場によって、価値観によって生まれる分断。それがある今だから生まれるドラマ。同時代性のあるメッセージを盛り込みつつ、どんな環境になっても人間の生の感情は変わりがないのだなぁと気づかされる作品だったと思います。
東京オリンピックなき4連休を走り抜ける
この4連休は、東京オリンピックのために、法律を改正して祝日を無理やりずらしてできた連休です。まさかの東京オリンピックのない4連休。誰が想像したでしょうか・・・。でも、緊急事態宣言が出てから結成されたリモート劇団が、ぽっかり空いた穴を埋めてくれました。
コロナ禍があるからこそエンタメの歴史は変わっていく。それを4日間見届けたいと思います。
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