ニッポン放送の番組に電話で出演することになった話(前編)
あの朝、小生は警察に捕まった。
毎朝通る道に「一時停止」の表示があることはもちろん知ってる。
ブレーキは踏んだ。絶対に。
止まったと思う。たぶん。
「車体がピタっと停止していなかったので」
減点2点で罰金七千円。あーもー最っ悪!
今日は終わってる。あるある、そういう日。
今夜は20時からラジオで「BAR GOTEN」の放送があるから、さっさと仕事を片付けて定時で上がろう───。
マイナス100点からスタートした、2023年10月14日(土)。
仕事を終え、19時過ぎにスマホを見ると03‐で始まる番号から着信履歴があった。
「BAR GOTEN」放送1時間前に東京から電話…
すごく嫌な予感がした。途端に冷や汗が出る。
震える指で番号を検索…
「ニッポン放送」
思い返せば数日前、ニッポン放送の番組「BAR GOTEN」にメールを送った。
これまで小生にとってラジオは「聞くもの」であり、お便りを送るという発想は一切なかった。
何を書けば良いのか悩んで、とりあえずラジオネーム、本名、ついでに住所…そして…
確かに書いたわ、電話番号。
でもまさか、電話がかかってくるとは思わないじゃない!!!!!
まさか…まさか電話出演…?
人前で話すことが苦手な小生にとって「BAR GOTEN」初回放送で5点フレンズがスタジオのお2人とおしゃべりする姿は憧れしかなく、尊敬の気持ちをもってドキドキしながら聞いた。
この放送、全国で何人が聞いてるんだろ。しかも生放送だよ。すごいよなあ…と。
まさかその1週間後、小生がこんなことになることも知らずに。
容量オーバーの幸運が突然訪れると、人は逃げたくなることを身をもって実感した。
いや無理無理無理無理無理無理…
折り返すのは止そう…
むしろよかった、電話に出れなくて…
きっと他の誰かが出ることになったよね…
面白い人も、電話でお話ししたい人も、5点フレンズにはきっとたくさんいるよね…
そう自分に言い訳をして、気持ちを落ち着かせた。
だけどニッポン放送は許してくれなかった。
数十分後追い打ちをかけるように、同じ番号からの着信。
いやああああああああ
また来たあああああああああ
無理っつってんじゃあああああああああああん
だけど…
初回放送では5点ラジオの地上波進出が成功するようたくさん呟いて盛り上げて、その2日後には、みんなの力でApple podcastで一位を獲得した。
本当はしょうちゃんとVAJAさんが遠くへ行ってしまう寂しさを感じている人も多いと思う(小生もそう)。それでも遠い場所に2人を送り出そうとする5点フレンズの姿とそれに応える2人の姿に泣いた。
ものすごく良い波が起こっているのに「上手にしゃべれないから」なんてしょうもない理由で逃げるのはすごく無粋な気がした。
5点ラジオへの感謝の気持ちを、小生に出来る最大限の応援で返そうって地上波発表の時に決めたじゃない…
それなのに小生は…
2人の顔が頭に浮かぶ。
「もしもし」
電話の相手は、ニッポン放送のNと名乗った。
初回放送の後ろで笑い声が聞こえて「地上波」を強烈に実感させてくれた、あの作家さんだとすぐに分かった。
ニッポン放送からの電話だと分かって出ているのに、一旦、驚く小芝居を挟んでしまった。私の中には面倒な女優が住んでいるらしい。
(すぐ近くにしょうちゃんとVAJAさんがいるんだ…)
送ったメールについて幾つか質問され、少しお話しした後、もしかしたら放送中に電話をかけるかもしれないけど、どうなるか分からないからこれは話半分で聞いておいてくださいねと言われた。
その時点で断ることもできたけど、流されてみることにした。
「放送楽しんでくださいね!」とさわやかに電話は切れた。
どんな話も笑って聞いてくれる、べらぼうに感じの良い人だった。
だけど…
この精神状態で楽しめるわけなくね?!
えらいことになった。
Twitterで呟くのは良くない気がしたので5点フレンズのSちゃんにDMをする。
「ききききき聞いて」
若い頃ガラケーで、よくこんなメールよくしたなあ、と思う。
「聞いて、付き合うことになった!」
「聞いて、仕事辞めた!」
それが今では
「聞いて、ニッポン放送から電話があった!」
人生ってわからない…
落ち着ける場所に車を移動することにした。
小生が暮らす田舎では、コンビニの建物よりも駐車場の方が何倍も広い。そんな、だだっ広いコンビニの駐車場の隅っこ、わずかに街灯の光が当たる場所に車を停める。
目の前には広い広い真っ暗な田んぼ。
SちゃんがDMのやり取りをしてくれていたおかげで少しだけ気を紛らわせることが出来た。
「電話がこないように祈ってて!!!」と半泣きの小生に、終始楽しそうなSちゃんはわかったわかったと返事をくれたけど、絶対祈ってないのはバレバレである。
逆の立場だったら小生も「電話かかってこい」の方向で祈るもの。
ついに放送が始まった。
Twitterでたくさん呟くつもりだったのに
全く呟けないどころか放送がひとつも頭に入ってこない。
真っ暗な田んぼを血走った目で見つめる。
30分を過ぎてほんの少しだけ緊張の糸が緩んだ頃、「熱帯夜」が流れた。
後編につづく。
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