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吐き戻しが多いのは昔からだった。食欲が落ちていたのも、ああ今年も夏バテかなんて気にもしなかった。こちらが撫でようとしても軟体動物みたいにぐにゃりとよけ、出社前の忙しいときや疲れて動けないときに限って「撫でなさいヨォ」と脛や肘に顔をこすりつけてくるのもいつも通りだったのだ。 異変を認識できたのはめずらしく私とネコの、撫でたい/撫でられたいのタイミングが合ったからだ。指先にはっきりと背骨と腰骨の感触があった。持ち上げてみると異様に軽い。 「おまえ、もしかして病気なのか」 ネ