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K氏を封じ込め作戦を、練ってみたけれど…

毎年4月に行われる通常総会の準備を進めていた2017年3月。
そろそろ区分所有者に総会資料を配布しなくてはならないタイミングになりました。

この総会でいよいよ、コンサルを導入したマンション大規模改修を議案に挙げるのです。
3月の理事会でわたしは、K氏の存在がとても不安だということを、出席理事と修繕委員会のメンバーに伝えました。総会資料に「コンサル導入した大規模改修」を議案に挙げておいて、K氏が何も言ってこないとは、とても思えません。

荒れる総会はK氏 vs T氏のときに1回経験しただけですが、わたしは金輪際勘弁してほしいという気持ちでした。
「出てきますかね?」
「出てくるでしょうねえ……」

「いろいろ、言うでしょうねえ……」

総会に出てきて一席ぶたれたら、頭がよく(時間的に)根回しも十分にできるK氏に太刀打ちできるわけがありません。
「このマンションでは今までK氏にお世話になった人も多いし、やり方に賛否はあっても、マンションのことをいろいろ先頭に立ってやってくださったのはすごいことですよね。それを労うってのはどうでしょう」

「たとえば、これまでのことにみんなでお礼を言って、拍手や花束をあげるとか」
K氏との全面対決を避けられるのであれば、どんな手段でもいい。
ヨイショすれば、K氏だってちょっとは態度を軟化させるかも、という変な期待も込めて。
「それで、今後のことは黙っててもらうとか、できませんかねw」
半ばヤケクソでした。

「それはひとつ、手かもしれないですね」
副理事のM氏がすこし間をおいて言いました。教養深いM氏は転居してくると、K氏とマンションの互いの部屋を行き来するほど、急速に親しくなっていました。

断っておきますがK氏もまた、教養人であったことは間違いありません。だからM氏とK氏は何かと話題が合ったのだと思います。M氏本人もそうしたことを話してくれたことがあります。

「でも、いち区分所有者にそんなことするのは、やっぱり何か、変でしょうか」

何かしたほうがよいのか。何もしないほうがよいのか。

堂々巡りするばかりで全然、作戦はまとまりません。
この日はとにかく総会資料を配布して、相手の出方をうかがって、それからもう一度考えようか、ということになりました。

4月に入って総会資料が配られました。

そこからしばらくは、もう息が詰まるような時間でした。
いつ理事長I氏や副理事のM氏から電話がかかってくるか。あるいはK氏がマンションに怒鳴り込んでくるんじゃないか。
何をしていても突然、降ってわいたように気持ちがざわつき、不安が立ち昇ってきました。

ほどなく、待ち望んだK氏からの総会出欠票が届きました。

出欠欄は“欠席”にマル。

そしてコメントとして「みんなでよく考えて大規模改修を進めてください」といったことが書かれていました。
コンサル導入議案については、決然と「反対」に〇がつけられていました。

K氏は欠席で反対ー。

これを知った時、理事会の、大規模修繕委員会の、メンバーの誰もが肩透かしを食らったような、これでよかったような、でもK氏が総会に来ないということに何だかほっとしたような、全然、安心感のない安堵感(?)に包まれました。奇妙な表現ですが、何かは回避されたけれど大きく何かは残った、という感じでしょうか。

そして2017年4月23日。

通常総会は予定通り開催され、コンサルを導入する議案が諮られる時が来ました。
区分所有者の一人、ニカイドウさんが、反対の意見を表明しました。
「コンサルタントって、何百万もするんでしょ。それだけあったら別の工事、できますよね。わたしはコンサルには反対です」

用事があるのでこれで、とニカイドウさんは言いたいことだけ言うと、さっさと席を立ちました。反対に一票、と言い残して。

K氏、ニカイドウさん、このほか何票かの反対はありましたが、最終的にコンサルを導入して大規模改修をすすめる議案は、この総会で可決されたのでした。

2017年度の、あたらしい理事会が立ち上がりました。
2016年度の理事長だったI氏は「監事」という、理事会のオブザーバーになりました。
わたしのマンションでは、理事長を務めた人が、翌年の監事になるというのが習わしです。

監事になったI氏にK氏は接近し、I氏はじわじわと態度を変化させ始めます。



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