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大規模改修を、白紙に戻して考え直そう

2017年1月21日ー。
NPO法人 京都マンション管理ネットワークの会合は、河原町五条を下がった、ひと・まち交流館というちょっぴり寂しい感じの施設で開催されました。

ミーティングが行われる部屋に入り、受付を済ませました。優しそうな笑顔の、70代前半くらいのニシカワさんという男性が、わたしの参加を喜んで迎えてくれました。
どうぞどうぞと着席を促されましたが、スクリーンに向かってコの字型に並べられた長机は、もうすでに多くの席が埋まっていました。そして座っているのは、一様に男性・男性・男性。

どの顔もなんだか不機嫌そうに見えました。
なんとなく近寄るのが怖くて、わたしは誰の隣にもならなさそうな席を選んで、こそこそと腰を下ろしました。

2017年最初の会合ということもあってか、まず挨拶に立ったのはサトウさんと仰る、このNPOの理事長でした。優しく柔和な雰囲気、物腰の柔らかい方で、緊張がすこし解けた気がしました。
これはずいぶん後になって知ったのですが、この穏やかでホトケのようなサトウさん、実は大手建築会社の関西支店長も務めたという、凄腕建築業界人でした。

そうそう、少し話が逸れますが、イニシャルトークが混乱してきたので、これからの登場人物は仮名で表現したいと思います。

サトウさんの挨拶に続き、本題の「大規模修繕工事の進め方」についてお話しくださった方こそ、後にわたしのマンションの設計監理を担当してくれることになる、建築家のヤマダさんでした。

ヤマダさんは用意した資料をプロジェクターに映しつつ、大規模修繕工事の進め方をプロセスに沿って説明しました。
この時初めてわたしは「大規模“改修”工事」ではなく、業界的(?)には「大規模修繕工事」という、ということも知りました。

この日のヤマダさんの話の中には、うちの管理会社が昨年秋に示したのと同様、大規模修繕工事の進め方のパターンの話がありました。すなわち、
・管理会社主導方式
・(設計監理)コンサルタント方式
です。
この日はこれに加えて「管理組合自主管理方式」や「施工業者主導方式」も紹介してくれました。
ただ「管理組合自主管理方式」は修繕委員に専門家がいる場合可能、ということでウチは無理。
「施工業者主導方式」は区分所有者の知り合いの施工業者を指名する方式で、工事が割高になる可能性もあるという話でした。
いずれも狭義の“御所西”や“御所南”と呼ばれるエリアに建つ超絶高級マンションなら、こういう方法も考えられるのかもしれません(憶測です)。
が、ウチではハナから論外の方法でした。

そうなると、やはり選ぶべきは「管理会社主導方式」か「設計監理コンサルタント方式」か。

ヤマダさんの話が「(設計監理)コンサルタントがなぜ必要か」という段になりました。すべてを挙げるととても長くなるのですが、要するにこんなことでした。
・住民に不足している建築技術や専門知識を補い、施工業者の言いなりにならなくて済む
・うちのように管理会社の背後に施工業者(大手建築会社)が控えている場合は、特に工事計画を提案する側と施工業者が利益相反の関係となる。こうした事態を防ぐ。
・工法や工事費の適切な評価が得られる。

などなど…。

メリットは山のようにありました。話を聞き終わるころには私はかなりぐらぐらしていました。
今日、この会にわたしが参加したのは、どこか管理会社主導の進め方で割り切りたい、という気持ちがありました。K氏とも全然、やり合いたくないし。
でもこうした話を聞いてしまうと、もうぐらぐら揺れて、大変でした。

「あの……、」
わたしは挙手しました。
「どうぞ」
サトウさんが指名してくれました。
「これから大規模修繕工事をやるのですが、わたし、修繕委員長なんですけど、管理会社の背後にデベロッパーもいて、どうやればいいのか困っているんです。主(ヌシ)みたいな人もいて、とてもその人が黙って見ているとも思えなくて…」
何のまとまりもなく言い終えると、参加者の一人の方が言ってくれました。
「コンサル、入れたほうがいいですよ。うちも去年終えたけど、コンサル入れましたよ」
「でもうち、30戸もない小さいマンションで、そんなに予算もないんです。さっきのヤマダさんの話だと、コンサルに何百万もかかるみたいですし、とてもそれは……」
「そんなにかからないですよ、大丈夫」みたいなやりとりをその男性としているところにサトウさんから尋ねられました。
「真行さん(しつこいけど本名違うよ)のところのマンションは、何戸あるの?」
わたしが正直に戸数を伝えると、
「そうですか……。だったら〇(万)か△(万)か。そのくらいでできると思いますけれどねえ」
サトウさんは資料とにらめっこしながら、だいたいの価格を言ってくれました(注:三桁です)。
「………そろそろ30年を超えますし、早く取りかからなくちゃいけないのですが、管理会社のフロントは頼りないし…」
わたしはサトウさんの回答に全くかみ合わない返事をしていました。

帰り際、この日のお礼をサトウさんと、受付をしてくれたニシカワさんに言いました(ヤマダさんは別アポでプレゼンが終わるといなくなっちゃった)。
「わたし、どうしたらいいですかね。。。」
困り顔でぽつんと言うと、ニシカワさんが人の好さげな目をパッと見開いて「大丈夫、やり遂げると思った人がやり遂げるんです!」
と言ってくれました。
人の顔をさっぱり覚えられないわたしですが、このときのニシカワさんの目の光に、間違いなく暗示にかけられたと今でも思っています。

やり遂げると思った人が、やり遂げるー

次の理事会と大規模修繕専門委員会で何をみんなに報告するか、私は少しずつ腹の中で練り上げていきました。

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