【最終話】クーデター・・・!
いろいろなことがうまく行き始めたところだったのに、もう一つ、難関がありました。
それはいよいよ始められるであろう年度の、大規模修繕実施年の理事会のことでした。
わたし、あの人とだけはやりたくないです。
きっぱりとそだいう言ったのは、次期役員(うちのマンションは基本輪番)予定の方でした。
その方が“あの人”と言うのは、私がこれまでこの連載で蔑み続けた、綽名をつけることすら疎ましく思う、ジコチューな区分所有者のことでした。
「あの人とだけやりたくない」という方にはわたしも激しく同意でしたし、わたし自身もこの自分のプロジェクトを奴に邪魔されるのはまっぴらごめんでした。
2018年2月ー。
マンションのロビーには、毎年と変わらぬ告知が掲出されました。
曰く、
“次期の役員について、立候補を受け付けます云々…”
このマンションが建って約30年、おそらくこの“立候補”を行使した区分所有者はいないのではないでしょうか。
わたしはそこをきっちりと狙い定め、例の「嫌な奴」が肝心要の年に理事会入りするのを阻止しました。
誰もがやらない立候補という手段で理事会に地位を得たわたしは、さらにみずから志願して理事長に就任しました。
これは自分のプロジェクトだという一念を、こうして押し通したわけです。
副理事にはK氏の聡明なご子息、会計には「嫌な奴」と理事会をやりたくないと言ってくれた方にお願いしました。
足掛け3年。
漸く、わたしの思い描く大規模修繕が音を立てて進み始めました。
2019年春の定例総会でコンサル導入とその予算は承認されました。
NPO法人への支払いもようやく成立し(ここまでよくぞ待ってくださったと感謝しかないです)、後顧の憂いなく大規模修繕に漕ぎ出すことができました。
長く苦しい戦いでしたが、あの2019年1月28日以来、K氏とわたしが顔を合わせることは今日までありません。
2020年1月23日ー。
工事業者と大規模改修の竣工図書を交わして、今日でほぼきっちり1年経ちます。
わがマンションの大規模改修が竣工したのは2020年1月下旬、新型コロナウィルスが世間を騒がし始めるつい直前のことでした。
このように世の中の機能が不全に陥る前にすべてを完了できたことは実に神の采配と思わざるを得ません。わたし(たち)はある種、大いなる手に守られていたようにも感じます。
もしあと少し決断が遅ければ、今日の大規模修繕は、もっとずれ込んでしまい、新型コロナウィルの影響で、さらに期間が延び、余計な費用が掛かるとともに、状況も混乱していたと思います。
わたしは、私の決断力と意思を最大限に評価します。なんの衒いもなく。
ただ、この大規模改修が完了し、わたしもまたさまざまな教訓を得ました。
それが何かと言われると、「辛かった」としか言えないのですが、それでも何かを「経営する」ために必要な手腕がどんなものかを知ることができたように思うのです。
マンション理事会だって、十分に「経営」です。
それにわずか足掛けとはいえ3年以上付き合えたことは、わたしの人生でかなり大きな実りをもたらしてくれたと感じています。
最後に。
それでもやはり、疲れることには変わりないんです。
次に住まいを買うなら、やはりもうマンションはこりごりと思っています。
でも、マンションを選ばざるを得ず、それでも自分の住まいをよくするためにはやれることをやりたいと思う方がいるならば、わたしは全力で応援したいと思っています。
昨年から書き続けてきたマンション大規模改修に関する連載は、今回にて終了いたします。
ずっと読み続けてきてくださった皆様、本当にありがとうございます。
わたしは元気で、
あいかわらずそのマンションに住み続けています。