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【連載9】結婚したくてしょーがない20代女から、大恋愛を経て、結婚なんてどーでもいい30代女になったはなし

彼とは完全に別れて、新しいほうと付き合うことになった。

新しいほうとは体の相性がとにかくよかった。話しながら並んで歩いているだけで下半身が反応してしまうことはたびたびあった。彼も同じだった。どんなにその気がなくても、彼に抱きしめられるとその気になって、サルのように寝た。彼は私の体をよく褒めた。筋肉質なのがエロい。くびれがいい。肌質がいい。でも、下半身をもっと鍛えたらもっと俺好み。そう言った。

彼はやたらテクニシャンで、いろんなプレイをして私を満足させてくれた。さらに、肌は吸い付くし、キスしたら甘いし、体の相性は抜群だった。気持ちよすぎた。ずっと抱えていた性的な不満は完全に満たされた。この人としているとき、この世界に二人だけになったような感覚が、いつもあった。

性格も合った。話しているととても楽しかったし、とにかくしっくり来た。でも、私は彼の性格というか魂というか、彼という存在そのものが好きだけど、彼は私を体の相性がいい女、と思ってる気がした。私と別に存在する「俺の理想のカラダ」に近い女、と思われているような気が、していた。仮に私がいなくてなっても別の女でその穴を埋めるだろうな、となんとなく思った。

そもそも新しい彼は私と付き合うまで、女をそういう風にしか見ていなかった。今までの女性歴も2週間とか1ヵ月とか短くて数ばかり多かった。話を聞いてると彼女じゃなくてセフレの話をしてるように聞こえた。本人はそのつもりじゃないらしいし浮気もしないが、女を「気持ちのいい行為をするための所有物」くらいに思っているところは確かにあった。

しかも、私が言うのもなんだが、彼は女を見る目がなかった。彼はやたら時間の短い歴代彼女たちを「顔がよくて横に連れて歩くと誇らしかった」「反応が良く体の相性が良かった」と評した。全然性格を見てなかったし、彼女に騙されたとか実は結婚していたとか結婚直前の思い出作りに一回寝たとかクズみたいなエピソードがわんさかあった。ある時ふたりでいた時、すれ違った女性がいかにもメンヘラでヤバいオーラを醸し出してかなり気持ちが悪かったのだが、「さっきの子可愛かった」などと興奮していて耳を疑った。こんな人が、美人でもない普通の真面目な私をなぜ選んだのか、中身を見てくれているのかかなり謎で、なんだかうんざりした。体も性格も合うけと、徹底的に価値観が合わなかった。

また、短気でつまらぬことでよく怒り、喧嘩も多かった。元恋人といたときのような穏やかな安心感は、まったくなかった。性格が似たところがあって、お互いの嫌な部分が目について責め合った。もう別れる!と私が怒って1週間没交渉、なんてことはザラだった。私が彼との付き合いに踏み出せなかった理由の一つに、この状況を予想していたというのも、たぶんあった。

あるとき喧嘩して、泣きながら夜道を歩いていた。自分が嫌いで、みじめでしょうがなかった。安らぎが欲しかった。安心したかった。たまたま、たまたまなんだけど、この道を曲がれば元恋人が仕事から帰る道かも…と思いながら道を曲がった。…彼はいた。

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