捨てられない
昔から何かを捨てるのが苦手だった。
綺麗なビー玉、すべすべの石、あの子がくれた手紙、海で拾った貝殻
「愛着」を感じてしまうと、何も捨てられなくなるタイプの人間だ。
もういらないのはわかっているのに手放せない。幼い私の宝箱の内圧はとんでも無い事になっていて、蝶番が爆発しそうだった。中身も、全部ごちゃまぜで、よく母から「そんなガラクタ捨ててしまいなさい」と言われたものだった。
そんなのを、気持ちにまで引きずってしまうとは。
人に対する色んな感情を、全部全部捨てられない。思い出を、全部捨てられない。切れない。大事にしまっておいてしまう。
誰にでも綺麗なところがあって、捨てられない。だって愛着があるんだから。
取り出して愛でてしまう。どんどん捨てられなくなるのがわかっているのに。
そんな私の心の中身はいろんな気持ちを収めるためにつぶしてグチャグチャになっていて、
蝶番が外れそうな私の方が、捨てられるガラクタになっていた。
私もキレイな箱になりたかった。ビー玉を捨てないと、新しく入れた宝石も石ころみたいに見えてしまう。
綺麗なものだけ、綺麗に並べた、そんな大切な箱になりたかった。
どうしたら愛着を捨てられるのだろう。
こんな自分にすら愛着を感じてしまっている自分には無理な話なのか。