あなたにできることはないってさ
ちょうど一年前に長い文章を書き残した。
今読むとなかなかいたたまれないと感じる。
となると一年という時間で心境の変化や消化した出来事も少なからずあるのだろうか。
実感はない。
新たな音楽に出会い、触れてこなかったジャンルへの抵抗感も薄まった。
新たな場所にお邪魔をし、日本には(世の中には)紆余曲折あれどこんなにも恵まれた環境を整えてもらえている音楽ファンもいるのかと、驚きもした。
そこで私自身も享受した多幸感は、何にも代えがたい。
でも、ずっと足りない。
いわゆる「推し」はもう作らないと決めている。
誰のことが好きなのかも、堂々と宣言するのもやめようと思っている。
それはそれで空虚だ。でも仕方ないと思う。
つい先日、毎週聴いているラジオ番組で流れてきた洋楽に激しく心が躍った。
何度も耳にしたくなる曲に出会うのは、最近では珍しいことで自分でも嬉しくなった。
やっぱり、ながらではなく、きちんと耳を傾けることに注力できる時間は豊かだと思う。
曲名とアーティスト(グループ)の名前を調べたら、動画サイトでヒットした。
他の曲もアップされていたので聴いてみたら、自分の好みに合った音色や曲調で溢れていた。
興奮気味にそのグループのことを調べてみた。
一年前まで応援していた人がいちばん影響を受けた人がメンバーだった。
心底ちくしょうと思った。
血は争えないなと思った。
諦念の中に喜びも感じた。
アルバムを即買いし、一曲目からひっくり返った。だって、ずっとずっと好きで聴いてきたあの曲を彷彿とさせるんだもん。ねえ、こんな曲作りたいと思ってあのぶち上げチューン生んだんじゃないの?
そんな確かめようもない、でも妙な確信もあるような楽しい話を、普通にできていた頃の自分が羨ましい。