『イシバシハザマのもてなし~感謝のもてなしスペシャル at茅ヶ崎市民文化会館~
Supported by 稲岡ハウジング』
というタイトルのイベントが、2024年10月18日に開催された。
昨年10月に開局をしたコミュニティFM「茅ヶ崎FM」と、BSよしもとがタッグを組み両局で放送されている番組、『イシバシハザマのもてなし』発のお笑いライブである。
イシバシハザマは芸歴23年目のコンビである。『エンタの神様』や『爆笑レッドカーペット』等、2000年代に話題となった番組に出演、リズムネタを軸にした漫才で注目を集めたそうだ。
当時の私は就職をして数年が経過した頃で、自分の身の丈にそぐわぬ仕事に焦りながらも、余裕でやってます風情を出すのに精一杯になっていた。そのため視野が狭くなったのだろうか、観ていたはずのテレビ番組や目にしていたはずの文化、流行に関する記憶が抜け落ちてしまっている。
なので、イシバシハザマのボケ担当である、石橋尊久(たかひさ)さんの声を初めて認識できたのは、1年前に茅ヶ崎FMの番組を聴いたときだった。
石橋さんは、湘南地区である神奈川県茅ヶ崎市に移住されて7年目になるそうだ。根っからの茅ヶ崎市民のような雰囲気を感じるほど、空気感が緩やかなこのまちに馴染んでいらっしゃると思う。
そして、茅ヶ崎FMにて毎週木曜日夕方5時からの2時間、『イシバシハザマ石橋のエボラジ5UP(ファイブアップ)』にてパーソナリティをなさっている。
石橋さんの、どんな事象も頭ごなしに否定せず、温かな目線で笑いに変えていくコメントが好きだ。
柔らかな口調そのものからも温度を感じられ、受け答えからは相手へのリスペクトや気遣いが伝わる。
誠実さと優しさに、ちょっぴりほろ苦さを混ぜてお話しされる石橋さん、というイメージが私の中で膨らんでいった。
イベント開始10分前。
オープニングアクトとして、もしもし☆コールミーテレフォンのおふたりが登場した。
素敵な笑顔と衣装と明るい声で、ステージを一気に華やかにする。さるちゃんさんは30歳、つばささんは自称・茅ヶ崎でいちばん元気な42歳。私と同い年だ。ダンサーや振付師としてのキャリアを積んだ後に吉本興業の養成所に入り、現在芸歴2年目だそうだ。
敷かれたレールならば走れます、だけが持ち味で人生の選択をしてきた自分にとって、つばささんのバイタリティは憧れでしかない。
活き活き且つ堂々と、前説から中説、後説まで盛り上げてくださったおふたりのネタを、いつの日か拝見したい。
本編に突入し、イシバシハザマのおふたりによる「もてなし」が幕を開けた。
最初に招かれたゲストは、ピースの又吉直樹さんだった。ハザマ陽平さんのMCは、舞台を広く使っての軽快な動きにも惹き付けられ、急速に会場の温度が上昇していくのを感じた。 御三方のトークの内容は濃く、とても興味深く拝聴した。
かつてイシバシハザマとピース、ハイキングウォーキング、平成ノブシコブシで組んでいたコントユニット「ラ・ゴリスターズ」の話題では、当時の各メンバーとの関係性を深く語ってくださった。石橋さんとハザマさんとでも、年齢差によるところでユニット内での立ち位置が変わるものなのだな、と脳内で皆さんの心境を疑似体験した。
ハザマさんに降りかかった大ハプニングが、このトーク内でのハイライトだったかもしれない。慌てるハザマさんを囲み、わいわいとツッコみながら更にハザマさんを追い込む又吉さんと石橋さん。会場に大きな笑い声が響き続け、今回のイベントにおける伝説のシーンが生まれた瞬間だった。
ゆにばーすの、攻めたボケをふんだんに取り入れた漫才も、無意味な韻を踏みまくりながらラップバトルをするジョイマンのコントも、笑い疲れるほどに最高だった。ふた組を交えて繰り広げられた、ネガティブ体験を最上級のネタに仕立て上げたトークも夢中で聴いた。
秒単位でステージから新しい笑いが放たれるので、数分前に何で爆笑したのかを思い出せないくらいだ。めちゃめちゃ楽しかった時ほど記憶が飛んでしまうなんて経験、初めてに近いかもしれない。
ひとつはっきりと覚えているのは、一瞬で大勢の見知らぬ人達をハッピーな気持ちにしてしまう芸人さん方は、凄まじきプロフェッショナルだ!!と尊敬の念で心が熱くなったことだ。
辛さや悲しみを胸に抱えている時もきっとおありかとお察しするが、そんなことを感じさせずに世の中の沢山の人を救ってこられたのだろう。私自身、あの数時間は日々頭にこびりついて離れないはずの悩みやら心配やら苛立ちやらが、地球外に飛んで行っていた。
子どもの頃からお笑いは好きだったが詳しくはなかったので、「お笑いライブ」は私の中で敷居が高く感じられていた。
んーにゃ、生のお笑いは迫力がすごいよ。
音楽をライブで体感したときの高揚感と似てるよ。
演者の方々の一瞬一瞬のエネルギーや、そこに宿る魂をビンビンに受け取った気がしたもの。
客席とステージの境界がなくなったと錯覚するほどアットホームな雰囲気に、多幸感で一杯になった。
イベントの終盤、スクリーンが降りてきた。
イシバシハザマのデビュー曲、“ふざけろよ”のミュージックビデオが初公開された。
音楽は既に茅ヶ崎FMの番組で拝聴していた。
だが、歌詞を石橋さんとハザマさんが担当されたということは、この日初めて知った。
おふたりの直筆なのだろうか、手書きの歌詞字幕を見つめながら、茅ヶ崎FM、愛称「エボラジ」のブースでマイクを握り熱唱するシーンを目に焼き付けていた。
MVの上映が終わり、「イシバシハザマ」の文字だけがスクリーンに映し出された。
一本のスタンドマイクの前に、スーツに身を包んだおふたりが並んだ。
その姿を目にした瞬間、瞼が涙を受け止め切れなくなる寸前になっていた。誰目線だよ、と恥ずかしくなりながら何とか堪えた。
歌詞に込められたおふたりの想いと、日頃密かに抱いている、こんなもんだと思いたくない、という自分自身への抗いがリンクしてしまったのだと思う。
でもこの歌は、そんな42歳のやさぐれおばさんにも、小さくても光は眩しいものだよと励ましてくれている、いや、勝手にそう思わせて頂いている。
現在、私の脳内再生回数ナンバーワンである。
イシバシハザマの漫才を、世の中の人よりも何周も遅くなったがようやく拝見できた。
漫才師のスイッチがあるのだろうか、主戦場に立ったと言わんばかりのおふたりは、これまでの時間からまた一段ギアを上げたような、凛とした表情をされていた。
ラジオでは物腰柔らかな石橋さんとはまた別の魅力を知ることができて嬉しかったし、とても素敵だった。
終わってほしくないと切なくなりながら爆笑し続けるという、最高に贅沢な『もてなし』を受けさせて頂いた。
10代の頃の、箸が落ちただけで笑い転げてしまうような、あの豊かだった感受性を取り返すことができた2時間に、心から感謝申し上げます。
未来の自分へ差し出したい、大きなお守りを頂いたような気持ちになりました。
第2弾は春に開催予定とのこと。
またお会いできますように。
そして、イシバシハザマの漫才が、電波を通じて益々多くの人を幸せにしますように。
それを観たら、誰目線だよとツッコミながら、また涙堪えるんだろうな。
石橋さんのお声を、今後とも末永く茅ヶ崎FMでお聴かせ頂けるけたら幸せだ。
茅ヶ崎の夕方を明るく照らしてくださって、いつもありがとうございます。
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