木曜ミステリー「遺留捜査」最終回の余韻が抜けないから、その感覚だけ残しておきたくて(勝手な感想)
死というのは突然訪れるもので。
いやそれは別に重い意味で捉えてほしい「死」では決してなく、気持ちが昂ったその瞬間の、「語彙力が果てた」そのような気持ちを指す「死」である。オタクなら誰もが通る道だと私は思っているため、各々解釈いただければ幸いだ。
そんな話は片隅にでも追いやるべきとして。
私は、さすがにTwitterで全て吐ききるのはうるさいと思いここに移動してきたとてつもなく大きな感情を抱いて路頭に迷っている輩である。ふらふらと、千鳥足で大地に足がついていると感じる隙間もなくひたすらに歩き続ける「変なやつ」である。
なお、特段嫌な事があってお酒で忘れようとし、大失敗した後ではない。まず、私はお酒が飲めない。
遺留捜査の、最終回をこの目で見届けた後だからである。
遺留捜査の説明というのは、私の拙い文章では魅力が0.01%も伝わらないだろうから割愛するが、長くファンとして追い続けたこの作品の、いや何度も何度もお世話になった「木曜ミステリー」枠のラスト。
最終章の開幕から恐ろしいほどの涙で心臓をこれでもかと叩き続けた物語が存在した「木曜夜8時、テレビ朝日系列にいけば私の好きが待っている」その時間帯の終幕を見届けた。
まあ、見事なまでに灰と化している。
さらさらー。
風に乗って私の体は消え去っているよ。
遺留品が導く真相。
いい意味で刑事らしくなく、かといって破天荒というわけではない。チームのメンバーとしてははた迷惑なのだろうが、見る側としてはその丸みを帯びた、しかし芯の通った優しい声、表情、ゆらゆらと漂うマイペースなところに無性に惹かれる主人公。
最初はもちろん「変な人」というイメージでしかなかったのだが(本当にすみません)、段々と愛おしい存在へと変わっていった。
そんな彼が見せてくれたあまりにも美しい純粋さに浸った真剣で、炎がちらりとのぞく鋭い声と表情に、思わずどきりとした。
これが、恋?
いやそういう表現はこの真面目に語りたい場では削ぎ落とすとして。
遺留品に向き合う真剣な眼差しというものを忘れた事はないが、あの人へ向けて発したとある言葉には普段の丸く優しさを帯びたあたたかい声とは打って変わり、鋭く刑事らしさののぞく声が乗っていた。しかもそこには声だけでなく熱が一直線に通う視線もあった。「おいおいどうした!?」という驚きは恐らく、いつも優しく諭されているような気分になる柔らかな声とは打って変わった感情の高まりが表に出た瞬間の、慣れない顔つきに対する戸惑いもあるのかもしれない。
いやまあもちろん、正直に言えば、
さすがにびっくり。非常にいい意味で。
しかしそれが、「刑事として真摯に命と向き合う」姿を表現した声なのだろうと、勝手ながら考えている。
あまりにも綺麗で、丁寧で、熱くて。
自分の体がどんどんその言葉にこもった熱でほてっていくのがわかる。涙が、心を伝い目の奥へと込み上げてくる感覚がある。
所詮作り物だと言われればそうかもしれない。
反論するには認知している言葉が足りない。
それでも、わたしは、
彼の発した「本物の感情」が体中に染み渡っていくのを感じた。
だから事件の真相が紐解かれていく中で、心の中が複雑怪奇になっていく様を目撃しながら1人引かれるほど泣き叫んでいたのだと思う。
優しくて、いつだって一生懸命で。
紡ぐ真っ直ぐな言葉が胸を刺す。
1人突っ走る事も多く呆れられる姿というのは散々見てきたが、それでも、最後のメッセージに全員が集まったのは、彼の一生懸命さが拾ってきたあたたかく切なくて、それでも前に進むためには必要な言葉を耳にしたいという願いも少しばかりあったのかもしれない。
いや、あって(願望がうるさい)。
ただ、あの言葉のあとに続くほわっとした余韻にかぶさるように「今は」と曲が流れ始めたのはずるい。さすがに、いや、まあ慣れているとはいえ!それは!ずるい!
余韻が、曲の中に潜む言葉によってふわーっと広がる。それがまた、自分の中にある感情から名前を奪っていく。あぁ〜〜奪わないでくれ〜〜。ただでさえ私には語彙力がないというのに〜〜!
一息。
表情というのは、声というのは、思いというのは、生で見るものに勝るものは存在しないとは思う。舞台も、配信で見る以上に生で見る感動と言ったら毎度鳥肌が止まらないほどだ。
だが、遺留捜査の恐ろしいところは、感情が画面を超えて出現し、ダイレクトに私を殴り続けるところだ。しかも、瀕死状態にまで殴ったとして、去ってはくれない。
氷室さんがこぼした(恐らく、という注釈付き)神崎さんへの伝えられず空は放たれた淡い恋心も。岩瀬さんの、婚約者さん、そしてその娘さんへ向けた思いも。葉月さんからあの人へ向けたメッセージも。土竜が残した真実も。そして、神崎さんから滲む後悔と、事件解決の報告に込めた言葉も。
全てがずっととどまっている。
宙を浮いているわけではなく、心の中に重石のような存在として居座っている。
いやそれはむしろ幻覚で、そこにはただ穴があいているだけかもしれない。全てが通り過ぎる穴を、私は重石と勘違いしているようだ。
いつも通り、という言い方には語弊があるかもしれないが、やはり遺留捜査だ。真実はとんでもなく重く、切なく、苦しかった。
これは、しばらく囚われ続けそうだ。
ただ、私がどん底までは見ず、こんなにも長々とした文章で気持ちの整理をつけられている理由は圧倒的に「科捜研シーン」のおかげだ。
本当に、本当にありがとうございます。。
未公開シーンまで楽しみました。
噛み締めました。
最高でした。
村木さんは、糸村さんにああ言われて本当に嬉しかったんだろうなという、個人的な解釈。
そして笑ってはいけないがその不運は……お疲れ様です。。
変わらない関係性、増えた関係性。
それでも変わらない空気感。
救いです。
あれがなかったら今頃どんな顔をしていただろう。
あの予想の遥か上をいく真実は、
相当心を抉られた。
「嘘でしょ?」そんな私が吐き出すと普段から口にしすぎているせいか陳腐すぎる言葉では足りないほど苦しみの深い真実。
そこに付随する衝撃的な真実。
(さすがに驚きのあまり変な声が出た)
苦しみの中を彷徨い続け、熱に溺れている中で見えたあたたかな光。
最後の3分。
真摯な眼差しからこぼれた言葉。
変わらずあたたかくて、優しくて、丸くて、蹴落とされた私の心が戻ってきたのを感じた。
ネタバレじゃあ!と思って書こうとしたのだが、ただでさえこの文字数だというのにそれを加えるととんでもない量となってしまう。
困った。
割愛!
ただ、割愛するとはいえ最後に少しばかりのネタバレ含む考察というか。個人の感想であり考察のため「これが正しい!」と発言するつもりは全くないし、それを意図する発言ではない。
正解か誤りかというのははっきりと分からない。
ただの、独り言として「本編を見た後で」見ていただければと思う。
風船の音。
風船の音に耳を塞ぎ、ナイフを取り出した1人の男。
安全が保障された場所ではない、死と隣り合わせの環境に身を投じた1人の少年。
「土竜からのプレゼント」。
病死したと伝えられた仲間。
蓋を開けてみると、それはフェイク。
背中を撃たれ、即死。
風船が割れる音。
それは、恐ろしくしかしねじ伏せられた真実の光景に残された「銃声」と似ているのではないだろうか。
パンッ、と弾ける音は何気ない音に聞こえるかもしれない。しかしそれは、彼にとって「ねじ伏せられた真実がよみがえる引き金の音」であり、「恐ろしい光景がよみがえる引き金の音」でもあったのだろう。
許されるべきではない罪を背負う1人の男。
一言も発する事なく、表情だけで語るその様は見事で、思わず体が震え上がった。
まるで、
風船の音をきっかけとしてナイフを振り回す彼の眼前に足が動かず立っているような。
目に見えるものだけが、
真実とは限らない。
だが、もちろん彼の行動は、
許されるべきではない行為だ。
ただし、「裁かれるべき対象」という重みを1人に背負わせるべきではない背景。
そこだけはすくいとり、その表情をじっくりと噛み締めなければならないだろう。
真実というのはひとつであって複数存在しているが、その表情は様々だからひとつひとつ丁寧に拾っていかなければならないのかもしれない。
だから、嘘と真実を区別するのは難しいのかもしれない。そんな個人的感想。
23年という長い歴史の中で、私がお世話になったのはほんのひとにぎりの時間かもしれませんが、
木曜夜8時のミステリー枠、大変お世話になりました。本当に、ありがとうございます。
ミステリーと出会えて、
遺留捜査という作品に出会えて、
良かったです。