Log of STELLA ①

ジョン:♂

アル:不問

ベン:不問

ヴィオラ:不問


第1話

(外、ざわついている)
(ジョン、ゆったりと朝刊の新聞を読んでいる)

ジョン: ...騒がしいな

(ドアを蹴破るように帰ってくるアル)

アル:号外だ!大変だァ!

ジョン: ...騒がしいな

アル:ねえ!ジョン!号外だよ!!ねえねえ!大変だよ!!

ジョン:騒がしいな本当に!!何があったんだ

アル:ほらみて!!これ!!えっと何人目だっけ...とにかく!急遽!今日この後!王子が処刑されるんだって!!!

ジョン:そうか

アル:えっ!?無反応!?

ジョン:俺らには関係無いだろう

アル:ええー...本当にそうかなあ...?

ジョン: ...逆に何故そう感じるんだ

アル:最近、そこかしこに"王宮魔術師"のニオイが転がってるんだよねえ...

ジョン:っ!?何故それを今まで言わなかった!?

(ジョン、バン!と音を立てて立ち上がる)

アル:わっびっくりした!!いやーもう気づいてるかなと思って

ジョン:馬鹿か、俺はもうしばらく外に出ていないんだぞ

アル:ああ!それもそうだった!

ジョン:突然現れ、若くしてその地位を獲た王宮魔術師...まあかなり芳ばしい奴だとは思っていたが。

アル:そうだねー、王室が喰われるのも時間の問題だと思う。名前が公開されていないのも気になるしね。

ジョン:まあ、本当は関わりたくもないが...たまには動かないとな。あと、同じステータスを持つものとして扱われるのは、気分が悪い。

(ジョン、椅子から立ち上がり準備をし出す)

アル:あれぇ?君ってそんなに自分の立ち位置に誇りを持ってたんだ!!既にホコリを被ってるもんだと思ってたよ。「誇り」だけに!プププ!

ジョン:ああ、これが「ウザイ」って気持ちなのかな。若者言葉ってのは難しいね。

アル:もう!そんな年寄りみたいなこと言わないでよ!

ジョン:お前の若者かぶれも大概にしろ、ほら、行くぞ

アル:いっやぁ~、すごい広いね、どデカいね!!

ジョン:そりゃそうだろう。しかし警備も随分ザルになったもんだ。簡単に壁抜けできてしまった。

アル:さぁ!これからどうするんだい!?聞き耳を立てる?話を掻き混ぜる?なんでもやるよ!久しぶりだからワクワクしちゃう!!

ジョン:そうだな、それでは全部やってもらおう。
お前は王宮内で手当たり次第に情報を得ろ。ついでに王宮魔術師の話もな。その間に俺はその王子様に会ってくる。

アル:あいあいさー!念の為コールガラスは割っておくね!

ジョン:頼む。集合場所は2時間後、処刑台の前だ。それじゃあな。

アル:うん!!ばいばーい!!


ベン: ...(牢の窓をぼんやり眺めている)

ジョン:ここか、...ひどい匂いがするな

(ベン、ジョンの存在に気づかず、静かに歌い出す)

ベン: ...かがやくほしに、こころのゆめを

ジョン:っ...!

(牢の前で立ち止まり、歌うベンを見ている)

ベン:いのれば、いつか、かなうでしょう

ジョン: ...あなたが、王子か?

ベン: ...!!だ、誰だ!

ジョン:俺は、ジョンだ。そうだな...世間一般的には魔法使いという者だ。あなたの名前は...いや、これは不敬だったか、忘れてくれ。

ベン:無礼講で構わないよ。私は、ベンジャミン・ヴィドール。そう畏まらないでくれ、もう私は王子ではない。

ジョン:ありがとう。お言葉に甘えるよ。いくつか気になることがあって、見にきた。

ベン:見に来たって...まあ今になっては見世物みたいなものか。

ジョン:そんな事はどうでもいい。あなたは何故死ななければならない?

ベン:僕の独断だ。私が、そう志願した。

ジョン:志願?願ったところで、そう簡単に死なせはしないのが人間ではないのか?

ベン:じゃあ、私は人間では無いのかもしれないな。

ジョン:そうだな。あなたは人間ではない。

ベン:は...?じゃあ今さっきの言葉はなんだったのだ?

ジョン:何も俺はあなたが人間だとは一言も言っていない。

ベン:じゃあ私は、一体何なのだ?お父様もお母様も、私が5つの時、私と寝ている時に2人で息を引き取った。お腹にいた妹も、亡くなってしまった。歳を重ねるごとに、私の周りにいる人が、どんどん倒れて、死傷を負っていくのだぞ。この苦しみが分かるか。私は、悪魔の生まれ変わりなのだろう?周りを蝕み、食い殺すような悪魔であるに違いない。「ヴィオラ」もそう言っていた。だから、だから僕は、自ら死を望んだんだ。もう、人が死ぬのは、見たくない。

ジョン:そうか。あなたは、何も分かっていないんだな。

ベン:ああ、分からないよ、だからもう近づかないでくれ。もう誰も、傷つけたくないんだ。

ジョン:分かった。俺が傷つかなければいいのだな。

ベン:は...?いや、無茶言うなよ。僕はもう16年もこれなんだ。お前なんかが耐えられる訳がない。

ジョン: これは耐える、耐えないの問題じゃない。実際、俺に実害は一切ない。そして、あなたは悪魔なんかじゃない。言っておくが、悪魔に取り憑かれていたら、そんな純粋さは保てない。あなたの体の細さじゃあ完全に乗っ取られて12にはお陀仏だ。悪魔は、舐めない方がいい。

ベン:じゃあ、僕は一体何だと言うのだ、死ぬ前に教えてくれ、ジョン。

ジョン:そう、まさにその言葉を待っていた...生憎時間も無い、簡潔に言う。ベンジャミン、お前は生まれた時から、正真正銘の「魔法使い」だ。


アル:う〜ん、これも成果無し...っと

アル:あーあ!誰に聞いても口を揃えて「ヴィオラ様は素晴らしいお方だ!」なーんて。どうしてこうも若者は騙されやすいのかなぁ。

アル:結局分かったのは、名前が「ヴィオラ」ってくらいかあ...うーん、どうしよ...っと?

(異変に気づく)

アル:ん?空気が変わった...。ここ、やけに重たいニオイが強いな...。

(近くの部屋から話し声が聞こえる)

アル:あっここか...いや、すごいな、魔力の垂れ流しだぞ、こんな強さのは久々にみた。

アル:ちょっとお邪魔しますよ、っと...

(魔法で小さくなり、部屋の隅に入り込む)

(窓から外を眺めて何か呟いている)

ヴィオラ:ふふ、愉悦ですねぇ...こんなにもたくさんの人を一瞬であやつれるとは...。魔法も、捨てたものじゃない。

ヴィオラ:ああ、ジュエルというものは何故こんなにも私の心を掻き回すのでしょう...食べても食べてもまだ食べたい...やっと見つけた、私のフィアンセ...!

ヴィオラ:でも今日は食べるのはこれくらいにしておかないといけませんね...だって、今日の3時のおやつは「トクベツ」ですから...。

(窓から離れ、クルクルと嬉しそうに踊り始める)

ヴィオラ:ああ!あと1時間が待ち遠しい...!本当は今すぐにでも食べてしまいたいくらいですけれども...私かて馬鹿ではありませんからねぇ...。ふぅ。...おや?

(異変に気づき、部屋の匂いを嗅ぎ始める)

ヴィオラ: ...どうやら、ネズミが1匹、迷い込んでいるみたいですねぇ?

アル:!!!

(ヴィオラ、じろりとアルを見て、2人の目が合う)

ヴィオラ:あらあら、可愛らしいお客さんですね、迷子ですか?でしたら私が案内して差し上げましょう。

(ヴィオラ、アルに近づいていく)
(アル、焦ってネズミのフリ)

アル:ち、チュー!!

(箒で空を飛ぶ2人)

ジョン:ところで王子、あなたは魔法使いについて知っているのか?

ベン:いや、幼い頃に本で読んだくらいの知識しかないな。ただ、悪く言うような言葉ばかりで、あまり信じてはいなかった。

ジョン:ちなみにどんな?

ベン:魔法で巧みに人を操り、殺す。そして魔力の籠ったジュエルというものを喰らい、強くなる。長生きで、小賢しい、悪魔のような存在だと。

ジョン:ほう...ずいぶんと名誉を傷つけるような物言いだな。書いたやつは相当、魔法使いに恨みでもあるのだろうな。

ベン:でも、ヴィオラがそうじゃなかったから、僕は僕の心を信じる事が出来たんだ。

ジョン:その、ヴィオラというものについて、少し教えてはくれないだろうか?

ベン:ああ!ヴィオラは、とても凄いんだ。どんな人にも手を差し伸べ、助けてあげる。褒美にジュエルをやろうとしたが、「私は人からの施しものは受け取らない」と強く拒んだ。高貴だが、優しかった。王室のものは誰も教えてくれなかった僕の体質を、教えてくれたんだ。

ジョン:王子、いや、ベンと呼んでもよろしいか。

ベン:ああ、構わないよ。もう僕は王子ではなく、ただのベンジャミンだ。

ジョン:じゃあ、それもお言葉に甘えるよ。

ベン:へへ、友人が出来たみたいで嬉しいな。

ジョン:単刀直入に言わせてもらうが。ベン、お前は馬鹿なのか?

ベン:へ?

ジョン:何故そう簡単に人を信じる。悪いが、ヴィオラはお前が思っているほど良い奴じゃあないぞ。俺の主観だが。

ベン:うっ...まあ、それもそうかもしれん。僕は馬鹿だ。恥ずかしい話だが、僕は今まで、友人がいた事がないのだよ。

ジョン: それはつまり、周りが死んでいくから?

ベン:そうだな...いつしか、人と付き合うことも億劫になったから、しばらく人との交流を絶っていた。

ジョン:それはまた...酷だったろう。先程は言いすぎた。すまん。

ベン:いや、いいんだよ。本当のことだ。ヴィオラも...僕の自己決定をしやすくするための言葉だったのだろうし。

ジョン:それ、そこだよ。周りが伝えてくれなかったのは確かに良くないことだが。お前は、死ぬほどのことはしていないだろ。

ベン:どうして?僕は人を殺したのだぞ。

ジョン:さあどうか。周りは案外、お前が殺したとは考えてなかったみたいだけれども?

ベン:え....?

ジョン:お前の父母の死因は「老衰」。それは、不老不死でない限り抗えない死だ。お前の周りの人間が死んだのは...そうだな、お前の「魔力」に耐えられなかったのだろう。元々、人間は魔力をあまり持ち合わせていない。オーバーヒートしても無理はないだろう。

ベン:っやはり、僕のせいじゃな...

ジョン:(被せるように)いいや、違う。お前はこの歳まで、自分のことを知らなかった。お前は何も、悪くない。

(ジョン、ベンと向き合い、目を合わせる)

ジョン:もっと早く出会えていれば、こんな事も無かった、俺が導くことが出来れば...これは、平和だと思い込み、出逢うことを怠っていた俺たち魔法使いの責任でもあるんだ。だから、そう、自分のせいだと思うのはやめてくれないだろうか。

ベン: ...わかった、わかったよ。じゃあ、僕はこれからどうしたらいい?僕はこの後、3時に処刑される予定だ。その僕が居ないとなったら、国は、僕を探すだろう。君が...

ジョン:ベン。

ベン:な、なんだ?

ジョン:また回りくどくなってしまった...これは俺の悪い癖だ。あともう1つ、聞きたい事がある。

ベン:何だい。

ジョン:お前は、魔法使いを信じるか?

(広場にて、ヴィオラの声が響く)

ヴィオラ:皆様、よくぞお集まり頂きました。まずは、私、お初にお目にかかります、宮廷魔術師のヴィオラ、と申します。

(民衆の前でお辞儀、皆に語りかけるように)

ヴィオラ:本日は、我が国の若き第12王子、ベンジャミン・ヴィドールの処刑が行われます...およよよ!!(嘘泣き)

ヴィオラ:およよ...ああ、すみません...私、実はベンジャミン王子とは親交がありまして...この度の発表にただただ心を痛めておりました.....およよよ....

ヴィオラ:皆様が知っての通り、王子の身には、「悪魔」が住んでいるのです。人々を脅かし、すれ違うだけで人間を呪い殺してしまう、あの悪魔が潜んでいるのです!!

(ざわつく広場)(さらに語り出す)

ヴィオラ:取り憑かれた人間が悪魔から逃れられる方法はただ1つ...魔法で殺すこと...。王子はこの事実を伝えた途端、進んで死を望まれました...ああ!!にっくき悪魔!!!なんて嘆かわしいこと!!およよよ!!(激しく泣くマネ)

ヴィオラ:そんな訳ですので、3時のおやつ...ゴホン!(咳払い)時間まで、もう暫くお待ちくださいませ。

(アル、ヴィオラのイヤリングに閉じ込められている)

アル:おい!!!ヴィオラぁ!!ここから出せ!!!!

ヴィオラ:あぁらあら!小っちゃなネズミさん、あんまり暴れると疲れてすぐ死んじゃいますよ?まあ、それはそれで良いのですけど。

アル:なんだこの石は!!!重すぎて耳ちぎれるんじゃない!?いや、耳たぶがでかいのか!?

ヴィオラ:だまらっしゃい!ふふん、いい事を教えてあげる!この石は外側からの力じゃないと変形しない特別な石なのよぉ。

アル:あっ、ふーん?(いいこと聞いたという顔)

(ヴィオラ、だんだんイラつき出す)

ヴィオラ: ...にしても、遅いわね...。いつになったら出てくるのかしら...?

(広場がざわつき始める)

ヴィオラ:な、何、みんなどうしたって言うの!

アル:あ!!!

(ヴィオラ、アル、空を見上げる)
(見上げた先には、ジョンとベン)

ヴィオラ:ベンジャミン!?
アル:ジョンだ!!!
(同時に)

ヴィオラ:なっ、看守はなにをしていたの!?...眠らされていた!?はァァ!?!?

アル:"パルトラム・イース"
(通信魔法でジョンに呼びかける)
アル:ジョーーーン!!!僕!!!ヴィオラのイヤリング!アメジスト!!

ジョン:ああ、そんなことだろうと思ったよ!

アル:たのむーー!!!

ジョン:わかった。ただ、少し待ってくれ。

アル:えっ!?待ってどういうこt(ブツっと途切れる)

ジョン:さあ、お前の出番だ。...自由にやれ、ベン。

ベン: ああ。

(ベン、大きく深呼吸)

(ベン、上空に浮いたまま、話し始める)

ベン:皆の者!私は、今日の大目玉、ベンジャミン・ヴィドールだ。

(広場、さらにざわつきを強める)

ベン:突然の事が重なり、皆にはたくさんの迷惑をかけたことであろう。すまなかった。

(ベン、少し考えたあと、何かを決心したように話し始める。)

ベン:私は、「悪魔」なのだと思う。

ジョン:は?

ベン: ...私の、悪魔のように大きな「魔力」が、周りに及んでしまっていた。だが、実は、私はこれまで、この力を抑える方法を知らなかった。

ベン:それもそのはず、私はその力を知っていながら、周りに助けを求めなかった。...怖かったのだ、人を...私に関わった人間が死んでいくのが、ただただ怖かったのだ。

ベン:こんな事を言ったとて、亡くなった命は帰らぬ。だが......

ジョン: "モルデオルト"

(ジョン、静かに魔法を唱える)
(アル、イヤリングから解放される)

アル:"パルトラム・ローテ"

(ヴィオラ、砕けたイヤリングの欠片に封じ込められる)

ヴィオラ:!?ちょっ、何よコレ!!!出しなさいよ!!!

アル:ごめーんっ、ちょっと静かにしてね!ドブネズミちゃん!"パルトラム・リープ"

ヴィオラ:ああ...!!私の計画が全て台無しになるじゃないの!!ちょ...っと...

ヴィオラ:ぐう。

(ヴィオラ、眠る)
(ジョン、ぼそっと呟く)

ジョン:さあ、出番だ、アルバトロス。

ベン:私は、死ぬ事をやめる。

(ベン、ふっと身体の力を抜き、空中に身を投げる)

アル:"パルトラム・ローテ"!

(アル、ベンを箒でさっとすくい上げ、空に浮く)

アル:と、言うわけで!僕らがもらうね!王子!

ベン:...みんな、さようなら。

ジョン:"モルデオルト・プレルード"!!

(ヴィオラ、広場の真ん中に転がっている)

ヴィオラ: ...うぅ...私は一体何を...?

(大きめのジュエルが傍らに落ちている)

ヴィオラ:...!!!っジュエル!!

(すぐさま駆け寄り、口に含む、が直ぐに吐き出す)

ヴィオラ: ...美味しく、ない。

ヴィオラ:何故...?


アル:むううううう!!!久しぶりに死ぬかと思ったよー!?!?

ジョン:あーあー、すまんすまん

アル:謝る気無いねー!?このやろう!!口下手メガネ!!!

ベン:あ、あの...

アル:ん?どうした??

ベン:ちょっと、この抱え方は、恥ずかしいのだが...

アル:えぇー?お姫様抱っこで照れてるのー?王子って案外ウブだねぇ!!プププ

ジョン:アル、若者をからかうな。あと、王子ではなく、ベンだ。

アル:ああー!そうだ!自己紹介!!俺はアル!アルバトロス・ステュート!

ベン:私はベンジャミン・ヴィドールだ。

ジョン:ジョン・フェイス。

ベン:アル、ジョン、よろしく。

アル:それでぇー?ベン、本当にあれで良かったの?

ベン: ...ああ。

ジョン:もし、お前が俺たち魔法使いを信じてくれるのなら、生きたいのなら、一緒に来ないか。代償は国でのお前の記憶だが。

ベン: ...僕は、

ジョン: ...

ベン:...本当は、生きたい。でも、わがままなのかもしれないって

ジョン:あーあーあーもう分かった、好きにやれ

ベン:えっ?

ジョン:いつまでもウジウジウジウジ、面倒くさい。元とは言え、王子の名が廃るぞ。

ジョン:いいか。俺は今から大魔法を使う。標的は国だ。でもそれにはお前の協力がいる。

ジョン:魔法を人にかける時は、人の心に隙がないとだめなんだ。だから、お前は、民衆の気を引け。それだけでいい。その内容がなんだろうと、俺は一切口出ししない。その隙を狙って、俺が国全体に忘却魔法をかけ、お前の記憶を消す。

ベン: ...本当に?

ジョン:疑うのも無理はない。だから俺が、今からお前に魔法をかける。"モルデオルト"

(ベン、空中にふわっと浮かぶ)

ベン:わぁあ...っ!

ジョン:これで理解出来ただろう。タイミングは俺が図る。...俺は、信じてるぞ、ベン。

ベン: ...わかった、僕も...信じるよ。ジョン。

ベン:良いんだ。

ジョン: ...無理するなよ。

アル:あー、お腹空いたぁ

ジョン:っお前はちったぁ空気を読め....

ベン:僕は何も持ってないな...ごめん

ジョン:いや、仕方が無い、こいつの腹の問題だ。

アル:じゃ、魔法で用意しちゃうー!?

ベン:!!そんな事も出来るのか!?

ジョン:魔法で出した飯なんて所詮幻影だ、腹の足しにもならん。黙って家で残り物でも食べよう。

ベン:あっ、意外と庶民なのだな...

ジョン:そりゃそうだ、一般市民に紛れられないと生きていけない。ただ、

アル:引越し、しないとだねぇ

ジョン:そうだな、無いと思いたいが、何かのはずみで人の記憶が戻ってしまったら面倒くさい。

ベン:すまない...つくづく迷惑をかけているな

ジョン:いや、言い方が悪かった。お前は何も悪くない。まあ、お前に魔法を教えるには、家も庭も狭すぎるしな。俺もちょうど広い部屋が欲しいと思っていたところだ。

アル:お!家見えてきたぁー!

ジョン:よし、じゃあ早速やるとするか。ベン。

ベン:な、何だ?

ジョン:好きなものはなんだ?

ベン:急だな!?...えっと、星が好きだ。

ジョン:一番好きな星座は?

ベン: ...双子座。

(アル、ぼそっと呟く)

アル: ...はは、懐かしいな。

ジョン:その好きな物を思い浮かべて、手の中に丸く、それを作るように魔力を貯めてみろ。

ベン: .......!!!こ、こうか...?

ジョン:お、上出来。それが、「魔力を操る」という事だ。ほれ、その玉、貸してみ。

ベン:あ、ああ!

(ふわっと魔力玉が浮かび、ジョンに吸い寄せられる)

ジョン:モルデオルト

(光を放ち、魔力玉が家を包み込んでいく)

ベン:わぁ...。

(家の形は変わってない)

アル:?あれぇー、見た目変わってないよー?

ジョン:わざとだよ馬鹿野郎。拡張魔法で中だけ広くしたんだ。

ベン:こう...?いや、こうか...

(ベン、魔力玉を操る練習をしている)
(アル、ぽんとベンのあたまを少し撫でる)

アル:そうそう。そうやって練習して、実践して...その繰り返しで、魔法は使えるようになっていくんだよ。

ジョン:もっとも、時間はかかるがな。まあ、どうせ長生きなんだ、ゆっくりやっていこうじゃないか。

ベン: ...うん、そうだね。ありがとう、2人とも。

アル:そうとなれば?さあ!僕のお膝からお降り!!!

(アル、ポイっと上空からベンを投げる)

ベン:へっ?...うわあああああ!!!?

アル:ねぇねえ!まっさかさまに落ちてるね!ぞっとする?怖い?

ベン:アル!!どういう事だ!?

アル:僕はねぇ、実は知らないことばっかりなんだ!だから、君にいろんな事を教えてもらう為に、恩を売っておこうと思って!

ベン:っそういう事か!!っははは!!じゃあ買っておこう!!助けてくれ!!!アル!!!

ジョン:若者をいじめるなとあれほど...。モルデオルト

(ジョン、2人の重力を変える)

アル:しょーがねぇなあー!貸しひとつだぞー!わはは!これ1回言ってみたかったんだよなぁ!!
パルトラム・ティーク!

(ベンの下降スピードがゆっくりになる)
(2人、ゆっくり地面に着地)

ベン:助けてくれてありがとう、アル。僕はお礼に、僕の知りうる事を全て教えよう。

アル:へへ、まいどあり。

ジョン:仲良しなところ申し訳ないが、早いとこ家に入ってくれないか?

(向き合う2人の後ろ、仁王立ちのジョン)

アル:ジョーーーン!!!!お前それ絶対申し訳ないって思ってないな!!

ベン:ふふっ

(3人、笑い出す)

ジョン:さて、明日からはまた日常だ。ゆっくり休まないと。

アル:そうだねぇ!ベン!明日は何する?

ベン:そうだな、僕は...2人の事が知りたい!

アル:奇遇だね!僕もそう思ってた!

ジョン:お互いについてゆっくり話す機会も無かったしな。明日はそうしようか。

ベン: ....うん!

(真夜中)
(王宮薬品室にて、荒れた様子のヴィオラ)

ヴィオラ:どうして!どうしてどうしてどうしてどうして!!!!!!

(手当たり次第に薬品棚の薬を飲む)

ヴィオラ:はぁ、はぁ、...っ私の、私の魔力はどこに行ったって言うの!?

ヴィオラ:有り得ない...おかしいのよ...何も変わっていない、はずなのに!!!!何故!!!!!

ヴィオラ:どうして...どうしてよ...

(フラ...と窓辺に歩いていく)

ヴィオラ:星が...綺麗ねぇ

(窓から身を乗り出し、空に手を伸ばす)

ヴィオラ:あの、石のように...強く輝く星に、私もなりたかっただけなのよ...

(ヴィオラ、力が抜けて、窓から真っ逆さまに落ちていく)

ヴィオラ:ごめんなさい...

(朝、塔の下で、ヴィオラの死体が発見される)

ジョン:...騒がしいな

アル:ジョーーーーン!!!!!!!

ジョン:...騒がしいな。

アル:朝刊だよ!!!!!!!!!

ジョン:騒がしいな全く!!!

ベン:アルは朝から元気だな。

アル:ベンおはよう!!2人とも!!ビッグニュースだよ!!!!

ジョン:どれ、新聞よこせ

アル:はやくはやくはやく読んで!!

ジョン:お前は落ち着け!!...どれどれ

(ベンとジョン、同時に新聞を覗き込む)

ベン:ヴィオラが
ジョン:落下死!?

ジョン: ...気が触れたんだな

アル:お前さてはなんかした??

ジョン: これまでの罰として記憶と魔力を奪っただけだが?

アル:絶対にそれじゃん!!!!!

ベン: ...僕の、せい

ジョン:じゃない。あいつは、お前と接触する前から、罪を重ねてきていた。それだけの事だ。

ベン:っ!...聞いてもいいか。何故そんなに「わかる」んだ?

アル:そりゃあお前、ジョンは1番長生きだからだよ!

ベン:えっ?

ジョン:俺は数えてないが、アルが数えてるだろう。

アル:こいつはだいたい6万歳!俺は2万歳くらい!

ベン:ええっ!?!?!?

ジョン:ベンからすれば、浮世離れした数だろうな。

アル:分かったろー?ジョンがなんでも「わかる」理由!

ベン:ああ...そんなに長く生きているのなら、無理はないな。

ジョン:ヴィオラはおよそ200歳といったところだろう。...あの歳くらいで、あいつのようになるものは、沢山見てきた。

ベン:そうなのか...悲しいな。

ジョン:ああ、そうだな。

アル:2人とも、悲しいの?

ジョン:ああ、これは悲しい事なんだよ。アル。

アル:そっかぁ。また、ひとつ分かったよ!

ジョン:こいつが本当に理解したのかはさておき、今日は、お互いについて話す日だったな。

アル:そうだね!!次はベン、君の話を聞きたい!

ベン:うん、分かった!じゃあ、まずは...


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