Gate Review 開発テーマを閉じる判断
素材業界にて新規事業開発スキームを構築するという大きな目標を掲げており、その1つの実例を作るために、今期は「新規事業テーマの事業性評価を高い確度で実施し、さらなる投資を受けること」を達成したい。
そういった意味で、四半期に一度のGate Reviewには必要なリソース支援を前広に受けるために、毎回ロードマップを更新して全力で臨んできている。
一方、新規事業開発は、とある技術開発の成功を前提に組み立てられたストーリーであり、その技術開発の成功確率や、改善代の限界というのは当事者であれば色濃く見えてくる瞬間がある。
特に、事業をスケールさせて億単位の売り上げや利益を生み出すには生産性の拡大が必須であるが、この生産性の拡大には投資が必要である。また生産性を拡大した際の品質は、様々なアプローチでその確度を高めることが可能であるが、絶対成功というものはあり得ない。したがってリスクを負うことになる。
私の場合、開発した技術を搭載した実機装置を製造した際に、物理現象上の制約があり生産速度向上の目途を立てられない時期があった。この場合、固定費が大きくのしかかり、よほど顧客から付加価値を認めて頂くサービスとならない限り、採算が合わないことになる。マーケットが狭い。
さて物理現象上の制約というのは、現象を理詰めで考えれば見えてくるものなのであるが、実際にそこまで向き合うことができるのは担当者であり、関係者は深く理解していない。このような状態は特に珍しくない。なぜなら他にも事業化に必要な要件というものはいくつもあり、プロジェクトは役割分担しながら、そのミッシングピースを埋めていくものだからである。
かくして、開発リーダー兼、事業開発推進者の自分にすべての情報が集約されていくわけであるが、そこで描くストーリーはプロジェクト全体の士気に大きく影響する。マイナス情報が出てきた際に、悩む。
そんな状況でGate Review会議を迎えることになる。
現在所属する企業では、Gate Review会議にてクオーター毎のOKR(Objectives and Key Results(目標と主要な結果)についてチェックし、次のクオーターで設定するOKRの適切さと、それを実行するために必要なアクションは何かを議論している。
何度か経験して思うこの会議の欠点としては、仮にReferee陣営がGo Stopの判断をすることよりも支援に重きを置いた場合、いかにプロジェクトを延命化するか?という機運になりかねないことがある。
プロジェクトがまだ小さい場合、開発Stageが初期段階のうちには比較的Stop(Kill)判断がしやすい。しかし、Referee陣営も何度となくGo判断を過去に出していたテーマで、ある程度規模が大きくなったテーマについては、切らなければならない開発結果が見られた場合に、切れずに惰性が働く印象がある。
「開発陣を信じて支援する」というスタンスを持ちつつ、一方で、延命化するために「隠された不都合な事実を見抜く」という目を同時に持つ必要があり、Referee陣営の役割分担も非常に大切であると感じる日々である。
仮にReferee陣営内のパワーバランスが一人に集中してしまう場合、苦しいペットプロジェクトが切れずに組織のリソースは浪費されることになる。この損失は計り知れない。(といっても、代わりにリソースを振り分けるテーマも準備する必要があるが)
現在、自身のテーマで生産性を上げるための技術的なブレイクスルーを閃いて窮地を脱した今だからかけることだが、多くのテーマリーダーが延命策を模索しつづけて判断を上層部に委ねる中、自身は惰性が嫌なので、テーマを自ら閉じる条件について提案することを考えていた3週間であった。
結局、光が見えたのでまたプロジェクトを全力で前に進めるために舵をとるのだけれど。なかなか難しい。