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vol.44『ツバメとわたし⑲~デッキブラシ経由のドロ水~』

(前回作はこちらです→『ツバメとわたし⑱』)

 朝から、しぶしぶ車庫掃除。ツバメの運んできたワラとドロを掃除する。


 ツバメはドロを口に含んだまま車庫へ飛んで入ってくるので、けっこうな勢いで、ドロが白い壁に飛び散る。当然、ワラも咥えてやってくるが、ドロほどやっかいではない。でも、ドロはめちゃくちゃ頑固だ。こすったところで、きれいにはならず、むしろ汚れが広がるだけだ。水できれいに洗い流すしかない。


 とりあえず、照明の上に出現した小高いワラをほうきで落とす。痛い。心が痛い。痛すぎる。これからもうこんな思いはしたくない。だから、ツバメに巣を作ってもらっちゃ困るのだ。ツバメの立場からしてもそう。早く別の場所で巣を作った方がよいのだ。辛いけど、お互いのために一緒にいてはいけない。ツバメとわたしは一緒にいてはいけないのだ。早々に次なる作戦を立てなければ。


 別れって、どんなシチュエーションであっても辛い。人との別れもそう。できることなら、別れは避けたいけれど、新しい道を歩むためには、時にそういう決断も必要なのだ。でも、別れを仕向けて行くのはやっぱり辛い。誰も傷つけたくないから、できればそのまま何もせずにフェードアウトしていきたい。ツバメも然り。


 壁にホースでジャンジャン水をかけ、デッキブラシでゴシゴシとこする。デッキブラシは基本床を掃除するものだけど、わたしは壁掃除に使う。なぜなら、そこにドロがあるから。


 壁掃除のためにデッキブラシを持ち上げるから、腕にその重さがズシッと来る。デッキブラシはけっこう重さもあるのだ。なかなかの重労働だ。

 しかもだ。ホースの先をぎゅっと潰しながら水を出す。水はけっこうな勢いで壁へ向かう。当然、水しぶきが発生する。その水しぶきの返り討ちに遭い、まあまあ濡れる。

 さらには、壁についたドロ汚れをブラシでこするので、高く上げたデッキブラシから、水が滴り落ちる。これは、いたし方ない。重力によって物は上から下へ落ちるのだ。不変の法則なのだ。仕方ないのはわかっている。

 だけど……。ブラシ部分についた水がデッキブラシの柄を伝ってわたしの手にやってくる。ブラシを握っている手はもうビシャビシャだ。手についた水は、指から手首へ、さらにひじへ伝い、二の腕へと渡って行く。そして、最後はあろうことか、脇にたどり着く。

 結果、わりと地味に全身が濡れた。もう本当に最悪だ。なぜ、朝から田んぼのドロが混じったドロ水を浴びなくてはいけないのだ。きれいな水なら100歩譲ってまだいい。でも、これはデッキブラシ経由のドロ水なのだ。一体なんの罰ゲームだ。仕事へ行くっていうのに、シャワーを浴びてもう一度着替えなくてはならない。 

(つづく)


〈最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ツバメとわたし⑳』を更新しましたので、よろしくお願いします(*'▽')〉


 

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