彼女の放尿と新しい劇団

僕は肝心な時に度胸のない人間だ

思えばそれは小学生の時からになる

小学生6年生のある日、僕は女子に呼び出された

特段仲の良い子ではなかったが、可愛らしく快活な子で人気もあり容量のいい子だったのを覚えている

どこに行くのかと期待してついていくと

そこは女子トイレだった

「入って」

とだけ彼女は言った。

僕が混乱して戸惑っていると

彼女は譲歩するかのように

「じゃあ一緒に入ろう」

と言った

混乱していたので、一緒ならいいかと妙に納得させられ

女子トイレに入ってしまった

こんなところを見られたらどんなことを言いふらされるかわからない

続けて彼女は個室を指差してもう一度言った

「入って」

その声は爛々としていて、どこか狂気があった

「いや、いいよお、、、」

どうしたらいいか分からず僕はやんわりと断ってみた

僕が一度断ると彼女はそれ以上要求してこなかった

驚いていても別に特段気にする様子はなく
彼女は笑って個室に入った

僕はなにもできず、彼女が放尿する音だけをただ聞いていた

あの日あの時、個室に入っていたらどうなっていたのだろう

と、今でも思い出したりする

そう、それから

肝心な時に行けない

というのが僕の個性としてある





そして

今度は演劇の女神がもう一度

「入って」とささやいた気がした

肝心な時に行けない男

どうする

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