ひきこもり君がイカつい服を着る理由
友人、H氏に先日会った、実に3.4年ぶりだった。
その日は、錦糸町の喫煙できる喫茶店でお喋りするという代え難い素敵な一日だった。
ガルフィーのゴテゴテの刺繍入りのトレーナーを見てH氏は「並木さん、服の趣味変わりましたね」とミッキーの横顔が描かれたマグカップを傾けながら言った。
確かに僕は服の趣味が変わった、それもまるっきりだ。
昔は無地のシャツばかり着ていたが、今はデカプリントや柄物を好んで着るようになった。
今日はそれにまつわる
ひきこもってた時の話でもしようと思う。
一年半ほど前の話だ。
猫はひっそりいくという。
僕もひっそり、そのつもりだった。
昼の2時ごろ起きてベランダでタバコを一吸いし、そのままベランダで放尿する。
アルコール9%500mlのサワーを4本摂取してそのままぶっ倒れる
これを周回するだけの、ミニマムで破滅的な日々を送っていた。
(今はそんなことないから安心して欲しい)
ある日、僕は日課の「ファミコン芸人ブジタ」のチャンネルにアンチコメントを書き込もうとYouTubeを開いた。
するとクレイジージャーニーでお馴染み、丸山ゴンザレスがガルフィーとコラボした動画を配信していた。
丸山ゴンザレスのフォルムが好きな僕は動画を再生した。
紹介される服の数々を見て「どう考えても派手すぎるだろ!」と思ったのを今でも覚えている。
でも同時にとてつもないエネルギーを感じた。
なんだかわからないが、これを着て少し遠くまで行ってみよう。そう思えた。
ダメな時というのは人間とことんダメだ
友人には煙たがられ女に振られる
そんなもんだ
僕の好きな言葉に「動けば力が湧いてくる」というのがある
でも、動けないほどダメな時にぶち当たることはややある。
そんな時は服に助けてもらうのもひとつの手だ
丁度レンジャーが変身してパワーアップするかのように
服は外に出る時も厄介ごとを言わず寄り添ってくれる。
もし、もう終わりだと思って引きこもっている人がいたら会いに行って伝えたい
まずは抱きしめて
そして自ら命を絶つ選択をしないでくれてありがとう、と伝える
最後に気が向いたら好きな服を選んで外に出てみてくれ、と
僕は即在庫僅かのガルフィーの刺繍入りスウェットを購入した
夏は暑いだろうからとコアチョコのTシャツも買った
配送されてきた服を見て思った「派手すぎるだろ!」と
ギラギラした刺繍の虎は今にも噛みつきそうな牙を見せ、龍は睨みを効かせている
そして、おなじみデフォルメされた犬のガルフィー君が真ん中にでんと描かれている。
堅気っ気が皆無の愛すべき服だ。
そのこだわられた刺繍のひとつひとつが確かに力をくれた。
そして僕はガルフィーと共に向かった
ジイさんとバアさんしかいない近所の健康麻雀に
麻雀のルールを一つも知らずに乗り込んだんだ。
僕は色んな技法を教わったが
結局チートイツだけ覚えて帰った。
僕が外に出た一歩目だった。
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