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竹灯籠で妄想する西瓜提灯
竹灯籠を見に行った。
竹灯籠は、わたしの子供時代の思い出の一部だ。自然の中で遊びながら、友達と一緒に作ったものだった。竹を切り、火を灯し、夜の闇を柔らかく照らすその姿は、まるで星が地上に降りてきたかのようだった。わたしたちはただ、楽しむために作っていた。特別な技術や知識が必要なわけではなく、手を動かし、心を込めるだけで、素朴な美しさが生まれた。
竹灯籠に限らず、歴史や起源について語ることは確かに重要だが、そうした話が始まると、時には権利やビジネスが絡み合い、いつの間にか無粋なものになってしまう。
大人になった今、竹灯籠を作る機会は減ったが、その記憶は色あせない。自然の中で過ごした日々、友達と笑い合った瞬間、そして、竹の温もりを感じながら灯りをともした夜。歴史や起源を語ることが無粋だと感じるのは、その思い出があまりにも大切だからだ。竹灯籠は、わたしにとってただの伝統ではなく、心の中に生き続ける、無邪気な遊びの象徴なのだ。
「沖さん、やっぱ竹灯籠いいですね」
「これ、あれに似てるよな」
柔らかな光が竹の隙間から漏れ、幻想的な雰囲気が広がっている。ふと、昔の思い出が蘇ってきた。
子供の頃、親父が作っていた西瓜提灯のこと。
親父は真っ赤な西瓜を手に取り、果肉をくり抜いて、外側を丁寧に彫刻していた。
完成したのは、季節外れのハロウィン南瓜ならぬハロウィンの西瓜提灯だった。
中に入れたキャンドルの光が、暗くした部屋を怪しく照らし出し、まるで魔法のランプのようだった。
突然ハロウィンの西瓜提灯が、友達の果物たちに自慢を始めた。
「俺は夏の王様だ。みんなが俺を食べたがるからな」
リンゴが「でも、西瓜、君はいつも冷蔵庫に入れられてるじゃないか。王様なのに、冷たい扱いだね」と種を飛ばすと、西瓜はちょっと考えて「それは冷静に考えると、確かにそうだな。でも、俺はいつもパーティーの主役だし、みんなが俺を見て笑顔になるんだ」
バナナがニヤリとしながら「でも、君は切られたら、すぐに水分が抜けてしおれちゃうじゃん。王様としての威厳がないね」と皮をベロンと垂らすと、西瓜は少しムッとして、「適当なこと言うなよ。俺はみんなに水分を与えるんだ。夏の暑さを和らげるのが俺の役目さ」
その時、オレンジが口を挟んだ。「でも、西瓜、君はいつもスイカ割りされる運命じゃない。王様なのに、叩かれて割られるなんて、ちょっと悲しいね」西瓜は汁を垂らして、「それでも、俺はみんなに楽しんでもらえるからいいんだ。割られた後は、みんなでシェアして、笑顔が広がるからな」
メロンが言った。「それにしても、西瓜、君が王様なら、俺はその王様の親友でいいよな。類は友を呼ぶで、俺だって甘くて美味しいからね」
西瓜は笑いながら、「そうだな、メロン。一緒に夏を盛り上げようじゃないか。俺もちょっと調子に乗り過ぎて悪かったが、みんなも俺と夏を盛り上げて楽しもうぜ」
果物たちは、みんなニッコリ笑っていた。