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ふわっとした話

 30歳の頃、”もうもたないな”と感じた事があります。
 当時はひと月に35本前後のライブをこなして、大勢のお弟子さんのレッスンもやっていました。
 ある日、深夜の某駅前の広場で、本当に突然に
「このままの状態で50歳くらいになってしまったら、俺は絶望するかもしれない。気持ちがもうもたないな。」
と感じて、それから仕事を減らす事を始めました。
 先のスケジュールが仕事で埋まっていないと不安。スケジュールが埋まり続けていることでルーティンワークになってしまっているような状況にも不安。どちらにしても不安でしかなかったので、これはちゃんと向き合って戦わなければならないなと、そう思ったんです。自分の向かって行く道はどんなもんだろうと。
 それから色んな事を考えて、ひたすら考えて考えて…そして今に至ります。

 自分の判断が正しかったかどうかなんて、どうだって良いなと思っています。そんなものは見方次第でしかないのだろうし、色んな答えの中のいくつかしか持って歩けないわけですから。正当化する必要もなく、ただ一貫した事をやっていくだけでしかないなあと。

 震災があった後、自分が音楽をやる意味について考え込んでしまった事もあります。音楽なんて生産性の無い事をやるより、喉が渇いている人に水を持って行くことの方が重要な気がしたからです(そんな小賢しい事をグルグルと考えてしまったせいで、スランプに陥ってしまいましたし、決して良い事ではなかったなと思っているわけですが)。
 実はある意味で今でもそう考えています。しかし、同時に自分は不誠実な世界にいるモンスターなのだろうとも思っています。自分が面白いと思う事をひたすらやっていて、それを見てくれている人が自分に価値をつけてくれているだけだと思っていて、だからこそ自分は嘘無くのびのびと音楽の中で遊んでなければならないなーと思っています。
 また、音楽をやるって事は人の命に触るような事だなあとも思っています。自分の音楽を聴いて大事な記憶を思い返す人もいるかもしれない。誰にも言えないような記憶かもしれないし、とても悲しい記憶かもしれないし。そういう所に触れる事をしているんだろうと感じているわけです。 だから音楽の中では常に素直でひたむきな自分でいようと思っています。

 そう思っているという、ただそれだけです。綺麗な事を書いて悦にいっているわけでもなく、本当にそんな事があったり、そんな事を考えたりしているんだよっていう、ただそれだけです。それを前提にして続きを。


 実は、先週から今週にかけて、誰かの人生に触れるような事が立て続けに起きました。”誰かの人生に触れるような事”なんてまどろっこしい書き方をしている自分に辟易しますが、ひと言に幸不幸では割り切れないと思っているからなわけで、つまりそんな一週間でした。
 本当にいくつもの事が立て続けに起きて、気付けば心がズーンと重くなっていて、身体にも若干影響が出たりして、自分でも驚いています。ワーワー泣いたり色々言ったりせずに、悲しさや辛さなんかは心の深い所に沈める癖があるんですが、なんだかこの一週間は沈めたモノの重力で体が内側にひっくり返って吸い込まれていくようでした。

ーでも、よく考えろよと。
音楽を生業にしてるんだから、そんな事言ってないで、不誠実なモンスターでおらんかいと。
中途半端は一番いかん。
しっかり音楽やろう。

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