雨粒
個展の終了後、このあたりの地域が梅雨に入った。
その晴れ間に、いつもの神社へ個展のお礼をかねて参拝に出かける。
早朝に車を走らせて。
街を抜け山になると窓を開けて
新鮮で少し冷たい空気を吸い込む。
いつもより丁寧に挨拶をして
今日は隣にある小さな滝にしばらく佇む。
早朝だから人もいなくて
鳥の声がのびのびとダイレクトに私の耳に届く。
ぼーっと、そのまま立っていると
ふと、漢字が滝から流れてきた。
それは「雨粒」。
雨は降っていないけど
漢字がダダーと身を翻しながら小さな滝壺にダイブした。
それは、それはそれは喜ぶ子どものように
自ら笑って、面白がって。
ほほう〜と、
それを眺めていたら
まるでよろこび泳ぐ幼い子どものように
滝壺を無邪気にはしゃぎながら潜り
一通り遊びにも飽きたころ
次の流れを期待して
狭い門を
水面に漂っている他の葉っぱたちとお行儀よく並び
順番を待って、落ちていった。
雨粒
同じ水なのに
あんなに、喜ぶんだ。
あれはきっと
海へたどり着くまでああやって
喜びと共に、どんどん下流へ流されていくんだろう
そして蒸発するたびに
もう一回、もう一回と
神様におねだりしながら
天の空から
この地球に
ダイブしてくるんだろう。
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