Z世代から見る石丸伸二
東京都知事選が終了した。
結果は悔しいものになったけれど、なんと14年ぶりに投票率が60%を上回ったという。今後は更に投票率が増えていくことを信じて、また小池百合子の動向を注視していこうと思う。
さて今回の都知事選では、石丸伸二という人物が上位に食い込んできた。
結論から言うと、私は彼の支持者ではない。
しかし、私は元々彼に好感を抱いていた。
このnoteは、過去の私に対して、
「うわべだけ見てすべてを知った気になるんじゃないぞ」
「自分が信じているものも、妄信するのではなく疑いなさい」
という戒めの意を込めたものになっている。
なので分かっていただきたいのは、「石丸伸二を支持するな」と言っているわけではない、ということだ。
彼に好感を持っていた理由
最初はありきたりな、YouTube Shortsがきっかけだった。
スマホの画面をスクロールした途端、目に飛び込んできたのは、
「恥を知れ!恥を!」
と、腐りきった議員たちを一喝する、30代の若い市長の姿だった。
この恥知れ動画は、メディアが石丸伸二を取り上げたことが発端だった。その動画のコメント欄には、「若い市長が議会にモノ申していて素晴らしい」「これこそが正しい政治」系のコメントで溢れかえっていた。私もそう思っていたし、恐らく当時の彼の姿は、本当にその通りだった。
それから2-3年が経ち、東京都知事選に石丸伸二が出馬すると声明を出した時は、この腐った政治を根本から正してくれると感じて心の底から応援したものだ。
しかし都知事選が進むにつれ、彼についてSNS上で様々な声が聞かれるようになった。自分が信じていたものが、まったくの虚像だったのではないかと非常にショックを受けたが、「何事も盲目になり、まるっと信じることはしてはいけない。自分の頭で考えなければいけない」と思い立ち、その現実を見つめることにした。
怪しいと感じた点
選挙ポスターやビラ製作の未払い
これは、未払い問題に言及された時の石丸伸二の発言だ。なかなか好戦的な態度で驚愕する。正直、選挙期間にこんなニュースが出ると確実につつかれるタネになるので、できれば穏便かつ早めに済ませた方が良いはずなのだが…。
良い言い方をすれば、自分の信念を貫く強い意志がある。悪い言い方をすれば、頑固、血気盛んといったところか。
統一教会、自民党との繋がり
みんな大嫌い統一教会&自民党との繋がりが選挙期間中に判明する。
支持母体を持たないと触れ回っていた石丸伸二だが、結局は既得権益との、しかも昨今重大事件を引き起こし、国民の不満が直で向かっている団体との繋がりがここで明らかになった。
彼自身は「繋がりはない」と否定しているが、もし繋がりがあっても素直に「繋がりがあります」なんて言わないだろう。政治家が、裏金で贅沢三昧をしていても、「裏金問題は知りません」と言うのと同じだ。
ていうか、応援に来ている、街宣車の上でマイクを握っているならそれはもう「何らかの繋がり」はあるのでは?少なくとも「知らない人」とは言えないだろう。
インタビューの高圧的な態度
初期石丸フィーバーの時は、安芸高田市議会との対立動画の切り抜きくらいしか見られなかったが、選挙戦が進むにつれて対談やインタビュー動画が増えた。そういった動画が増える度に、「あれ、この人結構乱暴な人じゃない?」と感じる機会も増えた。
しかし、私も含めてだが、現代人は長い動画を観るのが苦手になってきている。そのため、石丸伸二の動画に関しても、自らの政策を述べている切り抜きは出回るが、おや?と思う発言の切り抜きは流布されない。なので、皆彼の高圧的という一面に気づかなかったわけだ。
それに、元来高圧的な人間であると仮定すると、安芸高田市の議会での様子も納得がいく。「恥を知れ!恥を!」と発言したのも、別に心の底からこの腐った議会を正そうと口から出たものではなく、本来の性分のままに発言したところ、「若き市長がたるんだ議会に喝!」のようにもてはやされたのかもしれない。
石丸伸二のやり口
切り抜き動画の大量生産
ここからは、彼の選挙戦でのやり口について思ったことを記載する。やり口、と少し嫌な書き方をしているが、これも言い換えれば戦略の一つではあるため、一概に「これをやっているからク●だ」などとは言えない。
まず、切り抜き動画の大量生産。Twitterでも指摘されているが、クラウドワークスやランサーズに、報酬付きで石丸伸二の切り抜き動画を依頼する投稿が相次いでいた。
以下は石丸伸二の切り抜きチャンネルの一部だ。
これらはほぼすべて、私がスマホ版YouTubeの検索窓に「石丸 切り抜き チャンネル」と検索し、検索フィルタで、
*******************
並べ替え:関連度順
タイプ:チャンネル
アップロード日:指定なし
時間:すべて
*******************
この4つの条件を指定して出力されたチャンネルだ。いや多すぎな!?まじで途中でやめようかと思った。石丸伸二のゲシュタルト崩壊。「い」って打ったら石丸伸二がトップ変換候補に来るようになってしまった。
これらすべてがランサーズやクラウドワークス案件で作られたチャンネルではないにしても、異常な多さではないか。
恐ろしいのは、これが石丸伸二に関するすべての切り抜き動画ではないということだ。恐らくもっとチャンネルは存在する。
私の予想としては、案件を最初に展開した人間は石丸陣営の誰か。少なくとも石丸ファンの一般人ではない。
初めは10~20チャンネルほど作らせて、動画を作らせればそれで終わりでよいだろうと考えていたが、予想外にもバズりにバズりまくってしまい、「石丸伸二を取り上げれば稼げる」とにらんだ一般人がこぞって案件でもないのに石丸伸二関連のチャンネルを大量生産したことが原因とみる(あくまで予想ではあるが)。
人々がこぞって大谷翔平の活躍をYouTubeで取り上げるのと同じ現象だ。
これは石丸伸二本人にとっても棚からぼた餅な展開だったのではないだろうか。
単純接触効果
上記の切り抜き動画の大量生産の副作用が、単純接触効果だ。
最初にクラウドワークスやランサーズに案件を依頼した人物は、これを狙っていたのだろう。それが思いもよらず石丸伸二ブームを巻き起こした。
実はこの手法、とある政党もよく取り入れている。というか第一人者というべきか。
そう、参政党だ。2年前の参院選で、初めて議席を獲得したこの政党。実はYouTube ShortsやTikTokをフル活用して、政党の政策や知名度を広めていたのだ。(私は彼らをカルト宗教だと思っているので、正直政界からいなくなってほしいと思っている)
石丸伸二、参政党。非常にやり口が似ていることから、時代はやはり情報戦。SNSを制する者が政治をも制すであると痛感した。
他者へのマウンティング
ひろゆきを始めとした、マウンティングを「面白い」としてしまったこの風潮にも問題があるが、彼にもマウンティング気質は十分に備わっているだろう(高圧的~な部分でも言及したように)。
ただ厄介なのが、一般の政治家が誰かにマウントしたり、話題をすり替えてうやむやにしていると、「何言ってんだこいつ」と都民からも文句が噴き上がるが、親近感を覚えてしまった石丸伸二に対しては「面白い!」「さすが我らのヒーロー」という視点で見えてしまう。
ここまで来たら妄信と言ってよいだろう。
「自分の応援する候補者以外が同じこと(マウンティング)をやっていたら、どう思うだろうか?」と自問自答をする分かれ道に立たされている。
選挙後の石丸伸二
選挙ポスター、ビラ製作未払いについての裁判に敗訴
ここからは、都知事選終了後の石丸伸二を見ていく。
まず、選挙中に争っていた選挙ポスター、ビラ製作未払いについての裁判だが、選挙期間中の7/5(金)になんと、敗訴していた。
整理すると、
ということだ。
「週刊文春 2024年6月27日号」(当noteの上部に記載)でも石丸伸二が言っているように、おそらく印刷会社は公費負担ってことをあまりよく理解していなかったのだろう。
しかし、「このミスはお互い様なんですけどね。」と漏らすくらいなら、そこで喧嘩両成敗、ということで解決しておけばよかったのではないかと思わなくもない。
もしくは、④の主張が真っ赤な嘘であれば鳥肌ものだが。
しかし何よりぞっとしたのは、この印刷会社には石丸伸二の実妹が勤務していたことだ。実兄にこんな仕打ちをされては会社にはいられないし、同僚たちに顔向けもできないだろう(私であればそうなる)。
石丸構文
小泉構文のごとく、石丸構文が大流行りした。
しかしよくよくこの構文を見てみると、なんと既存政治家たちの論点ずらしやごはん論法と似たニュアンスが含まれている。
論点ずらしなんて、都民のみならず国民全員が忌み嫌うまさに政治屋(石丸伸二の言葉を引用する)の代表みたいなものではないか。
そんな論点ずらしも、単純接触効果によって彼に好感を抱いている人にとっては、「白黒はっきりしていて素敵!」などと言われているのだろうか。
100ワニと同じやり口
皆さんは「100日後に死ぬワニ」という、Twitterで一大旋風を巻き起こした漫画は知っているだろうか。
題名の通り、漫画の登場人物である心優しいワニが、連載100日後に死ぬという内容の漫画だ。
毎日一話ずつ更新され、ツイッタラーが「ワニよ、死なないでくれ…」と心で叫びながらハラハラと見守り、ついにワニが漫画内で亡くなった日に、突如として「映画化!」「グッズ!」「スマホアプリ開発!」「いきものがかりとのコラボ!」と、金の匂いが瞬く間に充満。読者が一気に興ざめし、商業化が大失敗に終わった漫画だ。
石丸伸二にもその片鱗が窺えた。なんと、都知事選が終了した直後に、彼を取り上げた映画公開の告知がTwitter上で発表されたのだ。
私や何人かの支持者は、「支持母体がないと言いつつ、結局裏でしっかり金が動いていた」という事実に衝撃、落胆。
統一教会との繋がりを指摘された時のように、「やはりこの人も他の政治家と変わらないな」と改めて気づかされた。
橋下徹の評価
都知事選直後、とある番組で橋下徹から「ひねくれた答え方、俺とそっくり」と言われているのを見て、心底ぞっとした。
正直、彼からの評価が政治家として一番マイナス点ではないかと思う。
まったく筋の通っていない主張、論点ずらしの天才、そして何より、政治家がひねくれた答弁をして何が良いのだろうか。それこそ、我々が何十年も対立し、憎んできた政治家の在り方ではないのか。
橋下徹にこう言われて高笑いしている石丸伸二が、未だに脳裏をよぎる。
この選挙戦全体を通して、一番彼に憤りを感じた瞬間だった。
結び
色々石丸伸二についてあーだこーだ言ったものの、彼に投票した人は、しっかり他候補者と比較したり、自分なりの信念があって彼に票を入れたものだと思う。
そうでなくても、確かに100%自分の希望と合致する政策を掲げる候補者を見つけるのは至極困難。なので、どこかで妥協点を見つけて、「こういう噂はあるけど、でも自分の望むことを、この人であれば叶える可能性が高いだろう」くらいのテンションで選挙には望むのが吉だと思う。
もし余力があれば、自分が選んだ候補者が、今まできちんと「公約を実現してきたか」「言葉と行動にずれがないか」「無駄金を使っていないか」などを少しだけ、日次や月次でニュースを追ってみてほしい。
そして政治に興味が出たならば、以下のようなチャンネルを始め、政治に関して発信している人はTwitterにも生息しているので、ぜひ見てみてほしい。
また、政治に関してはあまり明るいニュースがない。
ということで、以下のTwitterアカウントを激推しする。私は以下2つのアカウントをフォローして、通知まで来るようにしている。そうすると、ネガティブなニュースが溢れるタイムラインに、わくわくする、希望の持てるような話題も目に飛び込んでくるからだ。
私は個人的に、日本賞賛系の動画は好きではない。
もちろんそういう動画を観ると、やっぱり日本って良いとこだよね!凄いよね!と思ってしまうが、それだとその瞬間の満足感は得られても、結局既にあるものに満足するのみで、こういった「新しい研究の成果」や「今後日本が手に入れる新技術」など、未来を想像してわくわくすることがないからだ。
政治もそうだけど、どうせなら未来を見据えてわくわくしたくね?
というわけで、そういう同志には上記2つのTwitterアカウントがお薦めする。
最後に、石丸伸二に関しては、国政にも言及していることから、小池百合子同様彼はいずれ首相の座を目指しているのだとにらんでいる。なので、私も彼のことはじっくりと観察していきたい。
ま、こんなうだうだ書きつつ私は都民ではないので誰にも投票できてないんだけどね!!!!