今の日向坂46の視点は、東京ドームに「立てるか」ではなく「どう立つか」
Happy Train Tour 2023 Kアリーナ追加公演2日目に、グループとして今のメンバーで再び東京ドームを目指すことが発表されましたね。
これまでずーっと曖昧模糊だった次の目標がハッキリと定められ、ファンとして士気が上がった方も多かったんじゃないかと思います。
一方でそれと同時に、こんな疑問を抱いた人もいたのではないでしょうか。
「すでに一回立った場所が次の目標?」
「次の目標ならば、もっと大きいことにしないと意味無いのでは?」
「今でも十分埋まるだろうに、それを目標にする意味は?」
「じゃあ、そのドームが終わったらどうするの?」
自分もそんな疑問を抱いて終わる可能性があったのですが、そういう懸念への回答として、佐々木久美さんのスピーチの中に一つだけ、「これは良い兆候では?」と思えたことがありました。少ない情報の中からの推測ではありますが、もしそれが推測通りの兆候であれば「東京ドームはめちゃくちゃ妥当な目標やん」と思えたので、そんな事について書いたのがこの記事です。
初めてスタンスが垣間見れた
まずは自分がスピーチの何に注目したかを説明するために、東京ドームに立った3回目のひな誕祭とそれ以降の佐々木久美さんのスピーチを、注目点に関連する部分に絞って引用したり文字起こししてみます。
2022年「3回目のひな誕祭@東京ドーム」
W-KEYAKI FES. 2022
Happy Smile Tour 2022
2023年「4回目のひな誕祭@横浜スタジアム」
Happy Train Tour 2023 大阪公演 Day2
ここまでがKアリーナ以前のスピーチになります。そして以下が、東京ドームを再度目標とすることが宣言されたスピーチからの引用です。
Happy Train Tour 2023 追加公演@Kアリーナ Day2
これみよがしに太字にしてみたので、おおよそ何が言いたいのか見当がついているかもしれませんが、改めて整理します。
東京ドームから(少なくとも)Happy Train Tour 2023 大阪Day2 までは、「一緒に夢を叶えていきたい」とか「楽しい時間にしたい」「力をつけたい」「一生懸命準備する」「頑張っていく」ということは述べていましたが、具体的にどのように歩み、どのような体験をお客さんに届けたいと思っているかについては、実ははっきり述べていませんでした。ひなクリ2022は情報がなく記載していませんが、記憶の上では同様だった気がしています。
しかしKアリーナの2日目のスピーチでは、「ハッピーに」という形容動詞の形で、どのように歩んでいくのか、ひいてはお客さんにどう感じてほしいのかを明らかにしたように感じたんです。つまり、ついに「スタンス」(明確な立場)を取ったと感じました。
以前に以下の記事で、「理念や哲学があって初めて目標が定まる」ことを述べました。
今回のスピーチで(おそらく)初めて公言された「ハッピーに」というスタンスは、そんな理念や哲学が再構築されている証なのでは?と聞いていて推測しました。もしかしたらこれまでもライブ中のMCのどこかで適宜言ってたかもしれませんが、ライブ終盤の最も真面目な話をするフェーズでこの言葉が出たこと、さらには「がむしゃらに」のような言葉ではなく、より状態がイメージしやすい「ハッピーに」という言葉を使ったところに、強い印象を受けました。
Xの公式アカウントの話になりますが、最近「ハッピーオーラ」という単語がよく出てくるようになりましたよね。
検索してみると、「ハッピーオーラ」を含む一番過去の投稿はなんとめちゃくちゃ最近の以下のポストです。
YouTubeのタイトルやんっていう話ではあるんですが、実は公式アカウントで「ハッピーオーラ」という言葉は最近まで全く出てなかったみたいです。Xの検索インデックスに乗ってないだけかもしれないので、もし過去のポストにハッピーオーラが含まれていたら教えてください!櫻坂の方も見ましたが、以下が最新でしたし、そもそもそんなに該当するポストは多くありませんでした。
もちろん、四期生が新参者の円陣に「ハッピーオーラ」という言葉を含んでいた影響もありますし、現時点で一番新しい「ハッピーオーラ」を含む以下の投稿も、動画には四期生のみが登場しています。
なので一概にグループ全体へ一般化できるかというと結局情報が少なすぎるということになりますが、個人的にはこの辺からなんとなく「ハッピー」とか「ハッピーオーラ」みたいなものを共通言語として、理念の再構築がされてそうな気配を感じています。
以前に以下の記事で、「ハッピーオーラは価値(Value)ではなく価値観(Values)であり、価値の源泉なのでは」ということを書きましたが、佐々木久美さんがスピーチで「ハッピーオーラ」ではなく「ハッピーに」と言ったのも、もしかしたら同様のニュアンスなのかな?とも思ったりもしました。
なんにせよ、佐々木久美さんのスピーチからは、
「日向坂46ってハッピーだよね。ハッピーに活動して、お客さんを楽しませるのが私たちだよね」
というようなことが、再定義され始めてるんじゃないかなぁという期待をしました。念のため誤解のないように言っておくと、「再定義された内容そのもの」というより、「そもそも何らかの再定義がされ始めてる予感がすること」自体に期待を感じてます。
2024年の問いは「どうハッピーにさせるのか?」
2019年10月、東京ドームライブ決定が発表される前に放送された「セルフ Documentary of 日向坂46」第2回の放送で、「日向坂46最大の課題は?」という問いに対し、宮田愛萌さんから以下の発言がありました。
2019年から存在していたものの、初の東京ドームという具体的な目標によって覆い隠されていたように思う「どうやってハッピーにするのか」という問題。しかもその後はさらに「ハッピーに」という部分すらぼやけていたかもしれません。もちろん、ツアータイトルには入ってましたけど、タイトルと理念が強固にリンクしていたかというと、迷いもあったのかなぁと思ったりします。
しかし先ほど述べたように、もしこの「ハッピーに」というスタンスが明確になりつつあるとしたら、「どうやってハッピーにするのか」という問題に向き合い、答えを出していくのが2024年ということになるのかなと思いました。
五回目のひな誕祭しかり、おそらくそれまでに発表があるであろうリリース楽曲の内容だったり、その他のイベントや後続のリリース、日々の活動にその回答が出てくると思います。佐々木久美さんのスピーチからすると、新参者にもヒントがあったのかもしれません。
理念を定めてスタンスを取ったのならば、あとはどんなハッピーをどう実現するのか、です。軸が定まってしまえばあとは具体的な話になりますので、2024年はやってることがはっきりする1年になるのではないでしょうか。ファンからしても「やりたい事が(少なくともなんとなくは)伝わる」というような、「どうハッピーにさせるのか?」への日向坂46なりの回答を感じられる1年になる気がしています。
この問いの先の「東京ドーム」だから意味がある
もし理念が定まり、明確なスタンスを取った上での東京ドームとなったならば、それは単に「同じ場所に再度立つ」とか「未経験者に経験させる」以上の、質的に異なる意味を持つと思います。それは「立つことに意味がある」から「どのように立つか」への視点の変更です。
例え話として男子サッカー日本代表を挙げると、98年に初めてワールドカップに出場し、結果はグループリーグ全敗で敗退しました。しかし、ジャマイカ戦で歴史的な初ゴールを決めたり、そもそも出場したこと自体に価値があるなどで、結果としては振るわなかったかもしれませんが、大きな意味を持つ初出場でした。
一方で、もし今の日本代表がワールドカップに出場し、98年と同じような成績で敗退したら、どうなるでしょうか。おそらくえぐいほどの批判がサッカーファンから巻き起こることが予想されます。なぜなら今の日本にとって、ワールドカップは出ること以上に、そこでどのような成績を残すか、ひいてはどうやって良い内容で戦うかにまで議論のレベルが上がっているからです。
日向坂も同様に、1回目の東京ドームはそこに立つこと自体に価値がありました。結成からのいろんな想いを背に、全てのストーリーを集結させて、ともすれば宮田さんらが指摘していた問題をも覆い隠すパワーを持ってたどり着いた場所でした。
しかし2回目は、そこに立った上で、さらに何が上乗せできるかが問われます。1回目の、すべての文脈やストーリーを盛り込んだ感傷的な価値は2回目には期待できませんし、あったとしても1回目よりは大きく落ち込むはずです。だからこそ2回目はさらなる魅力を発揮する必要があると思います。
1回目のように、諸々の問題を覆いながらもたどり着いた東京ドームと、理念という軸を再定義し「自分たちは何者であるか」を強く意識した2回目の東京ドームでは、視点が全然変わります。その視点の違いがもたらすものを同じ場所で比較検証できるからこそ、東京ドームという同じ場所を目指す意味があるように思います。スピーチで明言したように「迷っていた」からこそ、東京ドームで「あの頃の自分たちとは違う立ち方が出来ている。今の自分達の方が上手くやれている」と感じることができれば、それは大きな自信に繋がるはずです。もちろん、未経験メンバーに立たせておくことも心情的にメリットが多いでしょう。
違う場所ではなくあえて同じ東京ドームを目指すのは、こういった点からちょうどいいと感じてます。もちろん、理念やスタンスがちゃんと確立している前提ですけどね。
長い目で見る:短期的には合理的でも、長期的には不合理だと意味がない
もし、これまで述べたような理念の再構築やスタンスを取ることなしに、単にとりあえずの分かりやすい目標として東京ドームを設定したのだとしたら、きっとそのドームが終わったらまた3回目のひな誕祭後の状況に戻るだけです。それは問題の先送りでしかありません。佐々木久美さんがスピーチで語った「迷い」は何が生んだのか?そこを解決しないといけませんし、それが一番大事です。その迷いを払拭するためにまず必要だと僕が思うのは、理念・哲学を定めて、スタンスをちゃんと取ることです。
もちろんそれがなくても、とりあえず「また東京ドームを目指します」と公に言ってしまえば、なんとなくメンバーの視線はそこに集まりますし、ファンもなんとなくついていきたくなる気持ちになると思います。けれどもさっきも言ったように、それでは歴史を繰り返すだけになってしまいます。短期的には合理的ですが、長期的には非合理です。
自分たちのスタンスを明確にし、どうハッピーにさせるかの方法論を積み重ね、その上で、「今の日向坂46なら当然、文脈に頼らず東京ドームでも観客を満足させられるよね」「このドームでしっかり自分たちの力を確認して、さらに次の大きな目標に進む足がかりにしようね」という状態で、一つの通過点として立つ。それが理想なんだと思います。
なので、方向さえ間違っておらず、本人たちに「やってる事は正しそうだ」と言う手応えさえあれば、たとえ2回目の東京ドームが全席埋まらなかったとしても、下を向く必要はないと思います(とはいえ埋まるとは思ってます)。来年のひなクリあたりが2回目の東京ドームかと予想してますが、再構築には時間がかかると思いますし、席は埋まったとしても、内容は完全には間に合わないかもしれません。紅白も来年に返り咲くことが難しいかもしれません。しかし結果そのものよりも、「ちゃんといい方向に進んでいる」ことを日向坂チームもファンも双方に感じられることが重要かなと思います。なので結果については、あんまり慌てないほうがいいかなと感じてます。
「試合に負けて勝負に勝った」2023年
佐々木久美さんから「勝負の年」と語られた2023年ですが、年内の全てのリリースとライブを終えた今、みなさんとしてはどのように感じていますでしょうか。個人的には、Kアリーナ千秋楽でのスピーチをもって、
「試合に負けて勝負に勝った」
とは言えそうかな、と感じました。
もちろん、ストリーミングやMV再生という定量指標や、紅白が途切れるといった定性指標など、市場の評価としては試合に負けた感じはあります。
しかし、試合に勝つにはどうすれば?を振り返った時に、まず「ハッピーに」という理念やスタンスを再構築した予感があり、もし本当にそうならばそれは、「自分たちとの勝負には勝った」と言えるんじゃないかと感じています。なぜなら自分たちを振り返り、理念や目指すべき方向を再定義していくというそれすら出来ない組織がほとんどだからです。
2023年に得た自分たちへの「勝利」をもとに、今度はちゃんと試合でも勝つことを目指すのが2024年かなと個人的には思います。
まとめ
佐々木久美さんのスピーチなどから結構なことを推測し、「おそらく理念が再構築されつつあり、スタンスを取るようになったのではないか?」と未来に希望を抱いてみました。
正直、発せられるメッセージとしてはまだ量が足りず、解釈が難しいところはあります。停滞感のあった今年を払拭するように、単に「ハッピー」という明るい言葉を使っただけなのかもしれません。他に似たようなことを言ってるのも山口陽世さんのメッセージアプリでのメッセージくらいなので、なんとも言いがたいところはあります。
しかし個人的には、これまで具体性のなかったスピーチに突如現れたスタンスには、驚きと同時に喜びを感じました。
「もしかすると、この感じなら2024年は勝負に勝てるかもしれない」という期待を持ちつつ、今後の具体的な動きを待ちたいと思います。
11th、どうなるのかな〜。
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