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架空日記♯1「幽霊の日記」

 自殺したのは間違いだった。
 幽体になればあの人に復讐できると思ったのに、人間に一切干渉できない。物体すらすり抜けてしまうから、あの人を事故に遭わせることもできない。私は無駄死にした。
 死んだなら呪い殺せないかとも考えた。だがどれだけ憎くても呪いなど存在しないらしい。憎しみを強めても強めても意味はなかった。何故自殺などしてしまったのだろう。
 今日もただただぶらぶら街をふらつくだけだった。歩く感触すらない。これから何年、何十年、何百年と続くのだろうか。一生このままなのだろうか。
 だが、私が成仏する前にあの人は死ぬだろう。あの人も幽霊になったらまた逢えるだろうか。そうしたら今度こそ結ばれる? あの人が死ぬ頃には年老いているだろう。私は若いまま。それなら勝ち目があるのではないか?
 私は信じる。私の自殺が報われることを。死後にあの人に逢えることを。
 あれ? 空から何か降りてきてる。あれは……天使? 私を迎えに来てる? 私この世にいられないの? 待って、あの人と同じ世界にいたい。成仏したくな

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