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推しアルパカの死

日本にアルパカ牧場ができて20年ほどの月日が流れた。
初期にペルーやニュージーランドから来た先駆者であるアルパカたちも、老いが来て各地で亡くなってきている。
アルパカの寿命は15年〜20年。高齢で亡くなることはもちろん、病気や突発的な何かで亡くなることもある。

そんな中、「はじめての推しアルパカ」になった子が亡くなってしまった。

初めての体験で、自身が思ったよりダメージを受けているのにしばらく気が付かなかった。初めての体験とはそういうものなのかもしれない。

今はっきりと「推しアルパカ」であると言えるようになったのは、この子の死がきっかけでもある。
わたしはアルパカを好きになって雑貨を作り始めて以来、あまりアルパカを個で見ないようにしていた。日本にいる子をモデルにして描かないようにしているからだ。

そのアルパカは、私がアルパカを好きになって初めてギュッと抱きしめることができた子だった。
その衝撃は一生忘れない。とにかくもふもふがすごかった。
そしてめちゃめちゃ容姿も可愛かった。アルパカって、シュールな容姿で「ヘンかわいい」ところが好きだったのだが、純粋に生き物として「可愛い」んだ、そう思わせてくれたのはこの子だ。

それ以来、会いにいくと必ず声をかけて一緒に写真を撮ったり撫でたりSNSで見かけると気にしたりして過ごしていた。
そのアルパカが先日出産がきっかけで亡くなったという知らせをLINEで受け取って、「え…」とすぐに返事ができなかった。
普段でもアルパカの訃報は、見た時は胸がキュっとなって、残念だな悲しいなと思う。
悲しいけれど生き物は自分も然りいつかは死ぬもの。
そういう思いもありフラットな気持ちで死を見ていた。

でも今回の推しのアルパカが亡くなったことには、いつもと違う感情が駆け巡った。悲しい残念さみしい…それ以外になんだかぽっかり心に穴が空いた気がした。私にはじめてアルパカがシュールな容姿以外に「生き物としてかわいい」「もふもふである」ということを教えてくれたのはその子だったから、やっぱり特別で思い入れがあって1番の推しのアルパカだったのだ。
またこの子に新たな気づきをもらってしまったなあ。感謝してもしきれない。なので私はこの子を一生絶対に忘れない。

推しアルパカはいていい、いろんな感情を私にもたらしてくれるし、可愛いなと愛でる時間は人生を豊かにし元気をくれる。
そう認めてからは各牧場にそれぞれ推しアルパカをつくってひっそりと愛でることにした。(もちろん基本は全日本箱推しだが)

日本にやってきてこどもがうまれて2世あたりの子達がいま老いを迎え始めている。これからまた各地の推したちが亡くなっていって寂しい思いをしてしまうだろう。
でも命は繋がって、その1番の推しのアルパカが命がけで生んだ赤ちゃんは元気に牧場を走り回っている。
その光景をみて、これから来る高齢化の波も推しの死も乗り越えていけるのではないかとそう思った。

読んでいただきありがとうございます。サポートをいただいた際には、より良いアルパカ雑貨を作るためアルパカに会いにいく旅費に充てさせていただきます。