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あれほど退屈だと思っていた田舎に遊びに行きたくなっている話

少し前に、アニメ『のんのんびより』を全部観た。

『のんのんびより』は、田舎にある分校に通う生徒たちの日常を描いた作品である。
個性豊かな生徒たちが繰り広げる「田舎の日常」は、作品と現実が地続きになっているような感覚で観ることができた。
そして、田舎の描写がとてもリアルなのが印象的だった。バスは2時間に1本、学校は学年どころか小中あわせて全校生徒5人、コンビニも近くになく、車もほとんど走っていない。

全く同じではないが、僕はそういう田舎を知っている。祖父母が住んでいる場所が比較的近い環境だった。
山のふもとに家があり、当時住んでいた家から車で2時間。歩いていける距離にコンビニはなく、車もほとんど走っていないので子供が歩いていけるような範囲には信号すらない。そんな場所だった。
独り立ち前に住んでいたところも都会とは言えないが、それでも祖父母が住んでいるところよりはいくらか都会だった。

部活で忙しくなる前まで、特に小学校低学年のころは両親に連れられて毎週のように祖父母の家へ泊りに行った。
覚えている限り、始めのほうは小旅行のような感覚で楽しんでいたが、回数を重ねるほどに慣れ始め、長い移動時間や食事や家の設備の不満(なぜかトイレが食卓や風呂場、寝室から遠い場所にあった)を感じるようになってしまった。
そして、冷暖房設備もしっかりしたものではないので、夏は溶けるほど暑く(窓を全開にしていたら蜂やら蝉やらオニヤンマやらが家の中を飛び回っていた)、冬は凍えるほど寒い。年末年始はほぼ毎年泊っているのだが、冗談抜きで死を覚悟したことが何度かある。

更に祖父母の家は物が多く、お世辞にも整理されているとは言えなかった。祖父母は2人暮らしだったので普段は入らない部屋があるのは仕方ないことではあるけれど、毎回帰った時に最初にやるのは寝る部屋の換気からだった。
それでも軽減しきれない埃やカビはぜんそく持ちの僕には辛かった。
なので、昔は祖父母に会うのは楽しかったが環境が全然違う田舎に行くのは辛い時期もあった。

とはいえ周りの自然や雰囲気はとても好みだった。
少し歩けば桜並木があり、春は満開だった。夏は浅い川に入りながら花火をした記憶がある。近くの山の紅葉は綺麗だったし、大みそかに雪が降る中、外でその年のお気に入りの曲を聞いてエモさを感じることもした。

『のんのんびより』を観た今にして思えば、気軽に作品と同じような体験をすることができる環境があるというのはとても素敵なことだった。
高校生大学生の時は本当に帰りたくなかった田舎だったが、今では機会を見つけて祖父母の家に帰りたがっている自分がいる。
以前ほど頻繁に帰ることはできていなかったが、少し前に祖父母の家に行く機会があった際にはいつもよりも念入りに掃除をした。
(祖父は高齢のため、掃除のときにはいろいろ騒動もありはしたけれど、)今は次に帰った時にどういうふうにアレンジしようかを考えるまでになった。

僕はちょろいオタクなので、すぐに作品に影響されてしまう。
今回は、これまで良くない関係性だった「自分」「祖父母の家」を、良い関係性にしてくれた「良い影響」だったと思う。
これから先、どんな作品にどんな良い影響を受けるのか。これも色んな作品に触れる魅力であると改めて考えさせられた。

『のんのんびより』では舞台となった田舎のモデルはないらしいのだが、それは視聴者各々が知っている田舎の風景にそれぞれがモデルを見出せることでもあると思う。少なくとも、僕は観ていて祖父母の家を思い出した。
今度行ったときには、子供のころを思い出して周囲を散策するのも悪くないかもしれない。

田舎が嫌で東京に住みたかったから!!

『呪術廻戦』釘崎野薔薇

田舎にも良いところもあれば悪いところもある。
でも強く残る想いもある。
釘崎の気持ちは死ぬほどわかる。

前回エッセイ風記事

帰省する度に家族から「太った?」とハラスメントを受けるので、新しい「習慣」を続けて見返してやりたいね……w

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