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自分が分身できたらいいのに
朝から何もかもうまくいかない日だった。
次男の夜泣きで寝不足に加え、暑さのせいで頭痛がしていた。長男は汗疹が痒くて機嫌が悪く、次男もなぜか泣いてばかり。
気分転換に外へ出る気力もなかった。
なんとか1日を終えようと、二人まとめてお風呂に入れて保湿し着替え。やっと夜ご飯。
これが終わればゆっくりできる。のに、ご飯もうまくいかない。
いつもは子ども用の椅子におとなしく座る次男が、泣いて座らない。座っても私に抱っこを求めて立ち上がろうとする。
危ないので、私の膝に座らせてご飯にした。隣には長男のご飯を用意して、やっといただきます。ちなみに私は二人を食べさせながら食べる余裕がないので、後回しだ。
最近の次男はつかみ食べが凄い。今日もかぼちゃのお焼きを口に入れているが、入れすぎてしまうのでそれを静止しつつ、お粥も食べてもらう。
長男は一人で話しながらふりかけご飯を食べているが、中々進みが悪い。
とりあえず次男が先だ。テーブルも床も、着替えたばかりの服も私の服もお米とカボチャでぐちゃぐちゃだ。食べさせたら掃除しないと…。
おかーさん、ごはんたべてー
お母さんいらないからご飯食べなー
長男と会話しながら次男にご飯をあげる。それでも頭の中は次の行動のことでいっぱいだった。
次男がご飯を食べ終えたので、汚れてない床に下ろして、手を拭いて。すぐ床に取り掛かる。床掃除しないとハイハイしながらお粥を撒き散らされる。
たべおわったよ!おさら、あらってー
そう言う長男のお椀には、まだふりかけが残っている。
まだあるじゃん!食べなよー!
そう答えて。四つん這いになって、長男が食べている隣で床を掃除し始めたら。
あらってー!
そう言いながら、私の髪と背中にふりかけご飯がはいったお椀を落としてきた。落ちてくるご飯。フリーズする私。
顔をあげたら、いつものやばい!って顔をして、へらへら笑ってる長男。
ああ、やばい、泣けてきた。
とりあえずTシャツを脱ぐ。お米を拾う。長男が逃げようとするので捕まえた。
こら!ご飯を粗末にしちゃダメでしょ!
声が大きくなる。叱りながら、なんか泣けてきた。
ご飯はね、お父さんが毎日お仕事頑張ってるおかげで食べられるんだよ…
最後は泣きながら、というより嗚咽していた。その姿を見て、普段と違うことに驚いたのか次男が泣く。長男は、その場に佇んでいた。
私は涙が止まらなかった。
泣きながら掃除をする。そうしたら、長男は、ごめんね?ごめんなしゃい、いけなかった…と繰り返している。
ふとテーブルをみたら、大好きなコロッケが残っていた。長男は、ごめんね?ごめんなしゃいと真顔で呟いている。
いつもは、へらへら笑うか逃げて何もなかったことにするのに。
私は長男を抱きしめた。
ごめんね、お母さんも悪かった。ご飯、あーんして食べさせて欲しかったんだよね?
長男はぎゅっと抱きついてきて、たべたかったー!と言った。
あぁ、次男みたいに食べさせて欲しかったんだ。いつも気にかけてあーんしてあげるのに、今日は次男が汚した事ばかり気になって、長男のことを見てあげられなかった。
本当にごめん。今からコロッケ、あーんして食べる?
泣きながら聞いたら、長男はうん!と頷いていつもの椅子に座った。
床掃除は中断した。次男はまだ泣いてるけど、今は長男の番だ。
長男にコロッケを食べさせる。嬉しそうな長男と、泣きながら座っている私の足にしがみつく次男。本当は次男を抱っこしたい!でも、今ここで次男を抱っこしたら長男はまた悲しむだろう。
ぐっと我慢して、ご飯をあげる。
あぁ、何故私は分身できないんだろう。
夢が叶うなら。私を分身させてほしい。切実に。