「未来を証明する砂塵」AI生成掌編歴史小説
草原の上に広がる夕日が、赤く染まる大地を照らしていた。その光は、戦場の混乱と死の影を際立たせる。私は弓を握りしめたまま立ち尽くし、風が運ぶ血と煙の匂いを嗅いでいた。
「モハマド、大丈夫か？」
カディールの声が背後から聞こえた。彼の顔にはいつもの冷静さが宿っているが、その目はどこか疲れを感じさせた。戦場で幾度も見てきた、戦士の目だ。
「平気だ。」声は自分でも驚くほど低く、乾いていた。
彼は軽く頷きながら、戦場を見渡した。「思ったより早く片付いたな。でも、お前、いつもより慎重すぎる。何かあったのか？」
その言葉に答える前に、私の視線は腰に巻き付けた革袋に落ちた。あの巻物には、この戦いの行く末を決める情報が隠されている。私が知る限り、それはただの戦略情報ではない。帝国の指導者たちが隠している、もっと深い闇がある。だが、それを口にすることが正しいのか、自分でも分からなかった。
「慎重じゃなければ、死んでいただろう。」そう答え、視線を彼から外した。
戦場はまだ混沌としていた。味方の兵士たちは傷ついた者を支え、倒れた者のために祈りを捧げている。遠くでは、後退する敵兵たちの影が見えた。武器が大地に落ちる音、呻き声、炎が燃える音が風に混ざって耳に届く。すべてが戦いの終わりを告げていた。
「モハマド、俺たちの役目はまだ終わっちゃいないぞ。」カディールが肩を叩いた。「次の指示を受けるために、早く戻るべきだ。」
私は短く頷いたが、足は重かった。カディールは先を歩き始めたが、私はその場に留まり、空を見上げた。太陽が地平線に沈みかけている。赤い光が砂塵を照らし、世界を不気味な静寂に包んでいた。
「お前、何か抱えているだろう。」カディールが振り返り、真剣な顔で私を見つめた。
その視線に、私は言葉を飲み込んだ。彼は続ける。「未来なんて誰にも分からない。それでも、俺たちは今できることをやるしかない。それが兵士だろう？」
「未来が分からないからこそ、疑問に思うんだ。」私は声を振り絞った。「この戦いに意味があるのか？巻物に書かれたあの情報が真実なら、この戦争そのものが間違っているかもしれない。」
彼の表情が一瞬だけ曇った。だが、すぐに落ち着きを取り戻し、静かに言った。「俺も昔、同じことを考えた。初めて戦場で敵を倒したとき、自分の手が何をしているのか分からなくなった。けど、その後で分かったんだ。俺たちが戦う理由を決めるのは、俺たち自身だ。」
「それで、納得できたのか？」私は問いかけた。
カディールはしばらく黙ってから、低く笑った。「完全に納得なんてできやしないさ。でも、俺たちが未来を信じなきゃ、誰が信じる？それだけのことだ。」
その言葉は私の胸に重く響いた。彼の信念は、戦場の数々の試練を乗り越えた末に培われたものだ。それでも、私にはまだ理解できない何かがあった。
巻物の情報が脳裏に蘇る。「次の戦略に不可欠」とも言える詳細な地図と敵軍の補給線の情報。それだけなら、私の疑念を呼ぶことはなかった。だが、その裏に隠されていた一文――「帝国の拡張は民を守るためではない」――それが私を揺さぶっている。
夜が近づき、空気が冷たくなった。私はカディールに続きながら、心の中で決意を固めていった。戦いが終わった今、私は真実を明かす責任を負わなければならない。もし、これが帝国のために必要な犠牲だと言うのなら、その言葉の意味を未来に証明しなければならない。
「行くぞ、モハマド。」カディールが先を促した。
私は深呼吸をし、重い足を一歩ずつ前に進めた。砂塵の中を抜け、赤く染まる空の下を歩く私たち。戦争は終わらない。それでも、私たちは歩き続ける。未来を信じるために。